KP-7300の写真
TRIO KP-7300
STEREO PLAYER SYSTEM ¥46,000

1976年にトリオ(現ケンウッド)が発売したプレーヤーシステム。その後のトリオのプレーヤーシステムに
通じる,重量級ターンテーブルによる「大慣性質量ターンテーブル」の走りになる機種で,この価格からは
考えられないほど正攻法に物量が投入された力作でした。

KP-7300の最大の特徴は,上記のように重量級のターンテーブルの搭載にありました。直径330mm,
重量2.6kg,慣性質量440kg・cm2に及ぶターンテーブルを搭載することで,過渡的な回転の負荷変動を
低減しようという設計でした。
モーターは,トルクリップルの少ない20極30スロットのDCサーボモーターを搭載し,重量級ターンテーブ
ルとあわせて,サーボ回路だけではコントロールできない回転の変動を抑えて滑らかな回転を実現していま
した。
また,ターンテーブル自体の分割振動を抑えるため,肉厚6mmの重量級ゴムシートを採用していました。

重量級ターンテーブルが回転することでその慣性エネルギーが当然キャビネット(プレーヤー本体)に振動
を与えることになるため,キャビネットもしっかりした作りとなっていました。キャビネットは,硬質チップボード
製で,背面に4kgのMC材(石綿を加え高圧成型したコンクリートで,吸水率,含水率が非常に低く,剛性が
高い素材)と1.6kgの鋼板を設け,プレーヤー全体の重量は16kgに達する重量設計となっていました。

KP-7300の断面

プレーヤー全体を支えるインシュレーターには,デュアルサスペンション方式アブソーバーが搭載されていまし
た。このインシュレーターは,縦方向の剛性は低くし,横方向の剛性を高くした構造で,縦方向の振動をカット
するとともに,慣性質量の大きなターンテーブルを駆動する際の横ぶれを抑えるようになっていました。
さらに,ダストカバーも振動の影響を低減するために,最も面積が広く分割振動の影響が現れやすい上面を厚
くし,各コーナーの内側にリブを設けた構造で,振動減衰率の高いアクリル材を使用していました。

トーンアームTA-7は,振動の影響を受けやすいアームパイプに直径10mm,肉厚1mmのアルミパイプを使用
し,振動減衰率の高い真鍮で支持する構造で,分割振動を低減していました。
ヘッドシェルもアルミダイキャスト製で,シェルフィンガーもヘッドシェルと一体化された構造で,さらに下部にリブ
を設けて剛性を上げ,シェルの鳴きを抑えていました。

KP-7300のアーム

以上のように,KP-7300はきわめて正攻法の設計でしっかりと物量を投入した価格を超えた力作でした。これ
以降,KP-7600,KP-7700と上級機が発売され,さらにここで展開された正攻法の設計思想は,後の名機
KP-1100へとつながっていくことになりました。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




440kg・cm2の音
ディスクに刻まれた情報を
ありのままにピックアップしたい。
プレーヤーの基本に帰ってプレーヤーを考えると,
ターンテーブルの慣性質量は超弩級になった。
フォノモーターはハイトルクになった。
トータルウェイトは16kgになった。
ディスクに刻まれた情報を
ありのままにピックアップしたい。
ひとつのテーマを追求したら
トランジェントロードが抑制できた。
ピアノの音が透明になった。
音がクリアーにダイナミックに躍動した。
 
 

●KP-7300定格●
 

■フォノモーター部・PM-300■


駆動方式 ダイレクトドライブ
モーター 20極30スロットDCサーボモーター
ターンテーブル 口径330mm質量2.6kgアルミダイキャスト
ターンテーブル慣性質量 400kg・cm2
ゴムシートを含むターンテーブル慣性質量 440kg・cm2
回転数 33・1/3,45rpm2スピード
回転数微調整範囲 ±3%(33・1/3,45rpm独立)
トランジェント負荷特性 0.00036%以下(400Hz,33・1/3rpm,20kg・cm負荷時)
0.00018%以下(1000Hz,33・1/3rpm,20kg・cm負荷時)
ワウ・フラッター 0.027%(W.R.M.S.)以下
SN比 62dB(JIS)以上/70dB(DIN-B)以上
最大トルク 1.1kg・cm
起動特性 1・1/2回転以内(33・1/3rpm)

 

■トーンアーム部 TA-7■


型式 スタティックバランスS字型パイプアーム
アーム実効長 237mm
オーバーハング 15mm
トラッキングエラー +2.0°〜−1.0°
針圧可変範囲 0〜3.0g
適用カートリッジ重量 2.5〜12g(12.5gシェル使用時)

 

■カートリッジ部 DM-11■


型式 デュアルマグネット(DM型)
周波数特性 20Hz〜20,000Hz±3dB
チャンネルセパレーション 25dB以上(1,000Hz)
出力電圧 3.5mV(1,000Hz,5cm/sec)
出力バランス 2.5dB(1,000Hz,5cm/sec)
負荷インピーダンス 50kΩ
針先 0.5milダイヤモンド
適正針圧 1.7〜2.3g
コンプライアンス 7×10−6cm/dyne
交換針 純正部品N-11

 

■総合定格■


電源 AC100V,50/60Hz
消費電力 6W
寸法 490W×423D×160Hmm
重量 16.0kg
付属機構 ピッチコントロール
オイルダンプ式エレベーション
デュアルサスペンション式アブソーバー(高さ調整つき)
※本ページに掲載したKP−7300の写真・仕様表等は1977年1月のTRIO
のカタログより抜粋したもので,トリオ・ケンウッド株式会社に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じら
れていますので,ご注意ください。
 
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