INTEGRA701の写真
ONKYO INTEGRA 701
STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER ¥156,000

1969年に,オンキョーが発売したプリメインアンプ。オンキョーは,スピーカーからスタートしたブランドで,
真空管アンプの時代には,アンプを出していませんでしたが,ソリッドステートアンプ時代に入り,アンプの
分野に進出していきました。そして,この1969年に,プリメインアンプの「インテグラシリーズ」をスタート
させました。その中の最上級機がインテグラ701でした。

オンキョーは,1945年に大阪電気音響としてスタートし,当初,ピックアップ,マイクなどを作り,その後
フィールド型ユニット,ノンプレスコーンなどを発売し,一貫生産のスピーカーメーカーとして発展していき
ました。やがて,ラジオ,セットステレオなどのエレクトロニクス分野の製品に進出し,一時はテレビも作っ
ていたことがありました。(これは商業的に失敗したそうですが・・。)そんなオンキョーは,1960年代に
は,関西の大手オーディオ専業メーカーとして,単体コンポーネントしてのスピーカーシステムを発売し
E-83A,セプターシリーズなど,高評価を得ていきました。そうしたオンキョーが本格的にコンポーネント
アンプとしてスタートさせたのが「インテグラシリーズ」で,当初からソリッドステート,OTL方式,DCアンプ
といった先進的な内容をもっていました。設計思想的にも,回路の解析,多くの計算式,客観的な試聴メ
ソッドなど,より合理性,客観性,普遍性を重視したもので,忠実な再生をめざすという考え方が前面に
出されたもので,当時の日本のオーディオづくりの方向性が,アンプでは後発であったオンキョーにおい
ては,より如実に表れていたように思います。

インテグラ701の第1の特徴は,信号経路にカップリングコンデンサーを挿入しない全段完全直結方式
が採用されたDCアンプとなっていることでした。これにより,各特性が大きく改善され,特に,極低音域で
のパワー,ダイナミックレンジの大幅な向上が実現されていました。ダンピングファクターは,平衡電源回
路の採用によるカップリングコンデンサーの廃止とあいまって,直流まで100以上の値でフラットに確保さ
れていました。

ドライブ段には,すべて差動増幅回路が特殊な組み合わせにより採用され,完全なバランスをとることに
より,低歪率を実現していました。
イコライザ回路は,ダイナミックレンジの大きくとれるコンプリメンタリー方式が採用され,PHONOの最大
許容入力は280mV以上,歪率0.04%以下というすぐれた特性が実現されていました。さらに,初段の
低ノイズ化が図られ,入力換算ノイズレベルを−130dBVBy(IHF-Aネットワーク)以上で,RIAA偏差も
±0.4dB以内に抑えられていました。

さらに,INTEGRA701には,新たに歪率補正回路が搭載されていました。コンプリメンタリー回路の上下
の伝達関数の違いによる歪を補正するもので,ファースト・リカバリーダイオードと抵抗を組み合わせたこ
の回路を挿入することで,音質への影響や歪の発生を抑えていました。また,コンプリメンタリー段のB-B
間の電圧変化によってアイドリング電流が変化し,上下の増幅率の差が生じることで発生する非直線性に
対しては,ツェナーダイオードを挿入することで歪を防止していました。

電源部は,カットコアを使用した大形の電源トランスが搭載され,平滑コンデンサーとして7,000μFのコ
ンデンサーが2個搭載され,強力な電源部となっていました。

インテグラシリーズ

機能的には,オーソドックスながら,プリメインアンプとして比較的多機能で,操作系も整理されて搭載され
ており,フロントパネルのデザインも「インテグラシリーズ」でほぼ共通のものとされ,弟機とも見分けが付
かないほどでした。
トーンコントロールは,L・R独立で,2dBステップのスイッチ式のものが搭載されていました。そして,ターン
オーバー周波数がBASSは500Hz,250Hz,125Hz,TTREBLEは2kHz,4kHz,8kHzと,それぞれ
3段階に切り換えることができるようになっていました。フィルターはハイカット,ローカットが備えられ,ミュー
ティングスイッチも備えられていました。また,PHONO入力は,2系統備えられ,インピーダンスが47kΩと
100kΩの2段階に切り換えられるようになっていました。その他,AUX,TUNER,TAPE入力が備えられ
それぞれにレベル調整ができるようになっていました。
入力端子,スピーカー端子など,通常リアパネルに設けられる一連の端子が,上面に設けられたトップ・パネ
ル方式が採用され,端子の抜き差し,レベル調整,インピーダンス切換などの操作性も高められていました。

トップパネル方式

以上のように,インテグラ701は,スピーカーですぐれた技術を見せていたオンキョーが,初めて発売した
本格的単品コンポーネントとしてのアンプ,インテグラシリーズの最上級機として,オーソドックスながら,し
っかりと先進的かつ高度な技術が投入され,すでに高い性能と完成度を示していました。しっかりした低音
とクリアな中・高域を持った元気な音は,その後のオンキョーのアンプ分野での躍進を予感させるものがあ
ったと思います。また,初代インテグラシリーズの中でも最上級機だけあり,この701だけは,受注生産と
なっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



