Victor JL-B77SERIES
DIRECT DRIVE PLAYER ¥80,000
1972年にビクターが発売したプレーヤーシステム。モーター,アーム,キャビネットなど各部に
それまでにない新しい設計がなされ,ここで採用された技術は,後の各社のプレーヤーに影響
を与えたという画期的な1台でした。
JL-B77は,ターンテーブルユニットJL-T77(¥53,000),キャビネットJL-C77(¥14,000)
トーンアームUA-77(¥13,000)を組み合わせたプレーヤーシステムで,実力派の単体パーツ
を組み合わせたという形になっていました。
ターンテーブルユニットJL-T77は,ダイレクトドライブ方式を採用し,モーターとして20極60スロッ
ト6フェーズのDCモーターを搭載していました。無接点のホール素子サーボとビクター独自の正弦
波駆動方式が採用され,ワウ・フラッター0.03%(WRMS)という静かで安定した回転を実現して
いました。このモーターは,起動時にはトルクの大きいDCモーターとしての特性を持ち,定常回転
時は,駆動電流を正弦波に変換して加えていることから,通常の矩形波駆動に比べて滑らかな回
転を実現し,ホール素子を用いた電流検出と回転制御により回転の安定性を確保したもので,現
代の高性能モーターに通じる先進的な内容のものでした。
ターンテーブル本体は,直径31cm,高精度なアルミ合金ダイキャスト製で,1枚ずつ丹念にダイナ
ミックバランスをとりながら仕上げられたものでした。ターンテーブルシートはゴム製で,密着性やレ
コードのホールド性が十分に考慮され,ターンテーブルの鳴きを抑えるとともに,レコード盤自体の
共振も防いでいました。
前部には,反射式のストロボスコープが設けられ,331/3rpm,45rpmそれぞれ独立して回転数の
微調整ができるようになっていました。
キャビネットJL-C77は,本機の最大の特徴といえるもので,それまでのプレーヤーのキャビネットが
薄板で作られた箱であったのに対し,高密度のブナ材を特殊ビニール系接着剤で60mmの厚さに積
み重ね,モーターやアームの部分だけをくりぬいた初の積層型で,この後,他社でも積層型が主流と
なりました。こうした構造により,内部振動,外部からの振動に強い,重く丈夫で共振しにくいキャビネ
ットとなっていました。そして,下部にはアイソレーターが備えられ,耐ハウリング特性をさらに高めて
いました。
アームボード部分は,厚さ7mmの重量級のアルミ合金板が使用され,アームをしっかりと固定できるよ
うになっていました。また,このアームボードは着脱可能で,スペアも別売りされ,ボードごとアームを交
換するというようなことも可能となっていました。
さらに,JL-C77には,自由な角度で固定できるフリー・ヒンジ型の厚手のアクリル製のダストカバーも
付属していました。
トーンアームUA-77は,S字型・スタティックバランス型で,ビクター独自のTH(トレーシング・ホールド)
方式を採用していました。TH方式は,メインウェイトの重量を下方にかたよせて,アーム可動部の重心
を低くし,まるでヤジロベエのように,アームは常に正しい位置を保とうとする働きをもたせたもので,
アームのトレーシング能力を高めていました。
ヘッドシェルは軽くて強度の高いインパクト・プレス製で,アームパイプ内部には防振材を充填し,不要
な共振を抑えていました。そのほか,糸吊り式インサイドフォース・キャンセラーや,オイルダンプのアー
ムリフター,低容量出力コードなど高性能,高機能を備えていました。
以上のように,JL-B77は,個々の優れたパーツを組み合わせた高性能なプレーヤーシステムで,積
層型という後の主流となるキャビネット構造の先駆者でもあった画期的な1台でした。ビクターのプレー
ヤー作りのセンスが感じられる名機だと思います。