KENWOOD L-D1
COMPACT DISC PLAYER ¥280,0001992年に,ケンウッドがL-A1,LS-CX7等とともに「Lシリーズ」の一環として発売された高級CDプレーヤー。
ケンウッド史上でも最高級機となった凝った作りのCDプレーヤーでした。L-D1の最大の特徴は,「トップローディング・ダイレクトドライブ・ターンテーブル方式」の採用でした。これまで同
社のCDプレーヤーにはトレイ式が採用されており,初のトップローディング方式となりました。CDの反りやたわみ
に起因するフラッタリングを抑えるため,スピンドルモーターに削り出しのターンテーブルを直に固定した上面再生
方式とし,ディスクを約100gの重量を持つクランパーで平滑な直径130mmのアルミターンテーブルに圧着して
一体化することで,通常方式の約20倍の慣性モーメントを持たせ,安定した動作と剛性アップ,結果としてサーボ
量の低下による音質の向上を図ったものでした。
ラックなどへ設置したときのため,ローディングドアの開閉角度は45度/60度/85度の3段階が選べるようになっ
ており,設置の自由度を高める工夫がされていました。また,CDの不完全なセットによる損傷や事故を防ぐため
クランパーがきちんとセットされていないと再生を開始しない,クランパー検出機能を装備していました。
ピックアップ部は,頑強で振動の少ない直径5mmのガイド上にディスクを跨ぐ橋梁のような構造になった,アルミダ
イキャスト製のブリッジ構造ピックアップ部となっていました。このピックアップ部は,ゴギングの少ないコアレスモー
ターによりベルトで駆動され,ガイド上を滑らかに移動するようになっていました。
通常簡単なオペアンプICで構成されるピックアップアクチュエーターのドライブには,ディスクリート構成の高性能オ
ーディオパワーアンプを採用し,駆動電流の歪み成分を抑え,グランドラインや電源ラインを汚染しないクリーンな動
作を実現していました。
ターンテーブルの重量化,大型化に合わせて,スピンドルモーターの強化が図られ,LD(レーザーディスク)プレーヤ
ーと同じ三相8極12スロット・アウターローター・ブラシレススピンドルモーターを搭載していました。このモーターは,
LD用に開発された直径6mmのシャフトを持つ高トルク,低ゴギングのモーターで,CDディスクの20倍の質量のLD
ディスクをCDの回転数の約4〜5倍のスピードで回転させる能力を持ち,通常型スピンドルモーターの3倍の径を持
つというもので,サーボの高い応答性やシャフトのふれの少なさなど,優れた特性を持っていました。D/Aコンバーターには,フィリップス社製のPDM変換ビットストリーム1ビットD/Aコンバーター,DAC7を左右独立
で使用し,さらにセパレーション,音場再現性を高めるため,左右独立のスイッチドキャパシタを搭載していました。
デジタルフィルターには,8倍オーバーサンプリングタイプを搭載していました。オーディオ段には,「Lシリーズ」のインテグレーテッドアンプL-A1で開発されたSuper C4が採用され,オペアンプ
ICで構成されることが多かったオーディオ段増幅を,ディスクリートによる本格的なオーディオ回路としていました。
プリント基板には,高硬度のガラスエポキシ基板を採用し,その頑丈な基板を鋼鉄製のスタッドを介して高剛性の2
mm厚のフレームにリジッドに取り付ける構造となっていました。オーディオ出力のインピーダンスを0.1Ωと極めて
低く設定し,オーディオケーブル等に起因する雑音信号の影響を抑えていました。
デジタル系とアナログ系の相互干渉を抑えるため,電源トランスをそれぞれに独立して搭載し,さらに,マイコンと表
示管理部にも専用トランスから電源供給を行うようになっていました。
L-D1では,振動等による音質の劣化を抑えるため,動点と基準点を明確にするという設計思想のもと,高剛性なメ
カニズムシャーシと完全分割気室フレーム構造の重量筐体が採用されていました。大型ターンテーブルの駆動メカ
ニズムは4mm厚のアルミダイキャストメカニズムシャーシにマウントされ,さらにリジッドに固定された8mm厚のアル
ミ押し出し材のフレームでがっちり支持される構造となっていました。フロントパネルは,5mm厚のアルミ押し出し材
で形作られ,メカニズム部,デジタル制御部,,デジタル・アナログ電源部,電源供給・アナログ復調部の4気室を,
本体フレームや底板の2mm厚鋼板で分割し,各パートの干渉を防ぎ,筐体全体としての剛性を高めていました。さ
らに,天板は3.8mm厚のアルミ押し出し材で,本体前部の気室と後部の気室を分割し,相互の干渉を抑えていま
した。そのほか,パネルやキー類も切削材か充分な厚みのある押し出し材を用い,ピンジャックも真鍮削り出しに金
メッキを施した高信頼性タイプを採用していました。以上のように,L-D1は,ケンウッドのCDプレーヤーの中でも,最高級機として各部に贅を尽くした設計がなされ,
見るからに風格のある高級機でした。安定感があり輪郭の鮮やかなケンウッドらしい音を持った高性能CDプレー
ヤーでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
目指したのは優れた数値ではない。
感動を呼び覚ます音を目指したのだ。
すべては正確な信号ピックアップの
ために。
トップローディング方式。
◎極めて安定した動作を実現した,トップローディン
グ・ダイレクトドライブ・ターンテーブル方式による
CD上面再生
◎滑らかに移動し信号を読み取る,アルミダイキャスト
ブリッジ構造のピックアップ部
◎徹底した低ひずみ化を実現した,ピックアップアク
チュエーターの低ひずみドライブ
◎高い回転能力を持つ,高剛性φ6mmシャフト採用の
三相8極12スロットブラシレススピンドルモーター
◎設置場所の条件等により開閉角度を選べる,トップ
ローディングドアの3段階角度切り換え
◎ディスク保護のためのクランパー検出機能
◎初段増幅回路に信成分のみの高純度な差動増幅
動作を実現する,Super C4を採用
◎ガラスエポキシ回路基板と鋼鉄スタッドによる強硬
固定方式を採用
◎PDM変換左右独立ビットストリーム1ビットD/Aコン
バーター
◎CD出力への外乱要素を抑え込むことに成功した,
超低インピーダンスアナログ出力
◎純度の高い電源供給を実現,デジタル・アナログ
独立トランス
◎高剛性メカニズムシャーシと完全分割気室フレーム
構造の重量筐体
◎ムク材をふんだんに使用した高品位パーツ
形式 | CDプレーヤー |
回転数 | 200rpm〜500rpm |
周波数特性 | 4Hz〜20kHz |
SN比 | 108dB以上(EIAJ) |
ダイナミックレンジ | 100dB以上(EIAJ) |
全高調波ひずみ率 | 0.001%以下(1kHz/EIAJ) |
チャンネルセパレーション | 100dB以上(EIAJ) |
出力レベル/インピーダンス | 可変出力:(1/2)/2.5V/0.1Ω
デジタル出力(コアキシャル)/0.5p-p/75Ω デジタル出力(オプティカル)/−15dBm〜−21dBm(660mm) |
電源電圧,電源周波数 | AC100V,50/60Hz |
定格消費電力
(電気用品取締法に基づく表示) |
25W |
最大外形寸法 | 476W×128H×430Dmm |
重量 | 20.0kg |
※本ページに掲載したLD-1写真・仕様表等は1993年9月の
KENWOODのカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式
会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断
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