KA-7010の写真
KENWOOD KA-7010
INTEGRATED AMPLIFIER ¥69,800

1988年に,ケンウッドが発売したプリメインアンプ。ケンウッドのプリメインアンプはKA-1100シリーズ
が,モデルチェンジと改良を行いながらロングセラーを続けていきました。そして,それより下のクラスなが
ら,新たに同社のプリメインアンプの主力モデルとして発売されたのが,このKA-7010でした。

KA-7010は,中級機ながらしっかりした電源部が搭載されていました。プラス側,マイナス側のそれぞれ
に専用の電源トランスを搭載した2トランス構成で,電源トランスの容量は420VAに及ぶものでした。これ
に7500μF×4,total3000μFの大型のケミコンを組み合わせた電源部により,安定した電源供給が
実現されていました。この2トランス構成は,かつてKA-7300で,独立電源論争を生み出したケンウッド
(当時はトリオ)らしさを感じたものでした。

KA-7010の内部


強力な電源部をベースにして,パワー段も強力なものとなっていました。Pc=200Wのハイパワートランジ
スタを使用した余裕あるファイナル段が構成され,4Ω負荷時には220W+220W,2Ω負荷時には270W
+270Wというダイナミックパワーを発揮し,ローインピーダンス負荷時にも対応できる電流供給能力を実現
していました。

イコライザーアンプは,ICL高GmFET差動入力と高性能ICによるハイゲインタイプが搭載され,MMカートリッ
ジに加えMCカートリッジにも対応し,高SN比,低歪率が実現されていました。MMは入力感度2.5mVでSN
比78dB(EIAJ),MCは2.5μVで74dBの特性が確保されていました。

内部レイアウト,信号経路,アースラインなどにも配慮がなされていました。アンプ回路で問題になるグランドラ
インの見直しが行われ,「ピュアシグナル・グランドライン」と称する方式が搭載されていました。これは,グラン
ドラインをスピーカー端子の1点でアースするもので,信号を増幅するメイングランドラインには,純粋な音楽信
号のみが流れ,電源リップルや各種ノイズ成分がすべて専用のグランドラインを流れ,スピーカー端子で合流
することになるため,グランドラインからのノイズの混入が抑えられるという方式でした。
内部レイアウトは,ボリュームをパネルのセンターに配置し,INPUT→SELECTOR→VOLUME→POWER
AMP→SPEAKERという信号経路に沿ったレイアウトが行われ,信号経路の最短化と各部間の相互干渉の
防止が実現していました。同時に,イコライザーアンプ部,プリアンプ部,パワーアンプ部などを各ブロックごと
に整理し,電源トランスは大型放熱板により信号系から分離するというように,全体として合理的なレイアウト
が行われていました。さらに,ソースダイレクトスイッチをONにすると,INPUT→MUTING→VOLUME→
POWER AMPという最短信号経路が実現するようになっていました。
その他,機能的にはミューティング,サブソニックフィルターが搭載され,変わったところでは低域をアップさせ
て低域の音量感を上げるバス・インテンシファイヤーというスイッチが装備されていました。

内部レイアウト

以上のように,KA-7010は,中級機ながらしっかりしたつくりがなされていました。デザイン的には前モデルま
でのケンウッドらしさが薄まり,オーソドックスなイメージに変わりましたが,音の方向性は近いものがあり,やや
タイトで透明感を出した音で,精悍でシンプルなブラックパネルと重なるイメージのものでした。コストパフォーマ
ンスのすぐれた使いやすい1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



2電源トランスの強力電源が,
音楽のすごみを聴かせてくれる。


◎+・−2電源トランス採用の強力電源部
◎余裕のファイナル段
◎純粋な信号増幅を実現した
 ピュアシグナル・グランドライン
◎信号の流れにそった理論どおりの内部レイ
 アウト,ロジカルフローコンストラクション。
◎クリアーな音像を描きだす
 高性能イコライザーアンプ

