TRIO KP-F7
QUARTZ PLL FULL-AUTO DD PLAYER ¥59,800
1980年に,トリオ(現JVCケンウッド)が発売したプレーヤーシステム。それまでの同社のプレーヤーとは大きくイメージ
の異なるデザインの中に,フルオートプレーヤーとして各部に先進的な技術を取り入れつつ,オーソドックスに音質重視
でまとめられた中級機でした。
ターンテーブルは,直径31.6cm,重量1.5kgのアルミダイキャスト製で,330kg-cm2という慣性質量を確保してい
ました。ターンテーブルの駆動はダイレクトドライブ方式で,駆動用モーターには,コギングがほとんどなく回転精度にす
ぐれたコアレス・スロットレスDCサーボモーターが搭載されていました。モーターの速度検出には,全周積分方式が採
用され,サーボ系には水晶発振器を規準とするクォーツPLL方式が採用されており,重量級のターンテーブルとあいまっ
て回転の高い精度と安定性が確保されていました。さらに,モーターの軸受部は,BSBM(黄銅,真鍮)材で構成され
硬質ステンレスのシャフトを全面ホールドすることで,回転支持を明確にして安定した滑らかな回転を確保していました。
トーンアームは,複合構造による高剛性化とピックアップ系の実効質量軽減を両立させた複合防振ストレートアームが
搭載されていました。そして,ヘッドシェルやコネクトホルダーにはカーボンファイバーを使用して,軽くしかも高剛性化
ということで,実効質量を軽減していました。また,不要振動の発生源となりやすいインサイドフォースキャンセラーは,ス
タティックタイプで,針先にムダな力をかけず,トーンアーム本体とは糸だけでしか接触させない構造がとられていました。
KP-F7は,フルオートプレーヤーとして,コンピューター制御で正確でシャープなフルオート機構が搭載されていました。
そのため,オート動作中でも,いつでも手動操作ができるマニュアル最優先となっており,レコードサイズの指定をしない
かぎりPLAYスイッチを押してもアームが下降動作を行わない針先保護機構や,アームをレストに戻すとキューイングが
自動的に解除になるキューイング自動解除機構が搭載されていました。また,アームがレコード盤の縁まで戻るとすぐリ
ピート動作に入るダイレクトリピート機構も特徴でした。さらに,別売のリモートコントローラーRC-500(¥29,000)を
使用すると,すべての動作を遠隔操作でき,また,レコード演奏中にRC-500でパワーOFFの指示をすると,レコードの
演奏が終わった後にシステム全体の電源がOFFになるメモリートレース機構も搭載されていました。
そして,トリオが独自に開発したとされるマイクロプロセッサーを搭載し,アームのオート動作やクォーツモーターの回転
制御,メモリートレース時の電源ON・OFFなどすべての動作が集中コントロールされるようになっていました。
また,このアームには,オルトフォン社製VM型カートリッジ(F15omkU)が標準装備されていました。
キャビネットは,複合防振キャビネットと称され,ポリエステル系のベースレジン材に,ガラス繊維,炭酸カルシウムによる
合成石や化学繊維などを成形したFRP材による複合材成形キャビネットとなっていました。材質自体を複合構造とするに
すると同時に,トーンアーム支点とターンテーブル支点をリブで一体化するメカニカルショーティング構造として両支点間を
明確化することで,すぐれた防振特性を実現していました。
以上のように,KP-F7は,1980年代に入り,トリオが発売した新しい世代のフルオートプレーヤーとして,各部に新しい
技術が投入され,バランスのとれた設計がなされていました。ダークな色調の精悍なイメージのデザインも,新しさを感じ
るものでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
デリケートなアーム操作を快適にこなす,
マイコン制御のフルオート。
◎マイコン制御の電子コントロール
●マニュアル最優先
●独自のダイレクトリピート機構
●針先保護機構
●キューイング自動解除機構
●リモートコントロール機構
◎複合防振ストレートトーンアーム
◎複合防振キャビネット
◎クォーツPLL・DCサーボモーター
◎カートリッジはオルトフォン
◎アンチスケーティング機構
●KP-F7定格●
■フォノモーター部■
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
モーター型式 | クォーツPLL,コアレス,スロットレスDCサーボモーター |
ターンテーブル | 31.6cm・1.5kgアルミダイキャスト |
慣性モーメント | 330kg・cm2 |
回転数 | 331/3rpm,45rpm |
ワウ・フラッター | 0.03%(WRMS)以下 |
SN比 | 75dB(DIN-B) |
回転数偏差 | ±0.003%以下 |
電源電圧特性 | 0%(±10V) |
型式 | スタティックバランス型ストレートパイプアーム |
アーム実効長 | 225mm |
オーバーハング | 15mm |
トラッキングエラー | +3°24’〜−1° |
針圧可変範囲 | 0〜3g |
適用カートリッジ重量 | 4〜9g(付属シェル使用時) |
■カートリッジ部■
型式 | バリアブル・マグネティックシャントタイプ(オルトフォンF15omkU) |
周波数特性 | 20Hz〜20,000Hz |
チャンネルセパレーション | 25dB以上(1,000Hz) |
出力電圧 | 5mV(1,000Hz 5cm/s) |
出力バランス | 2dB(1,000Hz 5cm/s) |
最適負荷インピーダンス | 47kΩ |
針先 | 0.6mil |
適正針圧 | 1.5±0.5g |
コンプライアンス | 25×10−6cm/dyne |
交換針 | 純正部品N-15MKU |
電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 (電気用品取締法に基づく表示) |
12W |
最大外形寸法 | 470W×142H×407Dmm |
重量 | 9kg |
付属機構 | オートリードイン,オートカット,オートリターン,オートリピート アンチスケーティング,クォーツロック表示,リモートコントロール端子 |
※本ページに掲載したKP-F7の写真・仕様表等は1981年11月の
TRIOのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に著
作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等
をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
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