Victor JA-S7
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥69,800
1972年に,ビクターが発売したプリメインアンプ。この年よりビクターが展開していたプリメインアンプの
「JA-Sシリーズ」の1台で,当初展開された「JA-S1桁シリーズ」では,JA-S9の弟機として発売され,
基本設計を受け継ぎ,コストパフォーマンスを高めた1台でした。
PHONO入力のイコライザー回路は,基本的に上級機のものをそのまま採用していました。容量誤差の
少ない素子を厳選して使用し,RIAA偏差±0.5dBを実現していました。さらに,厳選された低雑音PNP
シリコン・トランジスターを,初段と2段目に使用し,終段は250Vにも耐えうる,高耐圧・低雑音NPNシリ
コン・トランジスターを用いて,85Vの高圧を印加した,混成C-E型帰還3段直結型とすることで,最大許
容入力300mV,ピーク値で800mVを実現していました。
パワー部は,上級機同様に増幅段間にカップリングコンデンサーを使用しない全段直結ピュアコンプリメ
ンタリーOCL回路を採用していました。広帯域かつ多量のNFBがかけられ,低域から高域までインピー
ダンスのうねりがなく,ダンピングファクターも全帯域にフラットな特性をもつ,安定した動作を実現してい
ました。こうした回路により,40W×2(8Ω両ch動作)の出力を確保していました。
トーンコントロールとして,上級機同様にSEA(Sound Effect Amplifier・グラフィックイコライザー)が
搭載されていました。40,250,1000,5000,15000Hzの中心周波数の5素子で,各ポイントを
±12dBの範囲で可変できるよシステムになっており,部屋やスピーカーの特性に合わせてキメ細かな
調整が可能となっていました。そして,切換スイッチで,テープアウトの出力にも働かせることができるの
で,録音時にも細かな調整が可能となっていました。
ボリュームは,相互偏差1dB以内の高精度超連動4連ボリュームが搭載されていました。他の2chアンプ
を加えると4chのマスターボリュームとしても使うことができるようになっており,ラウドネス・コントロールや
-20dBのミューティングも4ch分装備されていました。そして,4chにシステムアップするための入・出力
端子もリアに装備されていました。
入力は,PHONO2系統,AUX3系統,TAPE PLAY2系統,MAIN IN,4CHANNEL REAR INが装
備されていました。PHONO1は,リアにカートリッジ負荷3段切換,出力レベル調整が装備されていました。
また,AUX1にも入力レベル調整が装備されていました。
出力は,TAPE REC2系統,PRE OUT2系統,4CHANNEL REAR OUT,SPEAKER2系統が装
備されていました。TAPE2系統は相互ダビングも可能で,DIN端子も2系統装備されていました。
その他,機能的には,12dB/oct(18Hz)のサブソニックフィルター,-12dB/oct(9kHz)のHIGHフィル
ター,MODE(STEREO/REVERSE/L+R/L/R)切換などが装備されていました。
以上のように,JA-S7は,上級機の内容をしっかり継承し,機能的にも使いこなしがいのある1台でした。
外観デザインも,上級機に負けないもので,別売のウッドケース(WD-1・¥3,400)に収めると高級感の
あるものとなりました。明るく軽やかな音は,ビクターらしさを感じさせるもので,音楽を楽しく聴けるコストパ
フォーマンスにすぐれたアンプとなっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
高い基本性能と5素子SEAの内蔵など
ハイ・クラスなプリメイン・アンプ
■JA-S7型は最高級JA-S9型の姉妹機種
◎安定した高性能を発揮する,過渡応答重視の設計。
◎最大許容入力300mV(RMS),RIAA偏差±0.5dB
のイコライザー部。
◎パワー部は,全段直結ピュア・コンプリメンタリー
OCL回路。
◎トーン・コントロールは,便利な5素子SEAシステム,
録音回路にも使える楽しい方式。
◎応答の早い,自動復帰型保護回路で,安全性も重視。
◎シャープなロー・カットとハイ・カット・フィルター。
◎4CH時にも使える,超連動4連ボリューム。
◎そのほかにも,多くの機構が完備。
●2系統テープの交互ダビング・スイッチ。
●2系統スピーカーの切り替えと同時接続。
●カートリッジ負荷3段切り替え。
●PHONO1及びAUX1の入力レベル調整。
●プリメイン分離端子。
●多くの入力端子。
回路方式 |
全段直結ピュアコンプリメンタリーOCL |
ミュージックパワー(IHF) | 4Ω:140W(70W+70W) 8Ω1kHz:110W(55W+55W) |
実効出力 |
両ch駆動8Ω1kHz:80W(40W+40W) 片ch駆動8Ω1kHz:80W(40W+40W) 20Hz~20kHz両ch動作8Ω:70W(35W+35W) |
高調波歪率 |
0.05%以下(実効出力時1kHz) |
混変調歪率 |
0.4%(1W出力時) |
パワーバンド・ウィズス |
20Hz~30,000Hz(両ch8Ω,35W,THD0.25%) |
周波数特性 |
5Hz~450,000Hz(-3dBポイント1W出力時) |
ダンピング・ファクター |
50(8Ω負荷) |
負荷インピーダンス |
4~16Ω |
入力感度 |
1V |
周波数特性 |
20~50,000Hz±0.5dB |
トーンコントロール |
SEA中心周波数:40,250,1000,56000,15000Hz SEA可変範囲:±12dB |
入力感度/インピーダンス |
PHONO:2.5mV/47KΩ AUX:200mV/100kΩ TAPE PLAY:200mV/100kΩ |
SN比 |
PHONO:82dB(IHF)/57dB(RMS) AUX:101dB(IHF)/82dB(RMS) |
イコライザー特性(RIAA偏差) |
±0.5dB |
PHONO最大許容入力 |
840mV・P-P/300mV・RMS |
カートリッジ負荷抵抗切替え |
33,47,100kΩ |
録音出力レベル |
PIN JACK:180mV DIN:30mV |
フィルター |
SUBSONIC:12dB/OCT 18Hz HIGH:-12dB/OCT 9kHz |
ミューティング |
-20dB |
ラウドネス(-30dBポイント) |
50Hz +11dB,1kHz+1.5dB,40kHz +4dB |
使用半導体 | トランジスター32,ダイオード14 |
消費電力 |
90W |
電源 |
AC100V 50/60Hz |
寸法 |
420W×138H×333Dmm |
重量 |
10.5kg |
※本ページに掲載したJA-S7の写真,仕様表等は,
1973年10月のVictorのカタログより抜粋したもの
で,日本ビクター株式会社に著作権があります。し
たがってこれらの写真等を無断で転載・引用等する
ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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