TRIO KP-5022
STEREO PLAYER SYSTEM ¥49,800
1973年に,トリオ(現JVCケンウッド)が発売したプレーヤーシステム。トリオは,チューナー,アンプなどの
エレクトロニクス分野のオーディオ機器に強く,プレーヤー,テープデッキなどのメカニズム系の機器では,ブ
ランド的に決して強くはありませんでした。しかし,ベルトドライブ,アイドラードライブの時代から,アナログプ
レーヤーを作っており,ベルトドライブとアイドラードライブの双方を搭載したベルト・アイドラー・ダブルドライ
ブ方式のプレーヤーも開発するなど,意欲作を出していました。そんなトリオが,1970年代のダイレクトドラ
イブ方式が主流になっていく時代の中で発売した,当時のフルオートプレーヤーの主力モデルがKP-5022
でした。



ターンテーブルの駆動は,当時まだ少なかったダイレクトドライブ方式が採用され,モーターには,8極24ス
ロットの超低速電子整流子DCモーターが搭載されていました。サーボ回路により,電源電圧の変動に影響
を受けずに正確な回転数を維持することで,ワウ・フラッター0.06%以下,SN比55dBという安定した回転
を実現していました。
ターンテーブルは,直径30.4cm,重量1.5kgのアルミダイキャスト製で,構造的に質量分布を考慮して
慣性質量を200kg・cm2と大きくとっていました。外周部にはストロボが刻まれ,回転の正確さを確認でき
るようになっており,331/3,45rpmそれぞれに独立した微調整機構があり,±3%の範囲で微調整が可
能となっていました。そして,起動力が大きい強力なトルクのDCモーターにより,1/2回転で定速回転に
達するようになっていました。



トーンアームは,高感度なスタティックバランス型で,アームにテーパーを付けて広帯域にわたって共振を防
止した設計となっていました。ピボット部には特殊ダンパー材を採用して,ハウリング特性やSN比を改善し
ていました。変形J字型ともいえる形状は,アーム全体でラテラルバランス(左右方向のバランス)をとるよう
に設計されており,バランサーをアームに取り付ける必要がなく,トーンアームの実効質量を少なくすること
ができていました。針圧直読式のインサイドフォースキャンセラーやスタンドに固定した状態でオーバーハン
グの調整ができる針圧ゲージ兼用パイロットランプなども装備されていました。
ヘッドシェルを固定するプラグイン・コネクターには,通常の回転式ロックナット方式に比べて,締め付けると
きに,ピボット部にねじる力が加わらず,アームの精密さを狂わせる要因を避けることができるとともに,簡
単にヘッドシェル交換ができるスライドロック式コネクターが搭載されていました。



キャビネットは,低発泡樹脂成形によるもので,木製に比べて共振点のバラツキが少なく,共振を抑えた
設計となっており,モーター・ゴロやハウリングの少ないSN比のよいレコード再生を実現していました。
さらに,ハウリングが出やすい状況の時には,パネルボードは,キャビネットからフローティングもできるよ
うになっていました。

KP-5022は,フルオートプレーヤーとして,オートリードイン,オートカット,オートスタート,オートリピート
などの機能が搭載され,レコードサイズセレクターをセットして,ボタン一つで,アームに触らずに演奏開始
演奏ストップ,繰り返しなどができるようになっていました。針先の離着時のショックノイズは,ミューティング
スイッチでカットできるようになっており,マニュアル操作へも自由に切り換えることができるようになってい
ました。

以上のように,KP-5022は,フルオートプレーヤーとして,機能と性能のバランスとれた設計がなされ,コ
スパフォーマンスにすぐれたプレーヤーとなっていました。デザイン等に大きな特徴がなく,プレーヤーにお
いてブランド的に強くなかったためか,大きな話題にはなりませんでしたが,使いやすい1台でした。



KP-5022には,弟機のKP-3022も発売されていました。基本的な機能や機構,筐体等はほぼ同一で,
ターンテーブル部がベルトドライブ方式になっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



