YAMAHA K-750
STEREO CASSETTE DECK ¥74,800
1983年に,ヤマハが発売したカセットデッキ。ヤマハは,カセットデッキの分野では後発ですが,
ヤマハらしさを感じさせる美しいデザインのカセットデッキを発売し,アンプ系が生み出すヤマハ
トーンに通じる音とともに評価を得ていました。そんなヤマハが発売したオートリバースデッキが
K-750でした。

K-750は,プリメインアンプA-750,チューナーT-750などと同様に750の型番を持つ「750
シリーズ」のカセットデッキで,当時の同社の主力モデルともいえる1台でした。同社のカセットデ
ッキでは初のオートリバース機構を搭載し,多機能と音質の両立を図った設計となっていました。



ヘッドは,録再ヘッドに,耐摩耗性にすぐれ,飽和磁束密度の大きいセンダスト録再ヘッドが搭
載され,消去ヘッドには,フェライト消去ヘッドが搭載されていました。録再ヘッドと消去ヘッドは,
強固なヘッドブロックを構成し,ヘッドブロックを回転させるロータリーヘッド方式としていました。
回路的にシンプルなロータリーヘッド方式の採用でクィックリバースを実現していましたが,往復
録再で問題となるヘッドの対テープ位置ズレなどを防止するために,FWD側,RWD側独立の
アジマス調整機構,ヘッドブレ抑え機構を採用していました。



走行系は,キャプスタン駆動用にDCサーボモーターを,リール駆動用にフラットトルクDCモー
ターを搭載し,ヘッドブロックの上下動及び反転用に専用のアシストDCモーターを搭載した2+
1モーターのセパレートドライブ方式を採用して,各回転系の相互影響を防いでいましたした。
また,上級機のK-2000と同様に,ノンクラッチリール方式を採用したことにより,レスポンス
が速く,静粛な動作が実現されていました。さらに,真円度0.1μ,先端ブレ1μ以下という高
精度のダイナミックバランス型大型フライホイールを搭載し,ヘッドを含めた走行メカニズム全
体も左右対称設計となっていました。こうした走行系メカニズムにより,ワウフラッター0.04%
(WRMS)という安定走行を実現していました。

アンプ部には,ヤマハがセパレートアンプ等に採用してきたピュアカレントダム方式を採用して
いました。これは,電源から常に一定の電流が供給される方式で,アースラインや電源ラインに
信号電流が流れ込むことがなく,きれいな電源電流が得られ,このため,回路内外に存在する
各種のノンリニアの悪影響を受けることがなく,微小信号も精密に再生することができるように
なっていました。また,録音アンプには,高性能ローノイズオペアンプを使用しており,加えて±
電源を採用したことによって,メタルテープにも余裕をもって対応できる,ダイナミックレンジの
広い録音・再生を可能にしていました。
テープポジションは,NORMAL,CrO2,METALが装備され,ノイズリダクションとして,ドル
ビーBタイプに加えて,ドルビーCタイプも搭載されていました。

リバースデッキであるK-750のもう一つの大きな特徴は,オート機構付きのフェイドイン・フェイ
ドアウト機構,無音部分をサーチしての頭出し機構,残量表示も可能なリニアカウンターを組み
合わせての多彩な機能や多様なモニター機能の搭載でした。ヤマハは,「スペシャル6」と称し
て主要な6つの機能をアピールしていました。
(1)録音時に,テープエンド(カウンターの残量表示が0:00)になるとオートフェイドアウトし,リ
バース後フェイドイン録音するテープエンド・オートフェイドアウト&イン機能。(2)レコードやCD
などから録音するときに,2曲目,4曲目をとばして①→③→⑤・・・とプログラムすると,スイッチ
ひと押しで自動的に録音していく,プログラム録音機能。(3)曲の途中から録音したいとき,ボタ
ン1つで約8秒でオートフェイドインし,同じく曲の途中で録音をやめるときには約4秒でフェイド
アウトするフェイドイン&アウト機能。(4)REMAINING TIMEスイッチをひと押しすると,テープ
残量時間をカウンターに表示するとともに,未録音の録音可能部分をさがし出してスタンバイす
る未録音部分残量表示機能。(5)テープ演奏が終わった後,チューナー等のソースへ自動的に
切り替わって音楽を続けさせるオートソースチェンジ機能。(6)ヘッドホンアンプを利用した背面
に設けられたスピーカー端子であるモニタースピーカ・アウト機能 といったものでした。特に(6)
は,スピーカー端子が設けられた珍しいカセットデッキとして印象に残っています。

その他にも,多くの機能が搭載されていました。●テープ走行時間を分秒単位で確認できるリニ
ア・カウンター●テープ演奏中に気になった位置をメモリーして簡単に呼び出せるメモリー・ストッ
プ機能●録音を始めたところまで巻き戻し,再生スタンバイするレック・リターン●前後1曲の頭
出し●3種類のリバースモードが楽しめるリバースモード&オートプレイ動作●再生中,無録音部
分が15秒以上続くと,自動的に早送りを開始して次の曲を頭出ししプレイするブランクスキップ
機能●同じ曲やプログラムされた曲を最高16回までリピート再生するリピート機能●10秒ずつ
イントロ再生→早送り→イントロ再生・・を行うイントロ・スキャン機能●ミュージックテープから好
きな曲を好きな曲順で15曲まで再生するプログラム再生機能 などが搭載されていました。
また,ブラックパネルのモデル以外にシルバーパネルのモデルもありました。


