KP-8080の写真
TRIO  KP-8080
DIRECT DRIVE ELECTRONIC FULLAUTO  TURNTABLE
                                   ¥100,000


1979年に,トリオ(現ケンウッド)が発売したプレーヤーシステム。トリオは,1976年のKP-7300
以来,重量級ターンテーブルによる「大慣性質量ターンテーブル」を数々発売してきました。それらの
機種は音質重視型ということで,いわゆるマニュアルプレーヤーでしたが,KP-8080は,こういった
本格的なプレーヤーに,ボタン1つで演奏スタートができるフルオート機構を搭載した数少ないモデル
でした。

ターンテーブルは,直径33cm,重量2.6kのアルミダイカスト製の重量級ターンテーブルを搭載し,
慣性質量は550kg・cm2が確保されていました。この重量級の ターンテーブルをトリオのオリジナル
クォーツPLLリバーシブルDCサーボモーターで駆動していました。これは,20極30スロットのDCモー
ターで,1.5kg・cm以上の起動トルクを持ち,前年に発売されたマニュアルプレーヤーKP-7070に
搭載されて定評を得ていたモーターでした。クォーツPLLサーボ回路は,サーボ検出部にダブル(マグ
ネチック&メカニカル)積分方式の180スロット3層ギヤを使用し,ターンテーブルの回転速度をその
まま電圧に変換するS・V(Speed-Volt)変換方式を採用していました。そして,プラス・マイナス両方
向の回転制御を行うリバーシブルDCサーボにより,トランジェントな負荷変動に対してのレスポンスを
高めていました。これらにより,クォーツでロックすると同時に550kg・cm2の 慣性モーメントによりトリ
オの称した「慣性ロック」が働き,周波数成分の低い外乱,あるいは時間ドリフトに対してはクォーツ
PLLが,かつランダムなトランジェント負荷に対しては慣性モーメントが,それぞれの特性を生かして
定常回転をロックするというもので,きわめて安定した回転を実現していました。
重量級のターンテーブルを支えるセンターシャフトは直径10mmの極太のものを使用して偏芯やねじ
れを抑え,このセンターシャフトがそのままモーターの回転軸になる設計となっていました。

KP-8080のアーム

トーンアームは,スタティックバランスのS字型アームで,フルオート機構のアームとしては珍しい実効
長245mmのロングアームでした。また,フルオートタイプのアームでありながら,高さ調整機構も備え
ていました。高さ調整機構は,ウェッジチャックに固定されたロックレバーを引くと,アップ用スプリング
によってトーンアームが自動的にせり上がるようになっており容易に調整ができるシステムになってい
ました。内線材には,絹巻リッツ線,出力コードには2芯シールド線が使用され,伝送ロスが抑えられ
ていました。

アーム駆動機構レコードサイズセレクター

フルオート機構は,アームの位置検出機構がトーンアームに接触しない,LEDとフォトトランジスターを
組み合わせた無接触光学検出機構によるもので,オートリターン検出時にもオートメカニズムで発生
する有害振動が針先に伝わらないようになっていました。アームの動作機構は,トーンアーム駆動用に
は専用のDCマイクロモーターを搭載し,アームエレベーション用には専用プランジャーを搭載した精密
機構で,各動作に対してそれぞれ専用の駆動源を持っているシステムのため,確実でスムーズな動作
が確保されていました。
KP-8080のフルオート機構には,自動ディスクサイズセレクターが装備されており,ディスクをターン
テーブルにのせると,光学式の検出機構により,30cm・25cm・17cmのディスクのサイズが検出され
PLAYスイッチを押すだけで,ディスクの第一音溝に針先が誘導されるようになっていました。また,ディ
スクサイズの検出機構の働きにより,誤ってディスクをのせずにPLAYボタンを押しても針先がターンテー
ブルに降りることなくアームレストに戻ってくる安全機構も働くようになっていました。
フルオート機構のアームは,手でアームに触れずに,左右へのアーム移動ボタンとUP/DOWNボタン
のにより,安全にディスクに針先を降ろすことができるようになっており,アームの左右移動時には,
FASTボタンを同時に押すことにより3.5倍の速さで移動させることができるようになっていました。
また,手でトーンアームをレストから外すとターンテーブルが自動的に回転を始め,マニュアルでアーム
を降ろしたり,リードイン中等にアームが移動中でもアームに手で触れるとすべてのオート動作が解除
されるようになっているなど,マニュアルプレーヤーとしても使用できるようになっている,マニュアル/オ
ート自動切替となっていました。

