Lo-D HT-550
QUARTZ LOCK DD AUTO PLAYER SYSTEM ¥59,800

1978年に,ローディー(日立)が発売したプレーヤーシステム。ローディーは,当時,カセットデッキの分野
で優れた技術を見せていましたが,アナログプレーヤーでは,それほど目立つ存在ではありませんでした。
しかし,総合メーカーとしてモーター等に高い技術を持つローディーならではの中級機がHT-550でした。

ターンテーブルを駆動するモーターとして,ローディー自慢の「ユニトルクモーター」が搭載されていました。
「ユニトルクモーター」は,DCモーターの弱点コッキングを解消するために,固定子のスロット数を増加させ
るのではなく,モーターの回転原理から完全な円運動を求めたモーターでした。8極に着磁されたドーナツ
型のローターマグネットと,22.5度ずらされた2組の星形扁平コイルを組み合わせ,これらの2つのコイル
とマグネットから発生するトルク量がどの瞬間をとっても常に一定になるというもので,原理的にコッキング
が発生しないモーターでした。構造的にもブラシレス,スロットレス,コアレスというシンプルな構造で薄型の
扁平な形を持ち,耐久性と大きな起動トルク,温度上昇の少なさなどの特徴を持っていました。

HT-550では,このユニトルクモーターをさらに技術的に発展させた「新ユニトルクモーター」が搭載されてい
ました。「新ユニトルクモーター」には,エネルギー積の大きい(普通のフェライトマグネットの1.5倍以上)大
形ストロンチウムフェライトマグネットが採用され,8層に積み上げた駆動コイルの採用とあいまって起動トル
クがアップされていました。この結果,1/2回転で定速に達するすぐれた起動特性が確保されていました。

速度検出には,正確な周波数検出を可能にする磁気誘導全周積分検出方式が採用され,精密着時技術に
よる200極複合着磁ローターマグネットが搭載され,速度検出信号を従来の約2.8倍に高め,速度検出精
度と応答特性が大幅に向上していました。
モーターの速度検出装置からの検出周波数と水晶発振子によるつねに一定な発振周波数とを位相比較し回
転数を制御するクォーツロックPLLサーボが採用され,回転数偏差は0.003%,経時変化や温度変化の影
響をほとんど受けず,電源電圧や負荷の変動に対しても影響を受けない正確で安定した回転が実現されてい
ました。この回路には,ワンチップMOS LSIが採用され,発振回路,分周回路など水晶制御回路の信頼性が
高められていました。

ターンテーブルは,直径330mm,重量1.8kg,慣性質量270kg・cm2のアルミダイカスト製の大形重量級の
ものが搭載され,フライホイル効果の大きさにより,過渡的な負荷変動にも対処していました。特殊粘弾性ラバー
によるターンテーブルシートが装備され,レコード盤との密着度の向上,有害な振動や共振の抑制などが図ら
れていました。さらに,水晶発振子による正確なパルス点灯と,ワンパターンのストロボによるストロボスコープ
がターンテーブル外周部に搭載されていました。

トーンアームは,スタティックバランスの全長324mmのS字型アームで,軸受部に高精度精密ミニチュアベアリ
ングが採用され,高感度が実現されていました。ヘッドシェルには,アルミ軽合金を冷間加工した高剛性ヘッド
シェルが装備され,アルミダイカストアームベースによりトーンアームをがっちりホールドした構造など無共振化
への配慮が行われていました。
新開発メカニズムによるオートリターン,オートカット機構が装備され,スムーズな動作が確保されていました。
また,トーンアームには,VM型カートリッジVFS-261が付属していました。

キャビネットは,パーティクルボード製で,表面は木目仕上げで,やや薄型のデザインが採用されていました。
底板には,ポリエステル樹脂に炭酸カルシウム,グラスファイバーを重合させた複合素材であるBMCが使用さ
れ,2.5という大きな比重と大きな内部損失が両立した特性により,ハウリング特性を高めていました。さらに
振動の遮断特性にすぐれたエアーサスペンション方式の脚部により全体が支えられ,防振効果が高められてい
ました。

以上のように,HT-550は,比較的手頃な中級機ながら,新型のユニトルクモーター,ワンチップMOS LSIをは
じめ,各部に総合電機メーカー日立を母体とするローディーらしく,高い技術と確かな作りが特徴のコストパフォー
マンスの高いプレーヤーシステムでした。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



クリスタルの正確な調べ,
クォーツロックPLLサーボ機構採用。

新ユニトルクモーター搭載
高精度IC,LSI採用による
水晶制御のオートプレーヤー。

◎さらに性能に磨きをかけた
 新ユニトルクモーター搭載
◎水晶制御回路にLSI採用
◎直径33cm,大慣性質量の
 重量級ターンテーブル採用
◎高精度ミニチュアベアリングによる
 高感度精密トーンアーム
◎ハウリング対策に威力を発揮
 重量級の複合成形材BMC底板
◎共振を効果的にダンプ
 特殊ターンテーブルシート

●ワンパターンのストロボと水晶発振による
 正確なパルス点灯により見やすいストロボスコープ
●新開発メカニズムによるスムーズで使いやすい
 オートリターン,オートカット機構
●音質重視のVM形(デュアルマグネット形)
 カートリッジ採用




●HT-550 Specifications●


●フォノモーター部●

駆動方式 ダイレクトドライブ
モーター 扁平型無整流子DCサーボ(ユニトルクモーター)
ターンテーブル アルミダイカスト(直径330mm)
定格回転数 33 1/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS)
S/N 74dB(DIN-B)
負荷特性 0%(針圧100g以内)
回転数偏差 0.003%以内
起動特性 1/2回転以内



●トーンアーム部●

形式
針圧直読式スタティックバランス形パイプアーム
アーム全長 324mm
アーム有効長
230mm
オーバーハング
15mm
トラッキングエラー
2°
針圧調整範囲
0〜3g/1回転(0.1gステップで直読)
適用カートリッジ重量
4〜14g


●カートリッジ部●

形式
VM形(VFS-261)
周波数特性 20〜20,000Hz
出力電圧
3.5mV(1kHz 50mm/sec)
チャンネルバランス
1dB
クロストーク
25dB
針圧
2g
使用針
0.7ミル ダイヤモンド針(DS-ST26)


●キャビネット部●

キャビネット材質 パーティクルボード
ヒンジ 着脱可能オートヒンジ
インシュレーター エアーサスペンション方式防振脚
色調 チェックブラジリアン調



●総合●

電源電圧 AC100V 50/60Hz
消費電力 5W
外形寸法 480W×139H×381Dmm
重量 10kg
※本ページに掲載したHT-550の写真・ 仕様表等は1978年1月
のLo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引
用等をすることは法律で禁じ>ら れていますので,ご注意ください。

 
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