超高級ソリッドステート・プリメインアンプ

◎全段完全直結回路
◎差動増幅回路
◎歪率補正回路
◎安定な電源部
◎コンプリメンタリー方式イコライザ回路

●特殊ミューティング回路の採用
●2dBステップのスイッチ式RL独立トーン回路(ターンオーバー可変)
●ハイカット・ローカット・フィルタ付
●PH入力インピーダンス切換付
●PHレバー・セレクタ方式
●新案チャック式SPターミナル採用
●2系統のSP接続端子付
●AUX・TUNER・TAPEレベル調整付
※ 本機は受註生産です。




●主な定格●



●メインアンプ部●

ダイナミックパワー(8Ω)
190W
定格出力(THD0.1%時8Ω)
75W+75W
歪率(1kHz)
定格出力時:0.1%
5W時:0.03%以下
500mW時:0.03%以下
混変調SMTP(1W)
0.02%以下
周波数特性
10〜70,000Hz−0,−1dB
パワーバンドウィズ
5〜100,000Hz(0.1%−3dB)
ダンピングファクター
100以上
S/N(IHF Aネットワーク)
110dB以上
残留雑音
0.1μV以下
定格入力
1V



●プリアンプ部●

歪率
0.1%以下
混変調歪
0.15%以下
RIAA偏差
±0.4dB以内
イコライザアンプ許容入力
280mV
S/N(IHF Aネットワーク) AUX:90dB以上
PH-1,PH-2:75dB以上
感度及び入力インピーダンス
PH-1,PH-2:3mV(47kΩ又は100kΩ)
AUX,TUNER,TAPE,MONITOR:200mV(100kΩ)
出力端子
SP用端子(A,B,A+B),ヘッドホンジャック
テープ同時録音端子(出力100mV)
テープ録再コネクター,プリアンプ出力(最大4V)
マルチステップアップ用コネクター
AC OUTLET SWITCED 2,UNSWITCHED 2
寸法
437W×345D×136Hmm
重量
13kg

INTEGRA613の写真
ONKYO INTEGRA 613
STEREO POWER AMPLIFIER

インテグラシリーズは,マルチアンプへの発展性がもう一つの大きな特徴でした。INTEGRA 613
は,チャンネルディバイダー付メインアンプと称され,その通り,ディバイダー回路とメインアンプを
1台の中に収めた構成になっており,インテグラシリーズのプリメインアンプに搭載された端子と1
本のコードで接続して,マルチアンプへの発展が容易にできるようになっていました。

チャンネルディバイダー部は,「ダイナミック・デバイディング方式」と称し,ローパスとハイパスチャ
ンネルの周波数が,それぞれ独立して11ポイントの周波数で切り換えられるようになっていました。
それまでの通常のディバイディング・ネットワークは,クロスオーバー可変の際,ローパスとハイパス
のクロスオーバーした周波数がそのまま動くだけのものでしたが,インテグラ613は,スピーカーの
特性によって,ローパスポイントとハイパスポイントを離したり近づけたりすることも可能となっており
より適したクロスオーバー特性が得られるようになっていました。
スロープ特性は,12dB/octと6dB/octに切り換えられ,チャンネルのゲインを調整するレベル・コン
トローラーは,1dBステップのスイッチ方式で,合計30dB(+10dB,−20dB)に亘って細かく調整
できるようになっていました。これらを組み合わせると,微妙で細かな調整が行うことができるシステ
ムとなっていました。

パワーアンプとしては,50W+50W(8Ω,THD0.1%時),ダイナミックパワー140W(8Ω)と,
当時としてはかなりのハイパワーアンプとなっており,インテグラシリーズのプリメインアンプと付属の
コード1本で接続することで,マルチチャンネルシステムが手軽に組めるようになっていました。さらに
インテグラ613を2台,3台・・・と増やしていくと,順次12チャンネルまでのマルチチャンネルシステム
が可能となるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



チャンネルデバイダー付メインアンプ

◎画期的なダイナミック・デバイディング方式
◎簡単に接続できます
◎マルチ・ステップアップ方式
◎チャンネル・レベル・コントロール



●主な定格●



●メインアンプ部●

ダイナミックパワー(8Ω)
140W
定格出力(THD0.1%時8Ω)
50W+50W
歪率(1kHz)
定格出力時:0.1%
5W時:0.04%以下
500mW時:0.05%以下
混変調SMTP(1W)
0.05%以下
周波数特性
10〜70,000Hz−0,−1dB
パワーバンドウィズ
20〜50,000Hz(0.1%−3dB)
ダンピングファクター
100以上
S/N(IHF Aネットワーク)
100dB以上
残留雑音
0.15μV以下
定格入力
1V



●ネットワーク部●

クロスオーバー周波数
(ローチャンネル,ハイチャンネル独立可変)
250,350,500,710,1k,2k,2.8k,4k
5.7k,8k,11kHz(11周波数)
スロープ
12dB/oct,及6dB/oct切換
レベル調整
スイッチ式 1dBステップ
定格入力より+10〜−20dB可変
定格入力
1V
付属装置
位相切換スイッチ,フィルタ・セレクト・スイッチ
入出力端子(オンキョー・インテグラシリーズ以外の
機種にも使用化)
チャック式スピーカ端子

※本ページに掲載したINTEGRA701,INTEGRA613の写真,仕様表等は1969年の
 ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権があります。した
 がって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますので
 ご注意ください。

 

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