D.D.モーター・フルオート機構・共振防止設計
・・・プレーヤー機能をフル装備。

D.D.モーターによる回転メカニズム
◎超低速電子整流子モーター
◎純電子式スピード切り換え
◎慣性能率200kg・cm2


完ぺきを期した共振防止設計
◎新設計楕円テーパードアーム
◎低発泡キャビネット
◎パネルフローティング機構


抜群のトレーシング能力
◎トータルラテラルバランス方式
◎アンチスケーティング・メカニズム
◎針圧ゲージ兼用パイロットランプ


簡単な操作でレコード再生を楽しめます
◎フルオート機構
◎遅延回路によるワンタッチ操作
◎ポーズエレベーション
◎スライドロック式プラグイン・コネクター


万全なCD-4再生対策
◎超低容量コード
◎スタイラス・ホリゾンタルアジャスター




●定格●

   KP-5022  KP-3022
駆動方式  ダイレクトドライブ  ベルトドライブ
駆動機構 ターンテーブル駆動用およびオート機構駆動用
各独立2モーター方式 
ターンテーブル駆動用およびオート機構駆動用
2モーター方式  
駆動モーター  8極24スロット超低速電子整流子モーター
(ターンテーブル駆動用)
24極シンクロナス型ギヤードモーター
(オート機構作動用)
4極シンクロナス型モーター
(ターンテーブル駆動用)
24極シンクロナス型ギヤードモーター
(オート機構作動用) 
ターンテーブル  30.4cmアルミダイキャスト製 1.5kg 
外周ストロボ方式 
慣性能率200kg・cm2
30.4cmアルミダイキャスト製 1.1kg 
回転数  2スピード 331/3,45rpm  2スピード 331/3,45rpm 
回転数切換方式  純電子コントロール式   
回転数微調整方式  331/3,45rpm各独立調整方式
調整範囲±3% 
 
ワウ・フラッター  0.06%(WRMS)以下  0.08%(WRMS)以下  
SN比  55dB以上  48dB以上
起動  1/2回転で定速度回転   
トーンアーム  スタティックバランス型無共振テーパードパイプアーム
スライドロック方式EIA規格プラグインコネクター
アンチスケーティング機構 
針圧直読式バランスウェイト
トータルラテラルバランス
スタイラス・ホリゾンタルアジャスター
スタティックバランス型無共振テーパードパイプアーム
スライドロック方式EIA規格プラグインコネクター
アンチスケーティング機構 
針圧直読式バランスウェイト
トータルラテラルバランス
スタイラス・ホリゾンタルアジャスター 
トラッキングエラー  ±1.5°以内  ±1.5°以内 
カートリッジ ムービングマグネット型0.6milダイヤ針つき
 交換針:N-39
 適正針圧:2g
 最適負荷インピーダンス:50kΩ
 出力電圧:5mV(1,000Hz 50mm/s)
 出力バランス:2.5dB(1,000Hz 50mm/s)
 周波数特性:20Hz~20kHz
 チャンネルセパレーション:25dB以上(1,000Hz) 
ムービングマグネット型0.6milダイヤ針つき
 交換針:N-39
 適正針圧:2g
 最適負荷インピーダンス:50kΩ
 出力電圧:5mV(1,000Hz 50mm/s)
 出力バランス:2.5dB(1,000Hz 50mm/s)
 周波数特性:20Hz~20kHz
 チャンネルセパレーション:25dB以上(1,000Hz) 
ダストカバー  アクリル製着脱自在フリーストップタイプ  アクリル製着脱自在フリーストップタイプ 
電源電圧  100V 50/60Hz  100V 50/60Hz 
定格消費電力  3W  7W 
寸法  448W×173H×374Dmm  448W×173H×374Dmm 
重量  9.0kg  8.0kg
付属機構・装置  全電動式フルオート機構
マニュアル操作機構
電子式遅延回路
ポーズエレベーション
針先ゲージ兼用パイロットランプ
パネルフローティング
シェルスタンド
電源コード巻枠
全自動式フルオート機構
マニュアル操作機構
電子式遅延回路
ポーズエレベーション
針先ゲージ兼用パイロットランプ
パネルフローティング
シェルスタンド
電源コード巻枠 
※本ページに掲載したKP-5022,KP-3022の写真・仕様表等は1973年
8月のTRIO
のカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に著作権
があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法
律で禁じら
れていますので,ご注意ください。
 
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