ONKYO Integra K-701
STEREO CASSETTE TAPE DECK ¥69,800 
1988年に,オンキョーが発売したカセットデッキ。オンキョーは,アンプやスピーカーのイメージが強く,カセットデッ
キの分野では,目立ってはいませんでしたが,しっかりしたカセットデッキを作り続けていたブランドでした。前年の
1987年,各社からDAT(デジタル・オーディオ・テープ)デッキが発売され,DAT元年となりました。各社ともこれか
らはカセットデッキからDATへと主流が移ると考え,DATに注力していきました。そうした中,カセットデッキの分野
ではいわゆる高級機が少なくなり,コストパフォーマンスにすぐれた音質重視のカセットデッキの中級機を発売する
ブランドがいくつもありました。オンキョーがそうした中,発売した音質重視の中級機がK-701でした。

K-701の特徴は,基本的には機能面も含めシンプルな設計となっており,音質のポイントとなる部分にしっかりと
技術や物量を投入しているという点にありました。
走行系は,シングルキャプスタンのシンプルなワンウェイの走行メカニズムでしたが,キャプスタン駆動用にDCサー
ボモーターを,リール駆動用とメカ駆動用にそれぞれDCモーターを配した3モーター構成で,メカ駆動用に専用の
モーターが搭載されているため,メカの動作が静かなサイレントメカニズムとなっていました。キャプスタン駆動用の
DCサーボモーターは,低リップル,ハイトルクのものが採用され,全数バランス管理の大口径フライホイールとき
わめて滑らかな表面処理が行われたキャプスタンとも相まって,ワウ・フラッター0.038%WRMSという安定した
テープ走行が確保されていました。



ヘッドは,録/再コンビネーションヘッドを搭載した3ヘッド構成となっていました。録/再コンビネーションヘッドは巻
線に1個の無酸素銅の結晶で形成されているPCOCC(単結晶状高純度無酸素銅)を使用し,高度な信号伝送効
率で,微小信号から大信号までのすぐれたクオリティを実現していました。また,ヘッドブロックは,高剛性な亜鉛
ダイキャストのベースによって強固にマウントされ,テープ走行に対する最適位置を正確に保持できる構造となっ
ていました。ヘッドそのものも,全数について厳密な特性チェックを受けたもので,高精度が保証されていました。

K-701は,オンキョーのカセットデッキで初めてIntegraの名を冠したモデルで,アンプ系の設計にインテグラなら
ではのノウハウ等が投入され,高品位なパーツを投入したシンプルでストレートな回路デザインが採用されていま
した。さらに,電源部には,これまでの10分の1という低インピーダンス化を実現した新開発の「スーパーリニア電
源」を搭載していました。これは,各ブロック間の相互干渉を排除するために,アンプ系/FL表示系/駆動系への
電源供給をそれぞれ別の専用ラインで行う3ブロック独立電源方式とし,さらに,録/再アンプ系電源の整流回路
には,SBD(超高速整流ダイオード)を使用してパルス性ノイズを低減,そのうえ,3端子レギュレーターによる±2
電源構成でリップル成分の発生を従来の10分の1以下に抑えるというものでした。この「スーパーリニア電源」の
搭載によって,電源部の高速化とローインピーダンス化が実現されていました。この強力な電源部を支える強力
な電源トランスとシャーシの間のリーケージフラックスの干渉を抑え,電磁的な影響を防ぐために,電源トランスの
マウント部には,絶縁効果を持ったアイソレートベースが採用されていました。
また,録音アンプ部には,専用のバッファアンプを開発・搭載し,録音系全体の低インピーダンス化をさらに徹底し
セパレーションを向上させるとともに,モーター,ディスプレイ系からの低レベルのノイズ成分をシャットアウトして
音質の向上を図っていました。



