KA-7050Rの写真
KENWOOD KA-7050R
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥88,000

1993年に,ケンウッドが発売したプリメインアンプ。ケンウッドは,トリオ時代よりプリメインアンプに多くの機
種を発売し,チューナーとともに,同社のブランドイメージを確立してきました。1980年代には,KA-1100シ
リーズで改良を続 け,ロングセラーモデルとしていた同社も,1988年以降,単品コンポーネントとしてのプリメイ
ンアンプでは,7万円以下の中級クラスやエントリークラスのプリメインアンプは発売していたものの,それより
上の上級機はしばらく製品が発売されていませんでした。そうした中,1992年に,高級プリメインアンプL-A1
を発売し,その翌年,L-A1の技術をも導入しつつ,6年ぶりに発売された9万円クラスのプリメインアンプが,
このKA-7050Rでした。

KA-7050Rには,技術的にいくつかの特徴がありましたが,特に,低負荷駆動と大出力増幅のために重要と
なるファイナル段(電力増幅段)の見直し,強化が行われていました。
出力段は,MOS FETのパラレルプッシュプルが採用されていました。ケンウッドは,トリオ時代よりバイポーラ
トランジスタ(通常の出力トランジスタ)一筋に来たブランドで,このKA-7050Rが,ケンウッド初のMOS FET
出力段を持ったアンプであったはずです。MOS FETは,スイッチング時に発生する歪みが少なく,入力抵抗が
高いため,それぞれのステージの電気的結合を切ることができる出力素子として,また,高周波特性や小信号
増幅時のリニアリティの面でも理想的な特性をもつすぐれた素子で,音の面で独自の魅力があるといわれてい
ます。バイポーラトランジスタにも,音の面で,MOS FETとはまた違った魅力があり,ケンウッドはそれを追求
してきたブランドでしたが,このKA-7050RでMOS FET採用にいたり,その性能を生かせるようにケンウッド
らしい回路的な工夫がなされていました。

ツインドライブ・マルチプル・ファイナルステージ

MOS FET出力段をドライブするドライバーは,通常のシングルドライブではなく,パラレルプッシュプル構成の
出力段に対して各々専用にドライバーを2個並列配置した「ツインドライブ・マルチプル・ファイナルステージ」が
採用され,ドライブ能力を大きく高めていました。これは,上級機L-A1で採用された「クアドライブ・マルチプル
・ファイナルステージ」の簡略版といえるものでした。

外来ノイズ,ラインノイズ等の混入を防ぐために,「インターナルバランスドサーキット」採用されていました。こ
れは,入力セレクター直後でアンバランス信号をバランス変換して信号経路とアース経路を分離したもので,
アンバランス入力でありながらバランス伝送の特長を持つことで,外来ノイズの侵入を阻止できるようになって
いました。また,2つのアンプで1段の増幅を行うことで,コモンモードノイズが除去されるとともに,帰還系の抵
抗器は接地されていないため,グランドラインからのノイズの侵入も防ぐことができるようになっていました。
さらに,電源のリップル(脈動)や各種のノイズ成分は専用のグランドラインでスピーカー端子 まで導かれ,そこ
で初めてすべてのグランドラインが合流する「ピュアシグナル・グランドライン」が採用され,メイングランドライン
には純粋な信号だけが流れることで,グランドラインからの影響を受けないピュアな増幅が可能となっていまし
た。
インターナルバランスドサーキット

ボリュームには,「インターナルバランスドサーキット」等によるアース経路の分離によるグランドフリーを生かす
ために,理想的なグランドフリー構造に近い「6ギャングバランスドボリューム」が搭載され,コモンモードノイズ
の低減が図られていました。このボリュームは,片チャンネル2つのメインボリュームの後ろでアンプのゲイン
コントロール用のボリュームが設置されており,2段構成による利得調整を行う構成となっていました。また,音
圧等の影響を考慮して,鍛造切削による肉厚アルミボリュームノブが採用され,剛性の高い構造となっていまし
た。
入力セレクターは,6個の不活性ガス封入型リレーを使用したもので,入力セレクターを信号入力の間近に配
置して,信号間の隣接妨害を低減するレイアウトがとられていました。また,筐体全体の強度を高めるために,
天板の下には,補強ブリッジが設けられた構造となっていました。
リアパネルのRCAピンコネクターには腐食に強く,接触抵抗を低減する金メッキ処理が行われ,スピーカー端
子は,バナナプラグ対応の大型のものが2系統搭載されていました。

