Ｖｉｃｔｏｒ　ＪＬ-Ｂ４４
ＤＩＲＥＣＴ　ＤＲＩＶＥ　ＰＬＡＹＥＲ　ＳＹＳＴＥＭ　￥４９，８００

１９７３年に，ビクターが発売したプレーヤーシステム。ビクターは，前年の１９７２年に，実力派の単体パーツ
ターンテーブルユニットＪＬ-Ｔ７７（￥５３，０００），キャビネットＪＬ-Ｃ７７（￥１４，０００），トーンアームＵＡ-７７
（￥１３，０００）を組み合わせたプレーヤーシステムＪＬ-Ｂ７７を発売し，その積層構造の高剛性キャビネット
をはじめ，画期的なプレーヤーシステムとして高評価を受け，その後の各社のプレーヤーシステムに影響を
与えました。その弟機として発売されたのがＪＬ-Ｂ４４でした。

ＪＬ-Ｂ４４の大きな特徴として，ＪＬ-Ｂ７７でビクターが初めて開発，採用した積層構造の重量級無共振キャビ
ネットの採用がありました。それまでのプレーヤーのキャビネットが薄板で作られた箱であったのに対し，高
密度のブナ材を特殊ビニール系接着剤で４１層，６０mmの厚さに積み重ね１枚板に仕上げ，モーターやアー
ムの部分だけをくりぬいた構造で，この後，他社でもこうした積層型が主流となりました。この構造により，内
部振動，外部からの振動に強い，重く丈夫で共振しにくいキャビネットとなっていました。
さらに，外部からの振動対策，ハウリング対策として，ゴム製の特殊形状のアイソレーターの搭載でした。こ
のアイソレーターは，高さ調整機構も装備されていました。



ターンテーブル板には，ＪＬ-Ｂ７７のものがそのまま搭載され，直径３１ｃｍ，高精度なアルミ合金ダイキャスト
製で，1枚ずつ丹念にダイナミックバランスをとりながら仕上げられたものでした。ターンテーブルシートはゴム
製で，密着性やレコードのホールド性が十分に考慮され，ターンテーブルの鳴きを抑えるとともに，レコード盤
自体の共振も防いでいました。
ターンテーブルの駆動は，ＪＬ-Ｂ７７と同様にモーターのシャフトで直接ターンテーブルを駆動するダイレクト・
ドライブ方式が採用され，８極２４スロットのＤＣサーボ・モーターが搭載されていました。
前部には，反射式のストロボスコープが設けられ，３３1/3ｒｐｍ，４５ｒｐｍそれぞれ独立して回転数の微調整が
できるようになっていました。



トーンアームは，Ｓ字型・スタティックバランス型で，ビクター独自のＴＨ（トレーシング・ホールド）方式を採用して
いました。ＴＨ方式は，メインウェイトの位置を下げ，アーム可動部の重心を低くし，まるでヤジロベエのように，
アームは常に正しい位置を保とうとする働きをもたせたもので，アームのトレーシング能力を高めていました。
ヘッドシェルは軽くて強度の高いインパクト・プレス製で，アームパイプ内部には防振材を充填し，不要な共振
を抑えていました。そのほか，糸吊り式インサイドフォース・キャンセラーや，オイルダンプのアームリフター，低
容量出力コードなどが搭載されていました。また，ＪＬ-Ｂ４４には，ＭＭ型カートリッジが標準装備されていました。

以上のように，ＪＬ-Ｂ４４は，ＪＬ-Ｂ７７の弟機としてコストダウンが図られながらも，内容をかなりの部分継承し
構造面でも機構面でもしっかりとした作りがなされ，非常のコストパフォーマンスの高い１台となっていました。
ビクターのＤＤプレーヤーに対する高い技術と志が生かされた意欲作であったと思います。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

超重量級キャビネットとＤ・Ｄモーターで
ガッチリとまとめ上げたプレーヤーシステム

◎このクラスでは群を抜いた，超重量級の
　無共振キャビネット。
◎モーターは理想的なダイレクト・ドライブ方式。
◎ターンテーブル板は，精度の高いアルミ合金
　ダイキャスト製。
◎アームは防振対策をほどこすと共に，トレーシング
　を向上させたＴＨ方式。
◎カートリッジは高いトレーシング能力と，
　美しい音質のＭＭ型が付属。

●ＪＬ-Ｂ４４型　規格●

※ 本ページに掲載したＪＬ-Ｂ４４の写真・仕様表等は１９７３年７月の
　 Ｖｉｃｔｏｒのカタログより抜粋したもので，ＪＶＣケンウッド株式会社に
　著作権があります。したがって，これらの写真等を無断で転載，引用
　等をすることは法律で禁じられていますので，ご注意ください。
 

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