LUXMAN
L-430
STEREO INTEGRATED AMPLFIER ¥99,000
1982年に,ラックスが発売したプリメインアンプ。前年の1981年に「STATUSシリーズ」と称された一連の
高級プリメインアンプ,
L-550,
L-530,L-510の3機種を発売したラックスは,翌年の1982年,新たに
「REVOLVERシリーズ」というプリメインアンプ,L-430,L410(¥79,000),L-400(¥59,000)を
発売しました。この「REVOLVERシリーズ」は,求めやすい価格にも表れているように,ターゲットをより低
い年齢層に向け,若い人の聴く音楽(ポップス,ロック等)に向けた音作りがなされ,デザイン的にも上級機
とは異なる若者向けのデザインが特徴となっていました。L-430は,この「REVOLVERシリーズ」の中の
最上級機でした。
L-430の特徴として,「デュオ・ベータ・サーキット」を搭載していたことがありました。この「デュオ・ ベータ・
サーキット」とは,1979年の
L-58Aに初搭載されたもので,
2つのフィードバック回路(NFB回路とDCサー
ボ回路)を巧みに組み合わせ高音質を実現 しようという技術で,電気用語でフィードバック回路を意味する
ギリシャ語「β(ベータ)」と音楽用語でイタリア語で二重奏を意味する「Duo」を組み合わせて名付けられて
いました。「デュオ・ベータ・サーキット」は,大量のNFB(負帰)をかけて特性を改善を図 ることをやめ,アン
プの裸特性を向上させ,そこに適量のNFBをかけ,DCサーボにより,可聴帯域外からの制御でアンプの
動作の安定性を確保するという,バランスを考えた技術でした。
全体の回路構成は,ハイゲイン・イコライザーアンプとハイゲイン・メインアンプというシンプルな2アンプ方
式で,プリとメインのジャンパーが付き,プリアウトとメインインの感度は200mVで,セパレートアンプの出
力,入力感度とは異なっていました。
ハイゲインイコライザー部は,MCカートリッジにも対応し,High-GmローノイズFETを差動増幅で使用し,
ここに「デュオベータ・サーキット」が搭載され,高性能化が図られていました。また,このイコライザー部を
含むディスク再生系には,フォノ・ストレート機能が搭載されていました。これは,単なるバイパスでなく,フィ
ルタ類,バランスコントロール,セレクター類など,接点や配線引き回しを徹底して切り離すもので,ディスク
専用アンプとしての使い方も想定されていました。
パワーアンプ部には,「デュオ・ベータ・サーキット/S」という回路が採用されていました。これは,ラックス
のそれまでの「デュオ・ベータ」技術と「plusX電源」を統合し,発展させたもので,1981年の「STATUSシリ
ーズ」に初搭載されたものでした。「デュオ・ベータ」技術の考え方を電源部に応用したのが「plusX電源」で,
定電圧回路の細かな制御をやめ,余裕ある電源部に,ゆとりある制御をかけていくものでした。これにより,
電源電圧の細かなゆらぎがなくなり,安定したなめらかな電源供給が可能になっていたということでした。
通常のパワーアンプ部は,NFB(負帰還)をかけることで失われるゲインを稼ぐために,初段増幅,2段目増
幅というように,出力段に至るまでに2回増幅をしていました。「デュオ・ベータ・サーキット」で「適量NFB」によ
り,高ゲインは不要となり,高性能な増幅素子を厳選して使用してたっぷりと電流を流し,必要なゲインを取り
だす回路が完成され,2段目の増幅段を撤去したのが,「1段増幅アンプ・デュオ・ベータ・サーキット/S」でし
た。これにより,増幅回路のシンプル化,パーツ点数の減少が実現していました。
大型の電源トランスと63V15,000μFのフィルターコンデンサー×2による強力な電源部と相まって,100W
+100W(8Ω時)という出力が実現されていました。
機能的には,サブソニックフィルター,ハイフィルター,テープ2系統・相互ダビング機能などオーソドックスなも
のがきちんと搭載されていましたが,特徴的なのがトーンコントロールでした。「周波数シフト式トーンコントロー
ル」と称されたこのトーンコントロールは,変化量と変化し始める周波数が連動して動作するもので,自然な
トーンカーブが得られ,聴感的にも自然で効果的な音質調整が可能となっていました。
以上のように,L-430は,ラックスが当時の激戦ゾーン10万円クラスに投入した,実力派のプリメインアンプ
でした。独特の磨かれた音を特徴とするラックスとしては,思い切って若々しい音作りを行い,当時,故長岡鉄
男氏に「ヤング・ラックス」,「ダイナミック・ラックス」と言わしめたスピード感のあるダイナミックな音を実現して
いました。