YAMAHA  K-2000
NATURAL SOUND CASSETTE DECK ¥148,000

1982年にヤマハが発売したカセットデッキ。ヤマハのカセットデッキの最上級機の系譜
はK-1シリーズで,1978年に,2ヘッドで高い性能を追求したデッキとして登場しました。
1980年にはピュアセンダストヘッド搭載のK-1aが登場,1981年にはdbx搭載のK-1d
となりました。その翌年の1982年に,K-1dの上級機的存在,あるいは後継機の3ヘッド
デッキとして登場したのがK-2000でした。

走行系は,K-1シリーズと同様にシングルキャプスタンでしたが,新しいダイレクト・ドライブ
メカニズムが搭載されていました。ブラシレスDDサーボモーターでリニアに精密にキャプス
タンを回転させるメカニズムにより,0.02%のワウ・フラッターを実現していました。また
リール駆動にはノンクラッチリール方式が採用され,動作レスポンスが速く,静かな走行メ
カニズム系となっていました。

ヘッドは,ヤマハ自慢の高純度ピュアセンダストによるコンビネーション型3ヘッドでした。
K-1aで初めて採用されたヤマハのピュアセンダストヘッドは,99.999999〜という高純
度のセンダストを高真空のカプセル内で溶かし,同じカプセル内にセットされた高速回転す
るセラミックの鋳型の中に流し込んで鋳造するという結晶方向の揃った超高純度のローイン
ピーダンスのセンダストヘッドでした。K-1xでは,このピュアセンダストをコア材として3枚ラ
ミネート構造としたマルチラミネート構造とし,3ヘッド化して,再生用0.7μ,録音用2.0μ
のヘッドギャップをとっていました。

ピュアセンダストヘッド

録音アンプ系は,ピュアカレントサーボ録音アンプからさらに発展し,「Linear EM-Trans
-duction」方式が採用されていました。これは,テープ録音時の電気(E)−磁気(M)変換
でのノンリニアなフラックス歪みを抑えるため,リニアな電流でヘッドをドライブしようとするも
のでした。従来LCバイアス発振器と出力にバイアストラップをもつ録音アンプでヘッドをドラ
イブしていたものを,歪みの少ないバイアスを録音アンプの入力でミックスしてヘッドを定電
流でダイレクトドライブすることによってヘッド電流の歪みを改善し,ピュアな録音を実現して
いました。
再生系は,デュアルFET差動入力・ダイレクトカップル・DCアンプ構成のヘッドアンプを搭載
していました。

K-2000のシーリングパネルオープン時

K-2000の大きな特徴として,ヤマハのカセットデッキで初めてコンピュータによるチューニ
ング機構を搭載していたことがありました。K-2000に搭載されたシステムは,「α-ORBiT
(Optimum Record Bias Tuning)」と称されるもので,録音感度とバイアスを自動設定
するシステムでした。1kHzと10kHzの基準信号を使って,録音感度とバイアスを約2秒の
所要時間で設定できるもので,変わっているところでは,録音した基準信号を内蔵した第2の
消去ヘッドで自動消去する仕組みになっており,その意味では,K-2000は,3+1の4ヘッド
という形になっていました。

ノイズリダクションとして,ドルビー(Bタイプ)に加えて,108dBものSN比が確保されるdbxが
搭載されていました。
機能的には,オーソドックスながら,使い易くまとめられ,テープカウンターはテープ量をリニア
に分・秒表示し,残量計や2点間リピートも可能な4桁のデジタル・リニアカウンターが搭載され
ていました。レベルメーターは,dbxによる広いダイナミックレンジに対応して−40〜+18dB
のワイドな表示のピークホールドメーターが搭載されていました。 
その他,再生時に部分消去が可能なモニタリングイレース機構や,±15%のピッチコントロ
ールなども装備されていました。

以上のように,K-2000は,ヤマハの最高級デッキとしてメカニズム,アンプ系とも充実した
中身を持ち,シンプルで美しい外観同様にヤマハらしい上品な音を持った1台でした。

K-1000の写真
YAMAHA K-1000
NATURAL SOUND CASSETTE DECK ¥108,000

K-2000にはよく似た弟機としてK-1000も発売されていました。基本的にはほぼ同一の内
容を持ち,コストパフォーマンスの高い1台でした。
主な違いとして録再ヘッドのピュアセンダストヘッドが2枚ラミネート構造のものになっていたこ
とと,チューニング機構が,セミオートタイプの「ORBiT」になっていたこと,ヘッドアンプの簡略
化,ノイズリダクションのシングル搭載などがありました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



リニアで精密
テープオーディオ時代を先駆する
多機能カセットデッキ



●主な規格●

 
K-2000
K-1000
ワウ・フラッタ
0.02%(WRMS)
0.02%(WRMS)
録音周波数特性
20Hz〜22kHz±3dB
20Hz〜20kHz±3dB
SN比(ドルビーOFF)
59dB
59dB
ヘッド構成
3+1ヘッド
3ヘッド
R/Pヘッド
ローインピーダンス・センダスト
2枚ラミネート・センダスト
モータ
ダイレクトドライブ・キャプスタン2モータ方式
ダイレクトドライブ・キャプスタン2モータ方式
バイアス調整
α-ORBiT(フルオート)
ORBiT(セミオート)
カウンタ
4桁デジタルリニアカウンタ
4桁デジタルリニアカウンタ
メータ
−40〜+18dBワイドレンジ
ピークホールドバーグラフメータ(LED16点)
−40〜+18dBワイドレンジ
ピークホールドバーグラフメータ(LED16点)
ノイズリダクション
ドルビーB,dbx
ドルビーB,dbx
ヘッドアンプ
デュアルFET差動入力DCアンプ
FET差動入力アンプ
録音方式
リニアEMトランスダクション
リニアEMトランスダクション
テープセレクタ
テープ孔+α-ORBiTによるオートセレクト
テープ孔によるオートセレクト
モニター
常時・同時モニタ可能
スルー(NR OFF)時・同時モニタ可能
オートファンクション
0ストップ,0−Mリピート,フルリピート
0ストップ,0−Mリピート,フルリピート
寸法
435W×112H×340Dmm
435W×112H×340Dmm
重量
9.2kg
9.2kg


※本ページに掲載したK-2000,K-1000の写真,仕様表等は
 1982年11月のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマ
 ハ株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
 無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注
 意ください。

   
 
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