LUXMAN K-04
MANUAL CALIBIRATION CASSETTE DECK ¥218,000
ラックスが1983年に発売した高級カセットデッキ。ラックスは,ドコーダーの工場を買収し,1970年代後半にカセッ
トデッキ分野に参入し音質重視の高性能なカセットデッキを次々に発売していました。残念ながらあまり大ヒットはし
ませんでしたが,マニア向けの性能の良いデッキがたくさんありました。そんなラックスが1983年に発売した超弩級
ともいえるカセットデッキK-05の弟機として発売したのがK-04でした。



走行系には,上級機K-05と同一の高精度メカニズム「G.T.transport」が搭載されていました。厚肉の合金ダイキャ
スト製のモーター・フレーム・シャーシとクローズドループ・デュアルキャプスタン方式の2組のキャプスタン軸受けを堅
固に一体成形し,キャプスタン軸とピンチローラー軸の厳密な垂直性と,相互の軸の完璧な平行性を確保した無骨と
もいえる強固な構造がとられていました。さらに,2本のキャプスタン軸の周速に差をもたせることで,ピーク時の共振
を防ぎ,ワウ・フラッターの大幅な改善を図っていました。



キャプスタン駆動用DDモーター,リール用モーター,アシスト用モーターとそれぞれ独立にモーターを搭載した3モー
ター構成で,駆動構造をシンプルにして,メカニズムの複雑化による音質の劣化を避けていました。メカニズム駆動
にはソレノイドを使わずモーターを使用したサイレントメカニズムとして,動作モード切替時の振動やショックをなくし,
メカニズムに狂いが生じにくく初期性能を維持できるような設計としていました。このような高度なメカニズム部の設
計により,0.022%以下という低ワウ・フラッターを実現していました。

アジマスをはじめとするテープタッチの問題に対しては,超精密なコンビネーション・ヘッドをベースにして3次元的に
正確な位置決めが行われ,それを精密なシャーシが支えていました。また,ナカミチのデッキに見られるテープパッ
ドリフターが採用されていました。これは,テープ装着時にカセットテープのテープパッドを押し上げるようになった構
造で,ヘッドへのテープタッチをパッドに頼らずデュアルキャプスタンによるコントロールで行うものでより精度の高い
テープタッチを目指した設計でした。



ヘッドもオリジナル開発の専用品でした。録音ヘッドは,最大飽和磁束密度が高く歪率の良いセンダスト材を3枚ラ
ミネート構造にしたもので,録音減磁の低減と低歪率を実現していました。再生ヘッドは,高い再生出力と高域特性
を両立させるために,高域周波数特性にすぐれたHIP(Hot Isostatic Press)フェライトを採用し,極端に狭いヘッ
ドギャップをとらずにすぐれた高域特性を確保し,ギャップ幅を狭めると高域特性は向上するが再生出力は低下す
るという2律背反を解消し,高域特性と高い再生出力を両立させていました。また,形状の改善により,低域を歪ま
せるコンター現象を解消していました。
消去ヘッドは,消去効率の高い金属磁性体と発熱量の少ないフェライトコアの利点を併せ持たせるために,フェライ
ト/センダスト結合ヘッドを開発して搭載し,発熱を抑えながら消去効率の向上を実現していました。また,消え残り
をなくすために,2カ所のヘッドギャップの幅の異なる非対称デュアルギャップという凝った構造がとられていました。

アンプ部は,アンプ技術に経験の深いラックスならではの高性能なもので,各段とも完全DC構成とし,再生ヘッドと
再生アンプの入力間の結線には無酸素銅線を使用していました。アンプシャーシには銅メッキを使用して磁性体歪
みを追放し,電源部は,録音系,再生系,ドルビー系等回路ブロックごとに専用レギュレーターを用いた独立供給で
相互の干渉を排除していました。

上級機のK-05には,テープの特性の違いに対応するために,コンピューターチューニングシステムが搭載されてい
ましたが,K-04には,バイアス,レベル,イコライザのマニュアルチューニングが搭載されていました。バイアス,レ
ベル,イコライザそれぞれに専用の周波数のオシレーターが装備され,マニュアルで精密なチューニングができるよ
うになっていました。
レベルメーターは,針式メーターが採用され,VU/PEAKの切替も可能で,マニュアルチューニング時なども,LEDの
バーグラフメーターではつかめない中間値など微細な変化もとらえやすくなっていました。
録音レベルは,L・R独立のスライド式フェーダーに加え,L・R同時に設定できるマスターフェーダーも装備され,フェー
ドIN/OUTもワンタッチでできるようになっていました。
テープカウンターは,蛍光管表示のデジタル4桁式で,通常の4桁表示/TIME表示が切り替えられるようになってい
ました。
ノイズリダクションとして,ドルビーCタイプ/Bタイプが装備され,ON/OFFできるMPXフィルターも装備されていまし
た。
その他,機能としては,テープカウンターを利用してメモリー間のエンドレス再生もできる2メモリー機能,空白録音が
できるオートスペースとReview/Cue機能,電源ON時にヘッドを自動消磁するオートディマグネタイザ,再生スピード
を微調整できるピッチコントロール,電源極性が表示されるラインフェイズ・センサなども装備されていました。

