KP-700の写真
TRIO KP-700
QUARTZ PLL AUTO-UP TURNTABLE ¥64,000

1980年に,トリオ(現ケンウッド)が発売したプレーヤーシステム。トリオは,1976年発売のKP-7300
以来,重量級ターンテーブルによる「大慣性質量ターンテーブル」など,正攻法のしっかりした作りのアナ
ログプレーヤーを発売していました。そうした中で,コストパフォーマンスの高い中級機として作り上げられ
たのがKP-700でした。

KP-700のターンテーブルは,直径33cm,重量1.9kgという同社伝統の重量級ターンテーブルが搭載
されていました。450kg・cmの慣性質量により,トリオが当時称していた「慣性ロック」をし,過渡的な細
かな負荷変動を抑えていました。ターンテーブルのセンターシャフトには,直径10mmの硬質ステンレスの
ものが使用され,重量級ターンテーブルの安定した駆動を実現していました。

KP-700のモーター

重量級ターンテーブルを駆動するモーターは,新開発のブラシレス,コアレスの8極6コイル構造の3相ス
イッチング・プレーンドライブモーターが搭載されていました。このモーターは,設置されている全コイル,全
ローターが常時使用されているため,トルクリップルがきわめて少なく,重量級ターンテーブルを駆動する
高効率を実現していました。モーター自体の高効率化により,帰還ループ内のアンプのゲインが少なくてす
み,ドリフトなどの影響も抑えられていました。
さらに,クォーツ発振子の基準信号,速度検出信号を比較して位相差を制御するクォーツPLL方式により
静的な定常回転の回転ムラをクォーツロックで追放していました。回転数の検出にはマグネットとモーター
のローターの磁束密度変化によって発電するFGコイルが用いられ,速度制御系にはIC内部にデジタルメ
モリーをもつ新開発ICが使用されていました。コイルや抵抗を全く用いない方式であるため,温度特性や安
定性にすぐれた性能が確保されていました。
トリオは,当時,上記の過渡的な負荷変動を抑える「慣性ロック」と周波数成分の低い静的負荷変動を抑え
る「クォーツロック」の2つをあわせて,「ダブルロック」と称していました。

KP-700の内部

キャビネットは,共振周波数の異なる2つの材質・パーティクルボードと6mm厚の鉄板を圧着した2層の高剛
性キャビネットが採用されていました。そして,鉄材の形状をキャビネット全体のバランスを考慮して決定する
ことで,キャビネットの重心をモーターの回転軸上に一致させていました。こうした構造により,DCモーターの
機械的なトルク変化(コギング)がキャビネットに与える不規則なねじれを抑え,演奏状態でのワウ・フラッター
の安定化を図っていました。

トーンアームは,スタティックバランスのS字型アームで,オーソドックスなユニバーサル型が搭載されていまし
た。アームパイプとメインウェイトがブチルゴムでカップリングされた「弾性カップリング質量分離型トーンアー
ム」で,アームレゾナンスと1次分割共振という同時に制御することが難しい2つの外乱の影響を抑えていまし
た。トーンアームの内線材には,平行コードが採用され,同位相で外部誘導を受けるようにしており,ノイズレ
ベルが低く抑えられるとともに,各線材の位置関係が安定し,クロストークの安定化も実現していました。
また,このトーンアームには,ディスク最内周で自動的にアームが上がる,オートアップ機構が採用されていま
した。この機構には,機械的な接触や磁石などをを用いず,トーンアーム軸に取り付けられたミラーに向かって
LEDから光を投射し,戻ってきた光をフォトリフレクターで受け,角速度を検出する無接触方式が採用され,アー
ムの感度等への影響もなく,正確で静かな動作が可能となっていました。

以上のように,KP-700は,きちんと基本を抑えて作り上げられ,地道にプレーヤー関係の技術を積み重ねて
きたトリオの技術が現れた実力派のプレーヤーシステムで,中級機として使いやすい1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



レコードの音溝はオフ・ロード。
トリオは慣性ロックで挑戦します。

回転軸と重心を一致させた。
実動時のワウ・フラッターが
改善されてきた。

◎重心をモーターの回転軸と一致させた
 複合防振キャビネット
◎新開発,ブラシレス,コアレスの
 3相スイッチング・プレーンドライブモーター
◎慣性ロックとクォーツロック
◎クォーツPLL
◎弾性カップリング質量分離型トーンアーム
◎無接点フォトリフレクター方式の
 オートアップ機構




●KP-700定格●



■フォノモーター部■

駆動方式 ダイレクトドライブ
モーター型式 クォーツPLL,コアレス&スロットレス
3相スイッチング・プレーンドライブ,DCサーボ
起動トルク 1.5kg・cm以上
ターンテーブル 33cm・1.9kg
慣性モーメント 450kg・cm2(ゴムシート含む)
回転数 331/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS)以下
SN比 62dB(JIS),75dB(DIN-B)
定常負荷特性
0%(針圧120gまで)
起動特性 2.2秒(331/3回転)
回転数偏差 ±0.003%以内
時間ドリフト 0.0005%/h以下
温度ドリフト 0.00005%/℃以下
電源電圧特性 0%(±10V)


■トーンアーム部■

型式 スタティックバランスS字型パイプアーム質量分離方式
アーム実効長 245mm
オーバーハング 15mm
トラッキングエラー +1.8°〜−1.0°
針圧可変範囲 0〜3g(0.1gステップ)
適用カートリッジ重量 2〜12g(付属シェル12g使用時)



■電源部その他■

電源 AC100V,50/60Hz
消費電力
(電気用品取締法に基づく表示)
14W
寸法 490W×173H×409Dmm
重量 13.8kg
付属機構 アーム高さ調整機構,オートリフトアップ機構
スタティック型アンチスケーティング機構

※本ページに掲載したKP-700の写真・仕様表等は1980年12月の
 TRIOのカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
 ことは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
★メニューにもどる
  
   
★アナログプレーヤーPART5のページにもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。

メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system