KA-8700の写真
TRIO  KA-8700
INTEGRATED AMPLIFIER  ¥120,000

1978年に,トリオ(ケンウッド)が発売したプリメインアンプ。同年に発売された最上級機KA-9900の弟機と
して発売されたモデルで,基本的な特徴や技術を受け継ぎつつ,コストパフォーマンスにすぐれた1台に仕上
げられていました。

KA-8700は,TUNER(AUX・TAPE)入力からスピーカー端子まで,「ストレートDCアンプ」としていました。
TUNER(AUX・TAPE)入力からスピーカー端子まで,NFループ内を含むすべての信号系に低域カット用の
コンデンサーをもたない構成とし,低域特性の改善,スピーカーシステムからのリアクションの十分な制御を
実現していました。さらに,イコライザーアンプもDC構成とされ,ディスク再生時にもDC構成イコライザーアン
プとDCハイゲインパワーアンプだけというシンプルでストレートなDCアンプとなっていました。

上述のようにDC構成のイコライザーアンプは,初段に新開発のデュアルFETを使用し,また,回路全体のイ
ンピーダンスを下げ,90dB(2.5mV入力,IHF-A)という高SN比を確保していました。
MCカートリッジへの対応には,MCヘッドアンプが搭載されていました。全段プッシュプルのDC構成MCヘッ
ドアンプで,初段に新開発の超ローノイズトランジスターが使用され,70dB(100μV入力),78dB(250μV
入力)という高SN比が実現されていました。

パワーアンプは,110W+110W(8Ω)のハイゲイン・パワーアンプが搭載されていました。回路構成は,カ
スコード接続FET差動アンプを初段に置いた差動3段全段直結ICL・OCL・DCパワーアンプとなっていました。
ファイナル段には,高域特性にすぐれ,安全領域の広いパワートランジスターをパラレルプッシュプルで使用
していました。従来のパワーアンプが29dB(約28倍)程度のゲインをもっているのに対し,(KA-8700のパ
ワーアンプは,43dB(約142倍)というハイゲインアンプでした。また,初段には,温度変化に強い1チップの
デュアルFETが採用され,基本的にドリフトの発生が抑えられていました。同時に,周囲の温度変化に関係な
く初段FETの共通ソースに流れる電流を一定にするようにし,FETに流れる電流は温度変化の影響をほとん
ど受けないようになっていました。ドリフト量は,最大でも100mV(P−P)のすぐれた安定性を確保していまし
た。

KA-8700の内部

電源部は,大きな特徴である左右独立2電源方式を採用していました。大容量電解コンデンサーを左右独立し
て2本ずつ計4本搭載し,電源トランスも左右独立で搭載する2トランス方式をとっていました。トリオは,1975
年に左右独立2電源方式を初めて採用したKA-7300を発売し,「ダ イナミッククロストーク理論」を展開して,
独立電源論争を巻き起こしました。この論争の中でビクターは,プリアンプとパワーアンプの電源をトランスから
完全に独立させる前後独立2電源方式のアンプJA-S41を発表 して争いました。また,逆にあえて独立させず
に大型トランス1個のみの大容量一電源方式のメリットを主張するメーカーもありました。左右独立2電源方式
は,クロストークを減らすメリットがある反面,片チャンネルに大入力があった場合には,一電源方式の方が電
源容量が大きいことになるなど,結局この論争の決着はつきませんでした。現在では,一長一短,ケースバイ
ケースということになっているようです。

内部のコンストラクションも,小信号を扱うA級増幅段へのB級増幅段からの影響・干渉を抑えるため,A級増幅
段をフロントパネルの裏面に配置し,イコライザーアンプやMCヘッドアンプはリアパネルの入力端子近くに配置
してダイレクト接続とするなど,中央部にある電源部やB級増幅部からシールドしていました。また,イコライザー
からパワーアンプの入口までのアースポイントに銅板のブスアースを採用し,コの字型として小信号経路の線材
をシールドするようにしていました。

機能的には,非常にオーソドックスなつくりで,プリメインアンプとして必要十分な機能性をもつオーソドックスな
トリオらしいかっちりとしたフロントパネルをもっていました。トーンコントロールは,BASS,TREBLE独立式で
回路全体で利得をもたず位相も反転しない独自のNF-CR型トーンコントロールが搭載されていました。変化特
性はリニアに設定されていました。フロントパネル上には,プリメインアンプながらL・R独立のレベルメーターが
搭載されていました。このレベルメーターは,10kHz1波という瞬間信号にも応答できる高性能なピークメーター
用ICを使用し,50dBの範囲をもつ見やすいものでした。

