LUXMAN K-12
STEREO CASSETTE DECK ¥158,000
1978年に,ラックスが発売したカセットデッキ。ラックスは,ドコーダー(国内有数のオープン
リールデッキメーカーでもあった。)の工場を買収してカセットデッキの分野に参入し,メカニズ
ムやアンプ系など,徹底的にこだわった超弩級カセットデッキ5K50を開発しました。(発売は
5K50が後になりましたが・・,おそらく懲りすぎたため?)その際に得られた技術やノウハウ
を生かして同時期に開発されたカセットデッキがK-12でした。

K-12は,基本的にはワンウェイ・2ヘッドと,オーソドックスな構成のカセットデッキで,1970
年代後半に本格化したメタルテープへの対応を各部のレベルアップで,積極的に行っている
ことが大きな特徴でした。メタルテープは,従来の酸化鉄をもとにした磁性体を持つテープに
比べ,はるかに高い記録能力がある反面,抗磁力が大きく,録音にも消去にも高い性能が必
要となります。そのため,ヘッド,アンプなどの強化が行われていました。

録再ヘッドは,センダスト合金によりセンアロイヘッドが搭載され,周波数特性の改善と安定し
た位相特性を実現していました。消去ヘッドにもセンアロイヘッドが搭載され,効率のよい消
去能力を実現していました。
そして,オープンリールデッキのようなごつさも感じさせる厚みのあるダイキャスト製のヘッド
ベースに2つのヘッドがマウントされ,高精度なヘッドブロックとなっていました。

走行系は,ワンウェイ・シングルキャプスタンのオーソドックスなもので,2モーター構成が採
用されていました。キャプスタン駆動用には,1回転38パルスのFG周波数制御方式のサー
ボモーターを搭載し,リール駆動用には,電子ガバナーモーター(電子式の速度可変のでき
るモーター)を搭載していました。こうした走行系によりワウ・フラッター0.04%以下という精
度を実現していました。また,モーターは,防振ゴムを介してしっかりと固定され,さらに三重
の磁気シールドが施され,機械的にも電気的にもSN比を高めていました。
走行系の操作には,信頼性の高いロジックコントロール回路が搭載され,フェザータッチ感
覚の操作が可能となっていました。メカニカルコントロールに比べて早送りや巻き戻し用の
複雑な伝達機構も大幅に単純化され,伝達ロスも少なくなっていました。また,早送りから再
生へといったような操作に対しても,安全に確実に動作するようになっていました。
操作ボタンの配置は,ラックス独自のものとなっており,再生,録音等の操作の操作性がよ
く考えられたものでした。

K-12の大きな特徴は,アンプメーカー・ラックスの技術を生かした,完全DC化された録再
アンプでした。通常のデッキの録音では,加算回路により信号電流とバイアス電流を重畳し
て録音ヘッドをドライブするので,録音における高域補正にはピーキングコイルやトラップ回
路が必要で,コイルやコンデンサーがアンプのNFBループ内に挿入されていました。そこで
ブリッジ回路のバランスをくずすと負荷に電流が流れることを利用して,一定に流れるバイ
アス電流を信号電圧でスイングさせ,信号電流との重畳電流を得て録音ヘッドをドライブす
るという独自の「BRBS(Bridge Recording by Bias current & Signal current)
方式)が採用され,録再アンプの完全DC化が実現し,録再ヘッドと直結されていました。こ
の完全DC化は,そりのあるアナログレコードの録音時に場合によってはトラブルを起こすこ
ともありましたが,すぐれた録音・再生性能を実現しようとするラックスの熱意を感じさせるも
のでした。実際,これ以降,カセットデッキの世界でもDCアンプが採用される例が多くなって
いきました。

レベルメーターは,上級機5K50と同じ24ドットの蛍光表示管によるピークメーターが搭載さ
れ,-40dB~+6dBまでをすぐれた応答性で表示するようになっており,-5dB~+6dBの
間が1dB間隔でピークホールドできるようになっていました。また,メタルテープ使用時には,
自動的に最大+10dBとなるように別スケールで表示するようになっていました。
テープカウンターは電子式の4桁LED表示のものが搭載され,通常はリール台の回転を光
学的に検出し,積算表示するふつうの4桁表示のカウンターで,LUXのカセットテープを使用
したときに限り,時間表示になるようになっていました。これは,当時発売していたLUXブラ
ンドのテープは,専用のハーフが開発使用されていたためで,カセットハーフ本体に時間検
出用のローラーが設けられていて,このローラーの回転を光学的に検出して走行時間をリ
アルタイムで表示するようになっていました。

LUX純正カセットテープ

機能としては,3ポジションバイアス,イコライザー独立テープ切替え,キュー,レビュー機
構,レコーディングミュート機能,ドルビーNRシステムなど,オーソドックスで音質重視の
ものが搭載されていました。

以上のように,K-12は,一見オーソドックスな2ヘッドカセットデッキですが,各部にラッ
クスならではのこだわりが感じられる1台となっていました。価格的にもそのあたりが感
じられるものとなっていましたが,アンプ技術にすぐれるラックスならではのすっきりとし
た音には独自の魅力がありました。


LUXMAN K-10
STEREO CASSETTE DECK ¥118,000


また,K-12には,弟機のK-10がありました。基本的には同一の構成となっていました。
レベルメーターが蛍光管からLEDに,テープカウンターが機械式になっている等のほか,
アンプ系にも違いがあったようですが,コストパフォーマンスが大きく高められていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