ノイズリダクションとして,ドルビーBタイプとCタイプが装備され,さらに,高域の録音特性をバイアス電流をコント
ロールするドルビーHX-PROも搭載されていました。また,テープごとに異なるテープ特性に対応してバイアス調
整が行えるアキュバイアス・コントロールも装備されていました。
レベルメーターは,ピークホールド付・16セグメントのFL表示で,テープカウンターは,高精度なリアルタイムカウ
ンターが装備されていました。このリアルタイムカウンターは,サプライ/テイク両方のリールの回転速度から検出
する高精度なオリジナル方式で,テープの途中からでも,早送り,巻き戻し時にもテープの経過時間と残り時間を
分秒デジタル表示できるようになっていました。さらに,残り6分の時/点で再計算するリカルク機能によってより正
確な表示が可能となっていました。テープサイズは,C-46/54/60/80/90/120の6サイズ対応で,ハブサイズ
の異なるC-46とC-46Lはコンピュータが自動判別するようになっていました。
その他,TAPE/SOURCEを自動的に切換え,マニュアルでも切換えられるオートモニター,フルリピート/ブロッ
クリピートの2モードリピート,自動テープたるみ除去機能なども搭載されていました。

以上のように,Integra K-701は,ポイントとなる部分にコストをかけ,逆にシンプルにまとめ上げることで,コスト
パフォーマンスにすぐれたバランスのよい使いやすいデッキになっていました。音質もすっきりとした力強いもので
オンキョーのアンプ系の技術も生かされていると感じられる1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



高音の透明度と低音の重量感。デジタルソースとの比較を求める,
磨き上げられた高純度の3ヘッドデッキです。

透明度の高さを録る。
スーパーリニア電源,PCOCCヘッドが拓く,
新しい録再クオリティの登場。

 音のクオリティ
◎PCOCC巻線採用の高性能3ヘッド構成。
 全数特性チェックで信頼性を保証。
 余裕
◎インテグラの技術を駆使したアンプ部。
 超低インピーダンスのスーパーリニア電源。
 音のニュアンス
◎低インピーダンスの録音アンプを搭載。
 あざやかな録音クオリティを実現します。
 アイソレートベース
◎大型電源だからこそ細心の設計。
 パワートランス・アイソレートベース方式。
 トランスポート
◎安定したテープ走行性能を実現。
 高度な操作性のサイレントメカニズム。
 ドルビーHX-PRO
◎あざやかなハイレンジを獲得する。
 先進の回路・ドルビーHX-PRO。
 テープ残量表示
◎テープ編集の能力を大きく向上させた。
 高精度を誇るリニアタイムカウンター。
 音質向上のための装備
●1本ごとに微妙に異なるテープの特性を最大限
 に引き出すために,シビアなバイアス調整が行え
 るアキュバイアス・コントロールを装備。
●テープヒスノイズを低減するノイズリダクションシス
 テムにドルビーBタイプとCタイプを装備。
●外部振動を効果的に吸収するコルクプレート装着
 の大型インシュレーター。
●極性表示付電源コード。
 その他の機能
●テープモニター/ソースモニターを自動的に切
 り換えるオートモニター方式(マニュアルも可)
●フルリピート/ブロックリピートの2モードリピート。
●ピークホールド付・16セグメントのレベルインジ
 ケーター。
●タイマースタンバイ機能。
●MPXフィルタースイッチ。
●自動テープたるみ除去機能。




●定格●

トラック形式  4トラック・2チャンネル 
ワウ・フラッター  0.038%WRMS ±0.07%W Peak 
周波数特性  30~19,000Hz±3dB(メタル)
30~18,000Hz±3dB(ハイ)
30~17,000Hz±3dB(ノーマル) 
SN比  60dB(3%THD,メタル)
70dB(ドルビーB NR,5kHz)
80dB(ドルビーC NR,5kHz) 
ヘッド  PCOCC録音/再生コンビネーションヘッド,消去ヘッド 
モーター  キャプスタン駆動用:DCサーボモーター
リール駆動用:DCモーター
メカニズム駆動用:DCモーター 
消費電力  19W 
寸法  435W×131H×366Dmm 
重量 5.8kg 
※本ページに掲載したIntegra K-701の写真,仕様表等は1988年
 7月のONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキヨー株式会社
 に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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