以上のように,KA-8700は,中級機(プリメインとしては上級機)ながら,オーソドックスに技術と物量を積み重
ねた,使いやすいアンプでした。ハイパワーを実現した,かっちりとしたクリアな音はトリオらしさを感じさせるもの
でした。


>以下に,当時の カタログの一部をご紹介します。



5つの測定条件をクリアー,
ハイパワー110W+110W。みごと!

◎ ハイスピードを総合特性で表示します。
◎TUNER(AUX,TAPE)入力からSP端子
 までストレートDCアンプ
◎DC構成MCカートリッジ用ヘッドアンプ>
◎DC構成イコライザーアンプ
◎トーンコントロールアンプ
◎110W+110Wハイゲイン・パワーアンプ
◎相互干渉を防止。すぐれたコンストラクション
◎ダイナミックレンジの広いピークパワーメーター




●KA -8700の定格●


●総合特性●

定格出力 
  PHONO→SP端子 20Hz〜20kHz両ch動作8Ω
               1kHz両ch動作8Ω
               1kHz両ch動作4Ω

110W+110W
115W+115W
150W+150W
全高調波ひずみ率 
  PHONO→SP端子(Vol−20dB) 
    定格出力時  20Hz〜20kHz(8Ω)
  TUNER・AUX・TAPE→SP端子
    定格出力時  20Hz〜20kHz(8Ω) 
    定格出力時  1kHz(8Ω) 
    1/2定格出力時 20Hz〜20kHz(8Ω)
0.015% 

0.015% 
0.008%
0.008%

混変調ひずみ率(60Hz:7kHz=4:1) 
  TUNER・AUX・TAPE→SP端子(定格出力時,8Ω)

0.003%
周波数特性(TUNER・AUX・TAPE→SP端子)ストレートDC ON
                             ストレートDC OFF
DC〜450kHz −3dB
18Hz〜450kHz −3dB
出力帯域幅
  TUNER・AUX・TAPE→SP端子 IHF ひずみ率0.03%時 8Ω

5Hz〜70kHz
ダンピングファクター(TUNER・AUX・TAPE→SP端子 DC〜20kHz 8Ω 100
入力感度およびインピーダンス 
  PHONO(MM)→SP端子
  PHONO(MC)→SP端子 
  TUNER・AUX・TAPE→SP端子

2.5mV 50kΩ 
0.1mV 100Ω 
200mV 50kΩ
SN比(IHF−A) 
  PHONO(MM)→SP端子 
  PHONO(MC)→SP端子 
  TUNER・AUX・TAPE→SP端子  

90dB(2.5mV入力)
70dB(0.1mV入力)
105dB
トーンコントロール
  BASS TUNER・AUX・TAPE→SP端子
  TREBLE TUNER・AUX・TAPE→SP端子

100Hz ±7.5dB
10kHz ±7.5dB
ラウドネスコントロール TUNER・AUX・TAPE→SP端子 +9dB
ライズタイム TUNER・AUX・TAPE→SP端子 0.8μs
スルーレート TUNER・AUX・TAPE→SP端子 ±150V/μs




●イコライザーアンプ部(PHONO→TAPE  REC端子)

PHONO最大許容入力 
  PHONO(MM)→REC OUT 1kHz 
  PHONO(MC)→REC OUT 1kHz 

230mV(ひずみ率0.015%時) 
9mV  (ひずみ率0.015%時)
PHONO RIAA偏差  20Hz〜20kHz   ±0.2dB





●出力レベルおよび出力インピーダンス●

TAPE REC PIN 200mV/330Ω




●電源部その他●

電源電圧・電源周波数 100V 50Hz/60Hz
定格消費電力 280W
電源コンセント  電源スイッチ連動
            電源スイッチ非連動
2個  
1個 
最大外形寸法(幅×高さ×奥行)/重量    440×153×407(mm)/17.5kg 
※ 本ページに掲載したKA-8700の写真,仕様表等は1979年1月のTRIO(KENWOOD)
のカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著作権があ ります。したがって,これ
らの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じら れていますのでご注意ください。

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