電源部には,新開発の「バレルコアボビントランス」が搭載されていました。一般的に電源トランスにおいて,巻
き線に電流が流れると磁界の相互作用により電流の二乗に比例する機械力が発生し,その機械力による変形
がトランスの振動(うなり)の原因となっています。「バレルコアボビントランス」は,この機械力の発生を前提とし
て設計されたもので,トランス巻き線の芯材形状にバレル形状(角のないほぼ円形)を採用することで,ボビン
とコイルのフィット性を高め,振動の低減を図ったものでした。さらに,フィット性の向上は,巻き線の密度が高め
られることになり,よりタイトでスムーズなワインディング(巻き)が可能となって,トランス自体のスペースファクター
の向上が実現していました。また,このスペースファクターの向上は,従来型と同じ大きさで太いマグネットワイ
ヤーが巻けるという特長となり,そのため直流抵抗が減少し,電圧変動率が小さくなって安定した電源供給に
つながるというメリットをもたらしていました。
そして,電源トランスは,全体がシールドされていました。このシールドプレートによる磁束帰還によってリーケー
ジ・フラックスが減少し,トランス自体の磁束損失が低減され,出力電流の高周波成分を抑圧するため,小信号
増幅におけるラジエーション(=不要輻射)妨害を最小限に抑え込んでいました。

KA-7050Rには,システムリモコンが付属し,アンプのボリューム可変,インプットセレクター,ソースダイレクト
のON/OFFなど多くの操作が可能なほか,ケンウッド製のCDプレーヤー,カセットデッキ,チューナーのうち本
体に[XS]マークがついた対応機種の操作もできるようになっていました。

以上のように,KA-7050Rは,約6年ぶりの9万円クラスの同社の中級クラスのプリメインアンプとして,力の
入った設計と作りがなされていました。ケンウッドらしい,すっきりとした癖の少ない音は,クリアでありながら耳
あたりのよいものとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



プリメインの新たな基準が生まれた。
音楽特性をつきつめたプリメイン。


◎低インピーダンススピーカーも楽にドライブ
 ツインドライブ・マルチプル・ファイナルステージ
◎小信号増幅のリニアリティに優れた
 MOS-FETファイナルステージ
◎信号経路とアース経路を完全に独立させた
 インターナルバランスドサーキット
◎肉厚アルミメインボリュームノブを持つ
 6ギャングバランスドボリューム
◎新開発大容量低漏洩磁束
 バレルコアボビントランス

●腐食に強く接触抵抗を低減する金メッキRCAピンコネクター
●バナナ端子対応2系統大型スピーカー端子
●フルファンクションシステムリモートコントロール対応
●システムリモコン付属
●筐体強度を高める天板下の補強ブリッジ





●主な仕様●

定格出力
(20Hz〜20kHz両ch動作)
110W+110W(6Ω,THD0.008%)
100W+100W(8Ω,THD0.008%)
ダイナミックパワー
150W+150W(8Ω)
260W+260W(4Ω)
360W+360W(2Ω)
全高調波歪み率(20Hz〜20kHz) 0.008%(100W,8Ω)
周波数特性 オーバーオール:5Hz〜100kHz+0dB,−3dB(LINE CD)
S/N PHONO(MM) 86dB(EIAJ),87dB(入力ショート)
PHONO(MC) 78dB(EIAJ),69dB(入力ショート)
DAT,CD,TUNER,AUX,TAPE PLAY 96dB(EAIJ),107dB(入力ショート)  
入力感度および入力インピーダンス
(定格出力時)
PHONO(MM) 2.5mV/47kΩ
PHONO(MC) 0.2mV/100Ω
LINE        200mV/47kΩ
BALANCED  200mV/30kΩ
PHONO最大許容入力
(PHONO→TAPE REC)
MM:1kHz 120mV/0.08%THD
MC:1kHz  10mV/0.08%THD
出力レベル/インピーダンス TAPE REC(Pin) 200mV/0.22kΩ
電源電圧/電源周波数 AC100V 50Hz/60Hz
定格消費電力 300W(電気用品取締法に基づく表示)
最大外形寸法 440W×163H×403Dmm
重量(正味) 15.4kg


※本ページに掲載したKA-7050Rの写真,仕様表等 は,1993年3月
 のKEWOODのカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著
 作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等する
 ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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