KENWOOD KP-770D
QUARTZ PLL DD AUTO-UP TURNTABLE ¥69,800
1984年に,ケンウッド(現JVCケンウッド)が発売したプレーヤーシステム。ケンウッドは,トリオブ
ランドの時代から,力の入ったアナログプレーヤーを作っていました。1976年には, 「大慣性質量
ターンテーブル」をもつKP-7300を出すなど,正攻法の作りのプレーヤーを次々と発売していきま
した。そんなケンウッドが,1984年発売のKP-880DⅡの弟機として発売したのがKP-770Dで
した。
ターンテーブルの駆動系には,上級機と同じDL(ダイナミック・セン ターロック)モーターシステムを搭
載していました。スピンドルの回転に伴いオイルが循環し,スピンドル全体を超高圧薄膜でカバーして
スラスト受け部と剛体化すると同時に,スピンドルの側面に,逆くの字型に刻まれた2つのヘリンボーン
溝により,スピンドルの側面に張られた数ミクロンのオイルを回転させ,この流体の圧力を利用して,
スピンドルを回転軸上にロックするというものでした。スピンドルの側面は軸にタッチすることなく,側圧
7.5kgというずば抜けた高剛性回転を実現し,ターンテーブルは波打つことなく,ディスクと針先が常
に安定した状態で音楽再生を続けられるという高剛性回転機構でした。
駆動モーターには,コアレス&スロットレス,3相スイッチング,プレーンドライブDCサーボモーターが搭
載され,クォーツ発振子の基準信号,速度検出信号を比較して位相差を制御するクォーツPLL方式に
より,静的な定常回転の回転ムラを追放する クォーツロックが採用されていました。回転制御のため
の回転数の検出にはマグネットとモーターのローターの磁束密度変化によって発電するFGコイルが用
いられ,速度制御系にはIC内部にデジタルメモリーをもつ新開発ICを使用し,コイルや抵抗を全く用い
ない方式であるため,温度特性や安定性にすぐれた性能が確保されていました。
ターンテーブルは,直径33cm,重量1.9kgのアルミ合金ダイキャスト製の重量級のものが搭載され
ゴムシートも含めて450kg・cm2の 大慣性質量により,動的な回転ムラを抑える「慣性ロック」となって
いました。ケンウッドは,こうした方式を「ダブルロック」と称していました。これらの回転系メカニズムや
制御系は,上級機とほぼ同じものとなっており,ワウ・フラッター0.008%(FG直読法)という高精度な
回転を実現していました。
トーンアームは,HS(ハイスタビリティ)アームと称されるアームが搭載されていました。アームパイプ部
は,10mm径の高剛性ストレートパイプを採用し,軸受け部は,上級機のようなナイフエッジではないも
のの,スパンを大きくとった2ピボット構造で,たわみやねじれによる影響を受けにくいアルミダイキャス
ト製のワイドスパン台形型のブラケットとしていました。そして,ブラケット部と回転部との接合は2本の
凹ピンとビス4点止めを併用して強力に固定し,肉厚及び形状を複雑にして固有振動の発生を抑えて
いました。さらに,専用ヘッドシェルは,コネクター部も一体成形とした高剛性アルミダイキャストとして,
高剛性ストレートアームとの組みあわせで,すぐれたトレース能力を実現していました。
モーターの固定は,モーター支点(ターンテーブルの回転支点)とアーム支点を明確にするために,メカ
ニカルショート構造が採用されていました。モーター部をARCB材という強靱な樹脂系素材でがっちりと
固定していました。
KP-770Dは,基本的にはオーソドックスなマニュアルプレーヤーでしたが,アームの感度を損なわない
無接点のオプティカル検出によるオーとリフトアップ機構が搭載されていました。また,可変範囲7mmの
アーム高さ調整が装備されていました。
以上のように,KP-770Dは,本格的な音質重視型のプレーヤーとしては,エントリークラスに近いモデ
ルながら,高い評価を受けていた上級機のエッセンスを巧みに受け継ぎ,コストパフォーマンスにすぐれ
た1台となっていました。上級機と比べるとやや解像度等では及ばないものの,しっかりした作りから来
る安定感ある音をもつ使いやすいプレーヤーでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
ストレートアームが
トレース能力に磨きをかけた。
DLモーターのKP-770D
◎ワウ・フラッター0.008%(FG直読法)
DLモーターシステム
◎HS(ハイスタビリティ)アーム
●モーター固定は,モーター支点とアーム支点を明確
化するメカニカルショート構造
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
モーター | クォーツPLLコアレス&スロットレス 3相スイッチング,プレーンドライブ,DCサーボ |
起動トルク | 1.2kg・cm |
ターンテーブル | 33cm,1.9kg,アルミ合金ダイキャスト |
慣性モーメント | 450kg・cm2(ゴムシート含む) |
回転数 | 331/3,45rpm |
ワウ・フラッター | 0.008%(FG直読法) |
SN比 | 80dB(DIN-B) |
型式 | 高剛性HSストレートパイプアーム |
アーム実効長 | 245mm |
オーバーハング | 15mm |
トラッキングエラー | +1.8°~-1.0° |
針圧可変範囲 | 0~3g(0.1gステップ) |
適用カートリッジ重量 | 2~12g(付属シェル使用) |
電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 14W(電気用品取締法に基づく表示) |
寸法 | 490(幅)×162(高さ)×410(奥行)mm |
重量 | 11.7kg |
付属機構 | 無接点オプティカル検出オートリフトアップ機構 スタティック型アンチスケーティング機構 トーンアーム高さ調整機構(可変範囲7mm) |
k-nisi@niji.or.jp※ 本ページに掲載したKP-770Dの写真・仕様表等は1985年11月
のKENWOODのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式
会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載
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