●振動解析による大型インシュレーター
●INPUT→MUTING→VOLUME→POWER AMP
 の最短信号経路を実現したソースダイレクト



●SPECIFICATIONS●

定格出力
(20Hz〜20kHz両ch動作)
110W+110W(6Ω,THD0.08%)
100W+100W(8Ω,THD0.06%)
ダイナミックパワー
125W+125W(8Ω)
200W+200W(4Ω)
270W+270W(2Ω)
全高調波ひずみ率 20Hz〜20kHz,CD8Ω
 0.06%(100W),0.05%(50W)
1kHz,CD8Ω
 0.001%(100W)
混変調ひずみ率
0.005%(60Hz:7kHz=4:1,定格出力時8Ω)
周波数特性 オーバーオール:5Hz〜100kHz+0dB,−3dB(LINE→SPEAKER)
PHONO RIAA偏差:20Hz〜20kHz±0.3dB
S/N PHONO(MM) 78dB(EIAJ),87dB(入力ショート)
PHONO(MC) 73dB(EIAJ),70dB(入力ショート)
DAT,CD,TUNER,AUX,TAPE PLAY 80dB(EIAJ),110dB(入力ショート)  
トーンコントロール
BASS   100Hz±10dB
TREBLE 10kHz±10dB
サブソニック・フィルター
18Hz,6dB/oct
バス・インテンシファイヤー
9dB(20Hz),3dB(100Hz)
ダンピングファクター
160(50Hz)
入力感度および入力インピーダンス
(定格出力時)
PHONO(MM) 2.5mV/47kΩ
PHONO(MC) 200μV/100Ω
DAT,CD,TUNER,AUX,TAPE PLAY
          150mV/47kΩ
PHONO最大許容入力
(PHONO→TAPE REC)
MM:1kHz 200mV/0.05%THD
MC:1kHz  15mV/0.05%THD
出力レベル/インピーダンス TAPE REC(Pin) 150mV/220Ω
電源電圧/電源周波数 AC100V 50Hz/60Hz
定格消費電力 260W(電気用品取締法に基づく表示)
電源コンセント
電源スイッチ連動  2個 100W
電源スイッチ非連動 1個 440W
最大外形寸法 440W×148H×398Dmm
重量(正味) 15kg


KA-7020の写真
KENWOOD  KA-7020
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥68,000

1990年に,KA-7010はモデルチェンジし,KA-7020となりました。KA-7010をベースに各部に改良が
加えられ,筐体の厚みが増したことにも現れているように,内部もより充実したものとなっていました。

KA-7020の最大の改良点は,内部にバランス伝送を全面的に採用していたことでした。バランス伝送は,
信号経路とアース経路を分離させるため,外来ノイズに強く,入力側で同相分除去比の大きいトランスやア
ンプを置くことで,同相ノイズを軽減させることができるなどのメリットがあるといわれています。通常のアン
プは,アンバランス入力された信号をそのままの状態で伝送し,増幅するのに対し,KA-7020は,入力セ
レクター直後でアンバランス−バランス変換する「インターナル・バランスド・サーキット」が構成されていまし
た。
この回路方式は,+(ホット),−(コールド),アースという信号分離でアンプ内部における相互干渉を排除
し,一般的なアンバランス入力でありながら,増幅系でバランス伝送,増幅の特徴を持たせ,雑音の侵入を
防ぐようになっていました。2つのアンプで一段の増幅を行い,コモンモードノイズを除去し,帰還系の抵抗器
は設置されていないので,グランドラインからのノイズも侵入しないようになっていました。

ボリュームは,バランス伝送経路から動作基準点となるアースを排除した,新設計の6ギャング・バランスド
ボリュームを採用していました。これにより,理想的なグランドフリー回路が構成され,コモンモードノイズに
対する性能が高められていました。また,このボリュームは,片チャンネル2つのメインバランスボリューム
のうしろでアンプのゲインをメインボリュームと連動させ,利得調整するもう一つのボリュームが追加されて
おり,実使用レベルでのS/N比が大きく改善されていました。

電源部は,KA-7010から強化され,220VAの電源トランスを2基搭載した,大容量電源ツイントランスと
15,000μF×2の大型ケミコンという構成となっていました。
この電源部ををベースに,パワーアンプのファイナル段も強化されていました。Pc=120Wのハイパワー
トランジスターを片チャンネルに4個使用したパラレルプッシュプルのファイナル段とされ,大出力化が図ら
れ,電流供給能力が高められていました。

