JS-55の写真
Victor  JS-55
3WAY SPEAKER  SYSTEM ¥46,500

1976年に,ビクターが発売したスピーカーシステム。当時,ビクターは西ドイツKDUコーンを搭載したSX-3シリー
ズが高い評価を得てベストセラーモデルとなっていました。また,同時期,アメリカのホーレー社製のコーンを搭載し
たシステムも,バックローディッドホーン,コアキシャル型など多様な型式で発売していました。そうした中,ホーレー
社製コーンを搭載してオーソドックスな3ウェイモデルとして発売されたのがJS-55でした。

JS-55の最大の特徴は,「PSCS」と称するエンクロージャーの構造の工夫にありました。JS-55は,基本的には
バスレフ型のエンクロージャーですが,「PSCS」はバスレフ型エンクロージャーのダクト構造を工夫したものでした。
バスレフ型のエンクロージャーは,ウーファーコーンの後方に放射されている音をエンクロージャー内部で位相反転
してポート(通気孔)から放出することで低域の再生効率を高めようとするもので,密閉型エンクロージャーに比べる
と,ウーファーのfo(最低共振周波数)より20%ほど低い周波数まで平坦に再生でき,foから少し低い周波数帯域
にかけての能率が大きく改善され,軽い振動系とより小さなエンクロージャーで効率のよい低域再生が可能となる特
性を持っています。また,その特性や音質はポートに付けられたダクト(=管)の長さ,断面積,形状等により大きく変
わってきます。バスレフ型は,低歪率で低域が伸ばせるというメリットの反面,低域の過渡特性が悪くなりやすいとい
う特性があり,上述のダクトの設計が重要になってきます。そのため,ダクトの長さを精密調整する,ダクトを分散配
置するマルチダクト,ダクトの吸音材を入れるダンプド・バスレフなど様々な工夫が行われています。「PSCS」はそう
したダクト構造の工夫の一つで,「Pulsive Sound Control System」の略でした。

PSCS原理図

「PSCS」では,ダクトの中にレジスター・ボードと称する2本の横棒が入っており,これがパルシブな低域の入力に
対して音響抵抗となり過渡特性を向上させるというものでした。定常入力状態で,エンクロージャー内部の音圧が
比較的ゆるやかに変動している場合はふつうのバスレフ型と同様な動作をし,パルシブな入力で内部音圧が急に
変動した場合にはダクトの横棒が音響抵抗となることでコーンの動きをおさえ,鋭い音の立ち上がり立ち下がりを
可能とし,十分な低域ののびと過渡特性の両立が図られていました。
エンクロージャーは,針葉樹材をベースにした高密度チップボードが使用されていました。振動減衰特性の素直な
針葉樹材を強く押し固めたもので,比重が大きく堅牢で,濁った箱鳴きが抑えられていました。

JS-55の内部

ウーファーは,25cm口径のコーン型で,密閉型のように振動系質量を重くしてfoを低くしなくてもよいバスレフ型
のメリットを生かすため,軽量で剛性の高いアメリカ・ホーレー社製のコーン紙を使用したユニットを搭載していま
した。この軽量コーンを直径120mmの大型のマグネットで駆動することにより,大振幅時の低歪みと,小入力時
のリニアリティの改善が実現されていました。フレームは厚さ6mmの頑丈なアルミダイキャスト製のものが採用さ
れていました。

スコーカーは,12cm口径のコーン型で,コーン紙はウーファーと同じくホーレー社製のコーン紙を使用していまし
た。通常コーン基部にダンパーが設けられますが,リニアリティと過渡特性を高めるため,JS-55のスコーカー
では,布ダンパーを省いた構造となっていました。磁気回路には,銅キャップ付きのヨークを使用した強力なもの
が搭載されていました。フレームは5mm厚のアルミダイキャストフレームが採用されていました。
トゥイーターには,ホーン型が搭載されていました。アルミ製のホーンに4mm厚のダイキャストフレームを付けた
本格的なホーン型ユニットが使用されていました。ダイアフラムには特殊コーティング処理が施された硬質軽合
金(アルミニウム合金)が採用されていました。このダイアフラムは,機械歪みのないエアー成型により作り出さ
れ,密度,ヤング率ともすぐれた特性が確保されていました。

以上のように,JS-55は,ビクターがバスレフ方式の可能性を高めようとした意欲作で,手頃な大きさ,価格の
中で,明るくクリアな音を実現し,音楽を楽しく聴かせるスピーカーとして仕上げられていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



低域のパルスが冴えるPSCS,
あたらしいバスレフ。


全帯域過渡特性追求,
高能率(94dB/W)ブックシェルフ・
スピーカーシステム。



●JS-55型規格●

型式
3ウェイ・PSCSバスレフ型
スピーカー
25cm米国ホーレー製コーン
12cmホーレー製コーン
ホーン
最大入力
60W
再生周波数帯域
42〜20,000Hz
インピーダンス
8Ω
出力音圧レベル
94dB/W(1m)
クロスオーバー周波数
700Hz,5500Hz
レベル・コントロール
定抵抗連続可変型
寸法
610H×350W×335Dmm
重量
18.0kg


※ 本ページに掲載したJS-55の写真,仕様表等は,1976年
 2月のVictorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株
 式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無
 断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので
 ご注意ください。


 

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