LUXMAN L-530
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥165,000
1981年に,ラックスが発売したプリメインアンプ。ラックスは,真空管アンプの時代からアンプにお
いてすぐれた製品を出してきたブランドですが,この年,新たに高級アンプのシリーズ「STATUS
シリーズ」を展開していきました。L-550(¥250,000),L-530,L-510からなるこのシリーズ
は,プリメインアンプながら,下級機でも10万円を超える非常にグレードの高いシリーズで,L-530
は,その中の真ん中のグレードにあたる機種でした。

パワー部は,上級機L-550が,プリメインアンプとしては異例の大出力の純A級出力段であった
のに対し,AB級出力段となっていました。しかし,出力段の素子に高速スイッチング特性のRET
(Ring Emitter Transistor)を用いて,パラレルプッシュプル構成とし,A級動作領域を15Wま
でと,大きく広げていました。そして,AB級動作領域は120Wまでの大出力を余裕をもってクリア
していました。A級動作領域を大きくとった上でのハイ・パワー・アンプとしての設計で,高いクオリ
ティと大出力の両立を実現していました。
こうした出力段を安定動作させるように,放熱効果の高いスカイブ・フィン型のヒートシンク2基を用
い,効率よく収めていました。
電源部には,容量320VAの大型の電源トランスと30,000μFのブロックコンデンサーを搭載し
余裕をもたせた電源部となっていました。



L-550を頂点とするSTATUSシリーズのプリメインアンプには,ラックス独自の1段増幅を特徴と
した「デュオ・ベータ・サーキット/S」という回路が採用されていました。これは,ラックスのそれまで
の「デュオ・ベータ」技術と「plusX電源」を統合し,発展させたものでした。「デュオ・ベータ」技術は,
大量のNFB(負帰)をかけて特性を改善を図ることをやめ,アンプの裸特性を向上させ,そこに適量
のNFBをかけ,DCサーボにより,可聴帯域外からの制御でアンプの動作の安定性を確保するも
のでした。この考え方を電源部に応用したのがplusX電源で,定電圧回路の細かな制御をやめ,
余裕ある電源部に,ゆとりある制御をかけていくものでした。これにより,電源電圧の細かなゆらぎ
がなくなり,安定したなめらかな電源供給が可能になっていたということです。            
通常のアンプの基本回路は,NFB(負帰還)をかけることで失われるゲインを稼ぐために,初段増
幅,2段目増幅というように,出力段に至るまでに2回増幅をしていました。デュオ・ベータ・サーキッ
トで「適量NFB」ということで,高ゲインは不要となっていました。そして,初段にMCヘッドアンプに
用いられる高gm,ローノイズのFETを用い,1石あたり7mAという大電流を流すことにより,必要
なゲインを余裕を持って取りだす回路を完成し,同時に,初段に影響のないように出力段を完全に
独立させた上で,問題なく2段目の増幅段を撤去したのが,「1段増幅アンプ・デュオ・ベータ・サーキ
ット/S」でした。これにより,増幅回路のシンプル化,パーツ点数の減少が実現されていました。

イコライザー部は,MCカートリッジにも対応したハイゲイン・イコライザーが搭載されていました。通
常のハイゲイン・イコライザーは,NFB量を変化させてゲインを切替え,MC/MMそれぞれのカー
トリッジに対応していましたが,L-530のハイゲイン・イコライザーは,MC/MMそれぞれに適量の
NFBを設定し,ゲイン切替えをオープンループ・ゲインの変更により行うようになっていました。

機能面ではトーンコントロールが特徴的でした。高域,低域ともに6つのターンオーバー周波数が選
べるようになっていました。独立のアンプ回路を用いないでパワー部のNFB回路を利用した機能とし
ており,トーン使用時にもノイズ発生や音質劣化の少ない調整機能となっていました。さらに,フォノ
入力優先に切り替わるフォノ・ストレート機能をONにすると,セレクタ,フィルター,バランス・コント
ロールまでをジャンプし,不要な配線引き回しを切り離すようになっていました。そして,フォノ入力
には,MMで3段階(100kΩ,50kΩ,100Ω),MCで3段階(300Ω,100Ω,40Ω)の入力イ
ンピーダンス切り替えが装備されていました。その他,OFFにすることで録音系を切り離すことがで
きるレコーディング・インスイッチ,安定動作に入ったことを示すウォームアップインジケーター,AC
電源の極性を検知するライン・フェーズセンサーなども特徴的な機能でした。

以上のように,L-530は,プリメインアンプとしては非常にハイグレードな内容を持った「STATUS
シリーズ」の真ん中にあたる中核機として,高いクオリティと大出力を両立させたアンプでした。ラッ
クスらしい滑らかさに厚みのある音は,落ち着いた外観デザインとともに高級感のあるものでした。