KA-7020のファイナル段

KA-7020は,D/Aコンバーター内蔵アンプではありませんでしたが,オプティカルリンクのデジタル入出力
端子が設けられていました。これは,通常のアナログデッキと同じ感覚で,DAT等のデジタル録音機を接続
し,デジタルtoデジタルのシンプルで高音質のダビングができるという機能で,SCMS(シリアル・コピー・マネ
ジメント・システム)対応型となっていました。

以上のように,KA-7020は,KA-7010をベースに,強化・改良が施された内容を持ち,コストパフォーマン
スにすぐれたアンプとなっていました。中級機ながら,しっかりした内部構成から,タイトでクリアかつ繊細な音
を実現していました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



インターナル・バランスド・サーキット採用。
音楽の純度を高めた,ハイグレード・モデル。
音楽のアンバランス伝送から,アンバランス−バランス変換伝送へ。
KA-7020はケンウッド独自のインターナル・バランスド・サーキットで,
理想的な信号増幅を実現。
原音に限りなく近づいた,ピュアな音楽の再生に成功しました。

◎音楽信号伝送に理想的なバランス伝送
◎アンバランス−バランス変換伝送を実現する
 インターナル・バランスド・サーキット
◎S/Nを改善し,音質を向上させる
 6ギャング・バランスド・ボリューム
◎デジタルソースからダイレクトにデジタルダビングできる
 オプティカル・インターフェイス・デジタル・レックアウト
◎+・−2電源トランス採用の強力電源部
◎スピーカーの能力をフルに引き出す
 パラレルプッシュプル構成のファイナル段
◎耐久力にすぐれ,接触抵抗を低減する金メッキプラグ

●振動解析による大型インシュレーター
●筐体強度を飛躍的に高める天板下に配置された3本の補強ブリッジ
●バナナ端子の装着できる大型スピーカーターミナル
●最短信号経路を実現したソースダイレクト回路
●バランス伝送部の周辺で信号の純度を守り,
 外乱要因を排除するピュアシグナル・グランドライン回路
●信号経路にそった内部レイアウトのロジカルフローコンストラクション



●SPECIFICATIONS●

定格出力
(20Hz〜20kHz両ch動作)
110W+110W(6Ω,THD0.008%)
100W+100W(8Ω,THD0.008%)
ダイナミックパワー
140W+140W(8Ω)
240W+240W(4Ω)
380W+380W(2Ω)
全高調波ひずみ率 20Hz〜20kHz,CD8Ω
 0.008%(100W),0.005%(50W)
1kHz,CD8Ω
 0.001%(100W)
周波数特性 オーバーオール:5Hz〜100kHz+0dB,−3dB(LINE→SPEAKER)
S/N PHONO(MM) 86dB(EIAJ),87dB(入力ショート)
PHONO(MC) 75dB(EIAJ),69dB(入力ショート)
DAT,CD,TUNER,AUX,TAPE PLAY 96dB(EIAJ),102dB(入力ショート)  
入力感度および入力インピーダンス
(定格出力時)
PHONO(MM) 2.5mV/100kΩ
PHONO(MC) 200μV/100Ω
DAT,CD,TUNER,AUX,TAPE PLAY
          200mV/47kΩ
PHONO最大許容入力
(PHONO→TAPE REC)
MM:1kHz 150mV/0.01%THD
MC:1kHz  12mV/0.01%THD
出力レベル/インピーダンス TAPE REC(Pin) 200mV/220Ω
電源電圧/電源周波数 AC100V 50Hz/60Hz
定格消費電力 250W(電気用品取締法に基づく表示)
電源コンセント
電源スイッチ連動  2個 100W
電源スイッチ非連動 1個 400W
最大外形寸法 440W×163H×398Dmm
重量(正味) 15.5kg

※本ページに掲載したKA-7010,KA-7020の写真,仕様表等は,
 1990年6月のKENWOODのカタログより抜粋したもので,ケンウ
 ッド株式会社に著作権があります。したがってこれらの 写真等を無
 断で転載引用等することは法律で禁じられていますので ご注意くださ
 い。

 

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