TRIO KX-1000D
STEREO CASSETTE DECK ¥87,000
1981年に,トリオ(現JVCケンウッド)が発売したカセットデッキ。トリオは,カセットデッキの分野では,あまりメジャー
なブランドではありませんでしたが,1977年にKX-9000,1979年にKX-1000,KX-800と,3ヘッド構成のカセッ
トデッキを発売していました。これらの次の世代の3ヘッドデッキとして発売されたのがKX-1000Dでした。
KX-1000Dは,1980年代に入り,新世代の同社のカセットデッキのトップモデルとして,メカニズム系,エレクトロニク
ス系,機能等,より新しい技術が投入された1台となっていました。
走行系は,トリオカセットデッキ初のダイレクト・ドライブ方式が採用されていました。モーターの回転軸が直接キャプスタ
ンを駆動することにより,伝達機構に起因するワウ・フラッターの変化や経年変化などによる影響を排除していました。
DDモーターには,トルクリップルが少なく,高効率の,8極構造のコアレス&スロットレス3相スイッチング・プレーン・ドラ
イブ・モーターが搭載されていました。DDモーターの制御系は,全周積分交流ジェネレーターによる高精度な検出でFG
サーボがかけられ,高精度な加工が施されたキャプスタンと慣性質量の大きなフライホイールともあいまって,ワウ・フラ
ッター0.035%(WRMS)以下という,正確なテープ走行が実現されていました。
1モーター構成であった前モデルKX-1000に対して,キャプスタン用のFGサーボ・DDモーターに加え,リール用にDC
モーターを搭載した2モーター構成が採用され,各メカニズムの動作はすべてICフルロジックでコントロールされるように
なっていました。再生,録音,巻き戻し,早送り等の各モードから次のモードへの切換は,STOPボタンを押さずにダイレ
クトに切換が可能で,メカ的には,常にSTOPモードを経由してモード切換を行うテープ・プロテクション方式となっていま
した。操作キーは,適度なフリクション(摩擦)を持たせたフェザータッチとなっており,録音もワンボタンで可能なワンキー
RECとなっていました。
ヘッドは,録音ヘッド,再生ヘッドを独立させた3ヘッド構成で,録再ヘッドは,コンビネーションヘッドが搭載されていまし
た。録音ヘッド5μ・再生ヘッド1μと最適ギャップ幅を設定したフェライト・コンビネーションヘッドで,広帯域にわたるフラッ
トな周波数特性,低歪率,高い飽和レベルが実現されていました。消去ヘッドもフェライトヘッドで,オールフェライトヘッド
という構成になっていました。
ノイズリダクションとして,ドルビー(Bタイプ)が搭載されていました。3ヘッドに対応して,ヘッドからアンプまで,録音と再
生が独立した別系等になっており,当然ドルビーも2系統搭載されたダブルドルビーとなっていました。
さらに,ダイナミックレンジの拡大を図る新開発のドルビーHXが搭載されていました。通常固定されている録音時のバイ
アス電流と録音イコライザーを信号に応じて変化させることでダイナミックレンジを拡大するシステムで,低域ではバイア
ス量を増やし,歪みや変調雑音を改善するとともに,高域ではバイアス量を減らして,15kHz,0dB(ドルビーレベル)信
号に対して10dB〜20dBとダイナミックレンジを拡大を実現するというものでした。このシステムで録音したテープは従来
のドルビーNR(ドルビーHXを搭載していない)を内蔵したデッキで互換性を持って再生できるのもメリットでした。
テープセレクターは,NORMAL,CrO,FeCr,METALの4ポジションが装備され,録音バイアスを微調整できるバイア
ス調整ボリュームも搭載されていました。レベルメーターは,大型の針式VUメーターで,さらに,+3,+5,8dBの3ポイ
ントのLEDによるピークインジケーターも装備されていました。その他,テープエンドの状態から自動的に巻き戻して再生
(テープ片面リピート)あるいはSTOP状態にできるオートリワインド機構,押している時間だけ無録音部分が作れるレッ
クミュート,テープを入れて,ワンタッチでセンシングテープを巻き取り,すぐに録音スタンバイができるオートリードインボタ
ンなどが装備されていました。また,入力はLINEの他に,前面にL・RのMIC端子が装備され,MIC入力も備えていました。
以上のように,KX-1000Dは,トリオの3ヘッドデッキとして第3世代になるモデルとして,メカニズム的にも,機能的にも
大きく強化されていました。デザイン的にも,新しいイメージをもったものとなっており,コストパフォーマンスが高められた
意欲作でした。しかし,当時のカセットデッキにおけるブランドイメージの弱さゆえか,意外と地味な存在となってしまった
隠れた実力機だったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ナミのデッキとはダイナミックレンジが違う。
3ヘッドでD.D.2モーター&ドルビーHX。

◎ダイレクトドライブ・2モーター方式
 KX-1000Dの安定走行メカニズム
◎フェザータッチで確実なモード切換え
 ができるICフルロジック・コントロール
◎録音・再生の同時モニターができる
 フェライト・コンビネーション3ヘッド
◎大入力時にダイナミックレンジを拡大する
 ドルビーHX(
ヘッドルーム・エクステンション)システム
●テープ片面リピート,巻き戻した状態でSTOP
 のいずれかが選べるオートリワインド機構
●センシングテープを巻き取り,すぐに録音スタ
 ンバイできるオートリードイン機構
●押した時間だけ無録音部分がつくれるレックミュート
●バイアス調整ボリューム
●REC/PLAYタイマースタンバイ
●3ポイントピークインジケーター付大型VUメーター




●KX-1000D定格●

トラック形式 4トラック2チャンネルステレオ
モーター (2モーター)
キャプスタン:FGサーボ・ダイレクトドライブ
リール台:DCモーター
ヘッド (3ヘッド) 録音再生:フェライト・コンビネーションタイプ
        消去:フェライト
ワウ・フラッター 0.035%(WRMS)以下
早送り・巻戻し時間 85秒以内(C-60テープ)
周波数特性 ノーマル    :20Hz〜19,000Hz(20Hz〜18,000Hz±3dB)
フェリクローム:20Hz〜19,000Hz(20Hz〜18,000Hz±3dB)
クローム   :20Hz〜19,000Hz(20Hz〜18,000Hz±3dB)
メタル      :20Hz〜20,000Hz(20Hz〜19,000Hz±3dB)
SN比(ドルビーON/OFF) ノーマル   :67dB/57dB
フェリクローム:69dB/59dB
クローム   :69dB/59dB
メタルテープ :70dB/60dB
総合ヒズミ率 0.3%以下(1kHz 0VU メタルテープ)
入力端子・感度 MIC(ローインピーダンス600Ω用):0.25mV(10kΩ)
LINE:77.5mV(50kΩ)
出力端子・レベル LINE:390mV(100kΩ)
HEAD PHONE:50mV(8Ω)
電源 AC100V 50Hz/60Hz
消費電力(電気用品取締法による表示) 20W
寸法 440W×123H×373Dmm
重量 7.1kg
付属機能 ドルビーHXシステム,ドルビーNR,
4段テープセレクター,大型VUメーター
オートリワインド(PLAY/STOP)
オートリードイン,テープモニターSW
RECミュート,単独MPXフィルター
タイマースタンバイ,バイアス可変ボリューム
※本ページに掲載したKX-1000Dの写真,仕様表等は1981年4月
 のTRIOのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用
 等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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