以上のように,K-04は,重厚ともいえる精密なメカニズム,マニュアル調整による高度な録音機能など,ラックスが
贅を尽くした内容をもつ本格的な高級デッキでした。カセットデッキの分野では実績の少ないブランド故か人気モデル
とはいえませんでしたが,実力派の中身の濃い1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



感動を科学して生まれた。

「原音楽」の忠実再生は,
究極の走行系を前提とする。

◎堅固な構造体にささえられた超精密な   
  メカニズム「G.T.transport」が,      
  大地のように安定したテープ走行を実現。
◎アジマスだけでなく3次元で          
  きわめるべきテープタッチ。そこで超精密
  コンビネーション・ヘッドが生きてきます。
◎素材論争や数値合戦を超えた        
  「適材適所」の視点で,オリジナルの   
  ヘッドを開発・製造しています。      
◎デュオベータ思想が息づくアンプ部の   
  充実がカセットデッキの完成度を    
  さらに高次元なものにしています。
◎あくまで音質追求のための機能群。
 ひとまとめで紹介するにはしのびないほどの
 高度なパフォーマンスです。
●電源ON時にヘッドを自動消磁するオートディマグネタイザを装備
●聴感上もっともノイズに敏感な帯域ですぐれた効果を生む
 ドルビーCタイプを採用
●より高度な録音のためにあえてニードルメータを採用
●マスター・フェーダで,フェードIN/OUTがワンタッチ
●家庭用電源の極性に合わせることができるラインフェイズ・センサ
●空白録音ができるオートスペースとReview/Cue機能
●4桁カウンタはTIME/TAPE切替式
●2メモリ機能で,メモリ間のエンドレス再生も
●高出力ヘッドホンアンプ内蔵




●K-04 SPECIFICATIONS●

トラック型式 4トラック・2チャンネル・ステレオ方式
ヘッド構成 録再:センダスト/フェライト コンビ録再ヘッド 
消去:デュアルギャップ・センダスト/フェライト接合ヘッド
使用テープ ノーマルテープ,クロームテープ,メタルテープ
テープ速度 4.75cm/sec
モータ構成 キャプスタン用:DD FG SERVO DC×1 
リール用:DC×1 
ヘッドハウジングリフタ用:DC×1
操作方式 ソフトタッチ・ロジック・コントロール方式
ワウ&フラッタ 0.022%以下(W.R.M.S)
巻き取り時間 80秒以下(C60にて,FF・REWとも)
周波数特性 15~21,000Hz(20~22,000Hz±1.5dB):メタルテープ 
15~20,000Hz(20~20,000Hz±1.5dB):クロームテープ 
15~20,000Hz(20~20,000Hz±1.5dB):LHテープ
総合歪率 1.0%以下(LHテープ,1kHz,0dB) 
(0.5%以下,Real Analized Distortion,LHテープ,1kHz,0dB)
SN比 60dB以上(ドルビーoff,JIS-A補正):メタルテープ 
65dB以上(ドルビーB,CCIR補正):メタルテープ 
73dB以上(ドルビーC,CCIR補正):メタルテープ 
56dB以上(ドルビーoff,JIS-A補正):クロームテープ 
65dB以上(ドルビーB,CCIR補正):クロームテープ 
73dB以上(ドルビーC,CCIR補正):クロームテープ 
53dB以上(ドルビーoff,JIS-A補正):LHテープ 
63dB以上(ドルビーB,CCIR補正):LHテープ 
71dB以上(ドルビーC,CCIR補正):LHテープ
入力 ライン:100mV
出力 ライン:550mV ヘッドホン:50mW/8Ω負荷
付属機能 レコーディング・ミュート機能,オート・スペース機能 
オート・リワインド機能,オート・プレイ機能, 
フル・マニュアル・キャリブレーション,データ・メモリー機能,
Peak/VU切替ニードルメータ,タイマ録再機能 
ドルビーNRシステム,リモート操作可能,ピッチコントロール 
電源の極性を管理できるライン・フェーズセンサ
電源 AC100V(50Hz/60Hz)
消費電力 30W
寸法・重量 460W×158H×361Dmm・11.0kg
※本ページに掲載したK-04の写真,仕様表等は1983年9月のLUXMANのカタログ
より抜粋したもので,ラックス株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等
を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。      
  
 
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