K-12

◎メタル・テープのすぐれた性能を最大限まで
 引き出す録再ヘッドと消去ヘッド
◎ワウ&フラッター0.04%以下のすばらしい
 テープ走行メカニズム
◎DCアンプ構成の録再アンプで,カセット・デッ
 キの音質を一新
◎高信頼度のロジック・コントロール回路による
 フェザー・タッチのキーボード操作部
◎最大ピークとリアルタイムのピーク・レベル
 を同時に表示する正確なレベル・メーター
◎精度の高いテープ・カウンター,LUXカセッ
 ト・テープでは時間表示に・・・・・。
◎テープの録再に便利な付属機能はすべて
 装備



K-10

◎メタル・テープに完全対応。センアロイによ
 る録再ヘッドと消去ヘッド
◎ワウ&フラッター0.04%以下。すぐれたテー
 プ走行を可能にするメカニズム
◎音質面での一新を図ったDCアンプ構成による
 ヘッドアンプ
◎フェザー・タッチ操作のフル・ロジック・コント
 ロール回路によるキーボード操作部
◎繰り返しテープ再生のできるオート・プレイ機能
 とテープ・エンドから自動的にテープを巻き戻す
 オート・リワインド機能
◎レコーディング・ミュート機能などテープの
 録再に便利な付属機能




●SPECIFICATIONS●


  K-12  K-10 
トラック型式 4トラック・2チャンネル・ステレオ方式 4トラック・2チャンネル・ステレオ方式 
ヘッド構成 録再:センアロイ・ヘッド×1
消去:センアロイ・ヘッド×1
録再:センアロイ・ヘッド×1
消去:センアロイ・ヘッド×1 
モータ構成 キャプスタン用:FGサーボ・モーター×1
リール用:電子ガバナー・モーター×1
キャプスタン用:FGサーボ・モーター×1
リール用:電子ガバナー・モーター×1 
テープ駆動方式 シングル・キャプスタン方式 シングル・キャプスタン方式 
使用テープ ノーマル・テープ,クローム・テープ,メタル・テープ ノーマル・テープ,クローム・テープ,メタル・テープ 
テープ速度 4.75cm/sec 4.75cm/sec 
ワウ&フラッタ 0.04%以下(W.R.M.S) 0.04%以下(W.R.M.S) 
操作方式 ロジック・コントロール方式  
周波数特性 CrO:20~20,000Hz(30~18,000Hz±3dB)
normal:20~18,000Hz(30~16,000Hz±3dB)
metal:20~22,000Hz(30~20,000Hz±3dB) 
CrO:20~19,000Hz(30~18,000Hz±3dB)
normal:20~17,000Hz(30~16,000Hz±3dB)
metal:20~20,000Hz(30~20,000Hz±3dB) 
総合歪率 1.2%以下(LHテープ,1kHz,0dB) 
(0.3%以下,Real Analized Distortion)
 
SN比 CrO:65dB以上(Dolby on,CCIR補正)
     56dB以上(Dolby off,JIS-A補正)
normal:63dB以上(Dolby on,CCIR補正)
      53dB以上(Dolby off,JIS-A補正)
metal:69dB以上(Dolby on,CCIR補正)
     60dB以上(Dolby off,JIS-A補正)
CrO:63dB以上(Dolby on,CCIR補正)
     54dB以上(Dolby off,JIS-A補正)
normal:60dB以上(Dolby on,CCIR補正)
      50dB以上(Dolby off,JIS-A補正)
metal:65dB以上(Dolby on,CCIR補正)
     56dB以上(Dolby off,JIS-A補正) 
入力感度 line:100mV
mic:0.25mV(最適Z:600Ω~10kΩ)
line:100mV
mic:0.25mV(最適Z:600Ω~10kΩ) 
出力レベル line:550mV
headphone:1mW(8Ω負荷)
line:460mV
headphone:1mW(8Ω負荷) 
カウンター 電子カウンター方式(一般テープ)
走行時間カウンター方式(LUX専用テープ)
メカニカル・カウンター方式 
ピーク・メーター 24dot蛍光表示管式(ピーク・ホールド可能) 12dot,LED表示式 
付属機能 レコーディング・ミュート機能
バイアス3段切替(low,high,metal)
イコライザー3段切替(normal,CrO,metal)
タイマ録再機能(市販のタイマーにて)
リモート操作機能(オプションのリモート・コントロール・ユニットにて
 リモコンユニットではオート・リワインド,オート・プレイ可能)
ドルビーNRシステム
レコーディング・ミュート機能
バイアス3段切替(low,high,metal)
イコライザー3段切替(normal,CrO,metal)
タイマ録再機能(市販のタイマーにて)
オート・リワインド,オート・プレイ機構
リモート操作機能(オプションのリモート・コントロール・ユニットにて )
ドルビーNRシステム 
電源 AC100V(50Hz/60Hz) AC100V(50Hz/60Hz) 
消費電力 44W 35W 
寸法・重量 438W×126H×370Dmm・10.5kg 438W×126H×370Dmm・10kg 
※本ページに掲載したK-12,K-10の写真,仕様表等は
 1978年の
LUXMANのカタログより抜粋したもので,ラッ
 クス株式会社
に著作権があります。したがって,これらの
 写真等を無断で
転載・引用等することは法律で禁じられて
 いますのでご注意
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