以上のように,K-750は,ヤマハが初めて発売したオートリバースデッキとして,機能と音質のバ
ランスがとられた設計で,コストパフォーマンスにすぐれた1台となっていました。高域に向かってすっ
きりとした音は逆におとなしい音にも聞こえましたが,ヤマハらしさを持った音でもありました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



プロ感覚のスペシャル6が,
新しい音の世界を可能にする。
胸はずむテープ録りを,
もの凄い多機能リバースデッキで。

◎キャプテンジョブの中枢,スペシャル6機能によって
 カセットデッキは”録る”から”操縦する”感覚へ。
◎Special6:その①は,プロから盗んだハイテクニック。
 テープエンド・オートフェイドアウト&イン。
◎Special6:その②は自動的に自分だけのテープが
 出来上がるヤマハ独自のプログラム録音機能です。
◎Special6:その③は好きなところでフェイドイン&
 アウト。プロも喜ぶ簡単操作。ボタンひとつでOK!
◎Special6:その④はテープの未録音部分をスピーディ
 に表示するスタジオ感覚の「未録音部分残量表示」機能
◎Special6:その,その⑥はオートソースチェンジと,
 プロ常識のモニタ・スピーカ・アウト機能です。
◎もっと,完璧なCaptain Job(キャプテン・ジョブ)をこな
 すための,これだけの条件。これだけの多機能。
◎もちろん,リモートコントロールも可能で,色はブラックと
 シルバーのお好きな方をどうぞ・・・では,ラジャー



K-750/S technical report

◎良質の音を可能にする秀れた回路や精密なメカニズム
 があって初めて,750Sの多機能が高い評価をもちます。
◎低歪・低雑音でダイナミックレンジの広いセンダストヘッ
 ドを採用。芯のしっかりしたスケール感豊かな音です。
◎FWD側,RWD側独立の各種調整機構などで,リバー
 ス録再でも安定した高度な特性を実現しています。
◎専用精密モーターによる高度な2+1モータセパレート
 ドライブや大型フライホイールで安定精密なテープ走行。
◎アンプ部には高級アンプと同様,ピュアカレントダムを
 採用。音の汚れがなく,透明で豊かな音質です。
◎ノイズリダクションはドルビーB,Cを搭載しました。




●主な規格●

ワウフラッタ  0.04%以下(JIS WRMS)
±0.08%以下(EIAJ W・ピーク) 
録再周波数特性  20Hz~19kHz±3dB 
SN比  72dB(ドルビーC),64dB()ドルビーB)
総合歪率  1%以下 
ヘッド構成  センダスト録再ヘッド,フェライト消去ヘッド 
メカニズム  2+1モータセパレートドライブ 
モータ  DCサーボモータ(キャプスタン駆動)
フラットトルクDCモータ(リール駆動)
DCモータ(ヘッド反転) 
オートリバース方式  フォトセンサによるクイックリバース 
メカコントロール  マイコン制御フルロジック 
メータ  2色12点ピークLED(-20~+8) 
ノイズリダクション  ドルビーB,C 
SPout端子出力  320mW(8Ω) 
定格消費電力  18W 
寸法  435W×113H×285Dmm 
重量  5.5kg 


YAMAHA K-750a
STEREO CASSETTE DECK ¥79,800


1984年には,K-750は,K-750aにモデルチェンジしました。基本的には同じ構成や作りと
なっていましたが,いくつかの点で改良や変更がありました。

最大の変更点は,ノイズリダクションの強化でした。新たに,圧縮伸張型のdbxが搭載されて
いました。さらに,高域のダイナミックレンジを拡大するドルビーHX-PROも搭載されていまし
た。
見た目で分かる変更点として,表示部がLEDによるものから,FL表示によるものとなってい
ました。特にレベルメーターは,ダイナミックレンジが拡大されるdbxの搭載に対応して,指示
範囲が,-20dB~+18dBと大きく拡大されていました。

以上のように,K-750aは,K-750をさらに改良して強化した内容をもち,コストパフォーマン
スが高められた1台となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



プロ感覚の
スペシャル6機能に加え
ドルビーHX-PROと
dbx NRを新たに搭載
ハードに使える
Newナナハン・リバース

◎HX-PRO&dbxでデジタルソースも怖くない
◎ハードに使ってシビアに録る。スペシャル6機能

●プログラム録音機能
●未録音部分残量表示機能
●スピーカ・アウト機能
●テープエンド・オートフェイドアウト&イン
●オートフェイダー
●オートソースチェンジ
●メモリーストップ機能
●リピート機能
●プログラム再生機能

◎常にベスト録音を約束する高性能と操作性です




●主な規格●

オートリバース方式  フォトセンサによるクイックリバース 
ヘッド構成  センダスト録再ヘッド,フェライト消去ヘッド 
メカニズム  2+1モータセパレートドライブ 
モータ  キャプスタン用:DCサーボモータ
リール用:フラットトルクDCモータ
アシスト用:DCモータ 
メカコントロール  マイコン制御フルロジック 
ワウフラッタ  0.04%(JIS WRMS)
0.08%(EIAJ Wピーク) 
周波数特性  30Hz~20kHz(メタル) 
SN比  90dB(dbx ON) 
メータ  2色12点ピークFL(-20dB~+18dB) 
SP out端子出力  700mW(8Ω) 
定格消費電力  18W 
外形寸法  435W×113.5H×302.5Dmm 
重量  5.7kg 
※本ページに掲載したK-750,K-750aの写真,仕様表等
 は1983年11月,1984年10月のYAMAHAのカタログより
 抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著作権があります。した
 がって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律
 で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
★メニューにもどる         
 
 

★テープデッキPART10にもどる
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system