キャビネットは,ホモゲンチップを固めた硬質ホモゲンとARCB材(レジンコンクリートを主材料として天
然石を加えた防振効果にすぐれた材質)による複合構造キャビネットが採用されていました。さらに,大
型の90mm径6mm厚アルミダイキャスト製アームベースとメカニズムシャーシで複合キャビネットをサン
ドイッチ固定する構造がとられ,外乱からトーンアームやカートリッジの動作を守る防振特性が確保され
ていました。

以上のように,KP-8080は,同社自慢の大慣性質量ターンテーブルに,フルオート機構を組み合わせ
た使い易いプレーヤーシステムとして完成されており,コストパフォーマンスにもすぐれた1台でした。しか
しフルオートプレーヤーであったことが,かえってオーディオファンの注目を集めにくい結果となったのか
人気モデルとはいえませんでしたが,実力機でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



いま,慣性ロックプレーヤーが
コンピューター制御機構をもった


◎無接点光学検出電子コントロール
◎自動ディスクサイズセレクター
◎トーンアームフリーセレクション動作
◎世界のカートリッジを使いこなせる
 高さ調整つきロングトーンアーム
◎マニュアル/オート自動切替
◎PLLリバーシブルDCサーボモーター
◎硬質ホモゲン材とARCB材の
 複合キャビネット




●KP-8080定格●



●フォノモーター部●

駆動方式 ダイレクトドライブ
モーター型式 クォーツPLLリバーシブルサーボ
20極30スロットモーター
起動トルク 1.5kg・cm以上
ターンテーブル 33cm/2.6kgアルミダイキャスト製
慣性モーメント 550kg・cm2(ゴムシート含む)
回転数 331/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.022%(WRMS)
0.0165%(ロータリーエンコーダー使用)
SN比 62dB(JIS),83dB(DIN-B)
トランジェント負荷特性

0.00030%以下(400Hz331/3,20kg・cm負荷)
0.00015%以下(1kHz331/3,20kg・cm負荷)
起動特性 1.8秒(331/3rpm)
回転数偏差 ±0.002%以下
時間ドリフト 0.0002%/h以下
温度ドリフト 0.00002%/℃以下
電源電圧特性 0%(±10V)



●トーンアーム部●

型式 スタティックバランスS字型パイプアーム
EIA規格プラグインヘッドシェル
アーム実効長 245mm
オーバーハング 15mm
トラッキングエラー +1.8°〜−1.0°
針圧可変範囲 0〜3g
適用カートリッジ重量 2〜12g(付属シェル12g使用時)



●自動機構●

レコードサイズ検出時間
(PLAYボタン操作後)
1.7秒以内(331/3rpm),1.5秒以内(45rpm)
フリーセレクション動作スピード
(トーンアーム回転スピード)
18mm/s(Slow),51mm/s(Fast)



●総合特性●

電源 AC100V,50/60Hz
消費電力(電気用品取締法に基づく表示) 18W
寸法 491W×176H×404Dmm
重量 14.5kg



●付属機構●

オート機構
無接点電子コントロールフルオートマティック機構
PHOTO検出オートレコードサイズセレクター
2速トーンアームフリーセレクション機構
トーンアーム
スプリングUP式トーンアーム高さ調整機構
ウェッジチャック式アームロック機構
専用プランジャー使用独立アームエレベーション
エレベーション高さ調整機構
その他
水平移動アブソーバ(高さ可変)
アクリル製ダストカバー(1.2g)


※本ページに掲載したKP-8080の写真・仕様表等は1979年10月
のTRIOのカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
ことは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
★メニューにもどる
  
   
★アナログプレーヤーPART4のページにもどる

 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。

メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system