LUXMAN L-510
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥135,000
「STATUSシリーズ」の末弟としてL-510も発売されていました。L-530の弟機として,回路構
成,機能等,ほぼ内容的なものは継承し,出力等規模をやや縮小したものとなっていました。
パワー部はRET採用のパラレルプッシュプル構成AB級出力段で,AB級領域で最大100W,
A級領域では8Wまでで,ほとんどのリスニングレベルをA級領域でカバーできるようになってい
ました。
電源部には,容量320VAの大型の電源トランスと15,000μF×2のブロックコンデンサーを
搭載した電源部となっていました。放熱効果の高いスカイブ・フィン型のヒートシンクは,L-530
と同等でした。



以上のように,L-510は,上級機L-530の内容をほぼ受け継ぎ,ハイグレードな「STATUS
シリーズ」らしい仕上がりとなっていました。シリーズに共通の上品で低域にも厚みのある音は
デザインイメージ同様に,ラックスらしさをもつものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



アンプの純化は,
「一段増幅」と「A級重視」に帰結する。

アンプ回路の「適量NFB」と「DCサーボ」。
「強力電源による余裕ある制御」のplusX電源。
そして今,アンプ回路の基本構成のあり方にメスを入れて,
性能を飛躍的に改善した「一段増幅アンプ」。
充実のデュオ・ベータ・サーキット/S。
オープンループでの高度な安定性に裏付けられた音質
A級動作を重視。



A級15Wと最大120W。ハイクオリティ・パワー!
L-530
◎デュオ・ベータ・サーキット/Sをパワー部に。
◎A級領域15W。これを裏付ける最大AB120W。
◎オープンループゲイン切替型イコライザ採用。
◎超シンプルディスク再生回路。
◎細かく音質調整できるトーンコントロール。
◎「余裕ある制御力」を可能にした強力電源部。

●ウォームアップ・インジケーター
●ライン・フェーズ・センサ


通常聴くレベルはA級で。言わば"実質A級”アンプ!
L-510
◎デュオ・ベータ・サーキット/Sをパワー部に。
◎A級領域8W/chとした上で,最大AB120W。
◎あらゆるMCカートを直結できるイコライザ。
◎ディスク専用アンプにも。
◎聴感に素直な変化特性。
◎大型電源トランスの採用などで,余裕の強化型電源。

●ウォームアップ・インジケーター
●レコーディング・イン




●SPECIFICATIONS●

  L-530 L-510
実効出力 15W+15W(A級領域,8Ω,両ch同時)
120W+120W(AB級最大,8Ω,両ch同時)
8W+8W(A級領域,8Ω,両ch同時)
100W+100W(AB級最大,8Ω,両ch同時) 
全高調波歪率 0.007%以下(8Ω,両ch同時,15W) 0.007%以下(8Ω,両ch同時,8W) 
入力感度 phono(MM):2mV 
phono(MC):125μV 
tuner,aux,monitor:340mV 
main in:340mV
phono(MM):2mV 
phono(MC):125μV 
tuner,aux,monitor:310mV 
main in:310mV 
入力インピーダンス phono(MM):100kΩ,50kΩ,100Ω 
phono(MC):300Ω,100Ω,40Ω 
tuner,aux,monitor:40kΩ 
main in:47kΩ
phono(MM):100kΩ,50kΩ,100Ω 
phono(MC):300Ω,100Ω,40Ω 
tuner,aux,monitor:40kΩ 
main in:47kΩ 
SN比 phono(MM):84dB 
phono(MC):70dB(250μV入力) 
tuner,aux,monitor:110dB 
main in:110dB
phono(MM):84dB 
phono(MC):67dB(250μV入力) 
tuner,aux,monitor:110dB 
main in:110dB 
周波数特性 10~100kHz(-1dB) 10~100kHz(-1dB) 
トーンコントロール 低域ターンオーバー: 
77Hz,120Hz,200Hz,330Hz,550Hz
880Hz 
高域ターンオーバー: 
880Hz,1.5kHz,2.5kHz,4kHz,6.5kHz 
最大変化量:±8dB
低域ターンオーバー: 
77Hz,120Hz,200Hz,330Hz,550Hz
880Hz 
高域ターンオーバー: 
880Hz,1.5kHz,2.5kHz,4kHz,6.5kHz 
最大変化量:±8dB 
テープモニター 2系統(tape-1,tape-2) 2系統(tape-1,tape-2) 
テープダビング 2系統(1→2,2→1) 2系統(1→2,2→1) 
フィルタ サブソニック(15Hz),ハイカット(9kHz) サブソニック(15Hz),ハイカット(9kHz) 
消費電力 380W 365W 
外形寸法 453(幅)×161(高さ)×444(奥行)mm 453(幅)×161(高さ)×444(奥行)mm 
重量 18.0kg 17.3kg 
※本ページに掲載したL-530,L-510の写真,仕様表等は,
 1981年8月のLUXMANのカタログより抜粋したもので,
 ラックス株式会社に著作権があります。したがってこれらの
 写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられて
 いますのでご注意ください。

 

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