HT-840の写真
Lo-D HT-840
QUARTZ LOCK DD MANUAL PLAYER SYSTEM
                              ¥89,800

1977年にローディー(日立)が発売したプレーヤーシステム。ローディーはプレーヤーではあまり
メジャーなブランドではありませんでしたが,持ち前のモーターの技術等優れた基本技術を生かし
た実力機を出していました。HT-840は,その中でも当時の最上級機で,今ではとうていこの価
格で考えられないくらい,しっかりした中身と作りを持っていました。

ターンテーブル部は単体でも売られていたTU-800で,ローディー自慢の「ユニトルクモーター」を
搭載していました。「ユニトルクモーター」は,DCモーターの弱点コッキングを解消するために,固
定子のスロット数を増加させるのではなく,モーターの回転原理から完全な円運動を求めたモー
ターでした。8極に着磁されたドーナツ型のローターマグネットと,22.5度ずらされた2組の星形
扁平コイルを組み合わせ,これらの2つのコイルとマグネットから発生するトルク量がどの瞬間をと
っても常に一定になるというもので,原理的にコッキングが発生しないモーターでした。構造的にも
ブラシレス,スロットレス,コアレスというシンプルな構造で薄型の扁平な形を持ち,耐久性と大き
な起動トルク,温度上昇の少なさなどの特徴を持っていました。まさにモーターにおいて優れた技
術を持つ日立ならではのモーターでした。

ユニトルクモーター
TU-800の写真
Lo-D HT-800
PHONO MOTOR UNIT ¥50,000                                       

TU-800では,優れた回転精度を誇るユニトルクモーターを水晶制御(クォーツロックPLL)すること
で,負荷特性,回転精度をさらに高め,ワウ・フラッター特性0.02%(WRMS)を実現していました。
また,ターンテーブルは,直径305mmのアルミダイカスト製で,2秒で停止する電子ブレーキ機構も
搭載されていました。ターンテーブルシートは共振を抑制するブチルゴムが採用されていました。

アーム部は,これも単体で売られていたスタティックバランスS字形のAU-800で,共振を抑える「ダ
イナミックアブソーバー」方式を採用していました。通常のトーンアームでは,メインウェイト軸をゴムで
継ぎ,ダンプすることにより共振周波数を低い方へずらす方法がとられていましたが,AU-800では,
ウェイトとダンパーゴムによって構成される「ダイナミックアブソーバー」で共振を吸収し,共振レベルそ
のものを下げる方法がとられていました。ヘッドシェルはチャッキングロック方式でがっちりと固定され
静かで滑らかな動きのオイルダンプ式アームリフターも搭載されていました。

AU-800の写真
Lo-D AU-800
TONEARM UNIT ¥16,000

キャビネットは,高い剛性と優れた振動減衰特性を持つ素材BMC(バルク・モールディング・コンパウン
ド)と,高密度パーチクルのソリッドウッドとの2層構造で,異種の高比重高剛性の素材を組み合わせる
ことで,耐ハウリング性能の向上を図っていました。また,高さ調整機構付きの大形のインシュレーター
も装備されていました。

以上のように,HT-840は,ローディーが優れた基礎技術を積み重ね,各部がオーソドックスに煮詰め
られたアナログプレーヤーでした。アナログプレーヤーにおけるブランド力の弱さから高い人気を得るに
はいたりませんでしたが,使いやすいすぐれたプレーヤーでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


クリスタルロックの正確な調べ,
クォーツロックPLLサーボ機構採用。

重量級BMCキャビネット
総合性能重視のマニュアルプレーヤー

◎ユニトルクモーターを水晶制御(クォーツロック
 PLLサーボ)したフォノモーター部,TU-800
◎ダイナミックアブソーバー方式採用
 低共振トーンアーム部,AU-800
◎耐ハウリング特性を充分考慮にいれた
 BMC材採用の2層キャビネット部
●ターンテーブルもわずか2秒でSTOP
 レコード交換に便利な電子ブレーキシステム
●水晶発振により,ワンパターンで331/3,45rpmの
 両方を表示するワンパターンストロボ方式
●レコードの「鳴き」を抑えるブチルゴム採用ターンテーブルシート
●ヘッドシェルのガタを抑える,
 チャッキングロック方式採用ヘッドシェルコネクター
●オイルダンプ式アームリフター
●レコード音溝を確実にトレース,
 インサイドフォースキャンセラー
●高さ調整機構付大形インシュレーター
●重量級ダストカバー

 

●HT-840 Specifications●
 

■フォノモーター部■

駆動方式 クォーツロック(水晶制御)ダイレクトドライブ
モーター 扁平形無整流子DCサーボ(ユニトルクモーター)
ターンテーブル 306mmφアルミダイカスト
定格回転数 33 1/3,45rpm
速度微調整範囲 ±2.5%(水晶制御OFF時)
ワウ・フラッター 0.02%(WRMS)
SN比 77dB(DIN-B)
負荷特性 0%(針圧120g以内)
回転数偏差 0.003%以内
起動特性 1/2回転以内
電子ブレーキ 2秒以内で停止

■トーンアーム部■

形式 ダイナミックアブソーバー付
スタティックバランス形トーンアーム
アーム全長 326mm
アーム有効長 240mm
オーバーハング 15mm
トラッキングエラー 1°50’
針圧調整範囲 0〜3g/1回転(0.1gステップで直読)
適合カートリッジ重量 0〜18g

■キャビネット部■

天板 BMCボード(板厚14mm)
木部 高密度パーティクル,ソリッドウッド(板厚40mm)

■総合■

消費電力 8W
外形寸法 490W×180H×413Dmm
重量 15kg
※本ページに掲載したHT-840の写真・仕様表等は1978年1月のLo-D
のカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じら
れていますので,ご注意ください。
 
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