LS-11の写真
KENWOOD LS-11
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥50,000(2本1組)

1987年に,ケンウッドが発売したスピーカーシステム。LS-990シリーズ(当時はLS-990HG)の末弟ともいえる
スピーカーシステムで,小型スピーカーながら,3ウェイのユニット構成を採用しているなど,かなり本格的な作りの
スピーカーシステムでした。

ウーファーは,19cm口径のコーン型で,「ニューHRカーボン・ユニット」が採用されていました。これは,LS-990
シリーズの2世代目LS-990ADのウーファーと同じタイプで,エポキシ樹脂バインドのHRカーボンとリブで強化した
パルプ層で,適度な内部ロスを持つ高発泡樹脂層をサンドイッチした3層構造をとり,高剛性化と同時に素材固有の
鳴きを抑えるというもので,カーボン部のバインダーを3次元架橋構造としていっそう剛性を高めたものでした。

スコーカーには,8cm口径のセミドーム型が搭載されていました。超軽量のパルプコーンの中心部のチャンバー部
にアルミ基材の両面を硬質セラミック層を生成したサンドイッチ構造のドームをもつセミドーム型で,指向性にすぐれ
たドーム型と高能率のコーン型の特徴をあわせもたせようとしたものでした。

トゥイーターは,1.6cm口径のドーム型で,チタンの基材にプラズマにより,ヤング率,伝播速度,熱伝導性の高い
ダイヤモンドを表面に蒸着させた「プラズマダイヤモンド・チタン振動板」が採用されていました。この振動板は,同社
のLS-990ADにも搭載されていたもので,ダイヤモンドとチタンの複合材のため,共振点を持たず,高剛性,軽量
で微小信号や高い周波数にもしっかりと対応した振動板でした。
また,各ユニットの磁気回路は,AV用途も考慮してダブルマグネットによる防磁型とされていました。

エンクロージャーは,バスレフ型で,ラウンドバッフルを採用したしっかりした作りのもので,背面も仕上げが施された
黒色塗装の高級感があるものでした。ネットワークは,リッツパターンプリント基板が分離配置され,連続可変タイプ
のレベルコントロールが装備されていました。
翌年の1988年には,木目タイプのLS-11Mも追加され,専用のスタンドSG-11(¥16,000)も発売されました。

LS-11Mの写真
KENWOOD LS-11M
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥50,000

以上のように,LS-11は,小型ながら本格的な3ウェイスピーカーシステムとして,しっかりしたユニットとエンクロー
ジャーが与えられたコストパフォーマンスの高い1台でした。使いこなしによって,しっかりした音を再生してくれる
手頃ながら実力派のスピーカーでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音楽空間を緻密に再現する,
プラズマダイヤモンド,
コンパクト・3ウェイ。


◎デジタルソースを高純度で再生
 プラズマダイヤモンド・ドームツィーター
◎中域の膨大な情報をあますところなく再現>
◎低域を力強く,歯切れよく,雄大に響かせる
 ニューHRカーボンウーファー

●セッティング場所を選ばない連続可変タイプの
 アコースティック・レベルコントロール
●回析効果を低減し,音響空間特性を高める
 ラウンドバッフル・キャビネット
●サイレント・ダクト
●リッツパターンプリント基板採用の
 分離型ハイグレード・ネットワーク
●防磁対応(EIAJ)
●背面デザイン



●SPECIFICATIONS●

型式 19cm3ウェイスピーカーシステム
エンクロージャー バスリフリックス
使用スピーカー 19cmニューHRカーボン型ウーファー
8cmセミドーム型スコーカー
1.6cmプラズマダイヤモンド・ハードドーム型ツイーター
再生周波数特性 40Hz〜50,000Hz
瞬間最大入力
200W
最大入力 130W(EIAJ)
インピーダンス 6Ω
出力音圧レベル 90dB/W/m
クロスオーバー周波数 1000Hz,5000Hz
最大外形寸法 215W×382H×205Dmm
重量 7.5kg(1本)


LS-11ESの写真
KENWOOD LS-11ES
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥56,000(2本1組)

1989年に,LS-11はモデルチェンジされLS-11ESが発売されました。型番は引き継いでいますが,かなり大
幅な改良・変更が施され,スピーカーユニットも変わり,大きさも重量もアップし,ユニット配置も変わるなど,ある
意味,別モデル・新開発ともいえそうな1台となっていました。

ウーファーは,19cmと口径は同じながら,振動板として新たに「クロスダイニーマ振動板」を採用していました。
「クロスダイニーマ振動板」は,ダイニーマ繊維とカーボン繊維を縦横順次配列した平織布と樹脂からなる振動板
で,ケンウッドが独自に研究・開発・熟成を続けてきたものでした。化学繊維ダイニーマは,比重0.96〜0.98と
水に浮くほど軽く,内部損失はカーボンの15〜20倍と紙に匹敵し,しかも強度は同じ重さの鉄の約8倍ほどと,
振動板素材としてすぐれた素材でした。弾性率の高いカーボン繊維と組み合わせることで,適度な内部損失と大
きな音速の両立が図られ,ピークのない滑らかな音色の振動板が実現されていました。

スコーカーは,8cm口径のセミドーム型が継承されていました。新たにドーム部とボイスコイルボビンを直結して
伝送ロスを抑えた構造が採用されていました。
トゥイーターは,1.6cm口径のドーム型という型式は同じで,新たにドーム振動板には,「クリスタルプラズマダイ
ヤモンド振動板」が採用されていました。「クリスタルプラズマダイヤモンド振動板」は,チタンの基材の表面に高硬
度,高ヤング率,高熱伝導率などの特性を持つダイヤモンド被膜をプラズマのエネルギーでイオンプレーティング
する技術を継承し,より常温でプラズマダイヤモンドの被膜ができるように改良が施され,基材に対する密着力が
高まり安定度や強度をさらに高めたものでした。

エンクロ−ジャーは,フロントバッフルが20mm厚,その他は15mm厚,高級感のある木目調仕上げで,全体的
に大きくなり,内容積も約55%アップしていました。ユニットの配置もセンター・インライン・レイアウトとなっていま
した。ユニットのフレームはすべてアルミダイカストの円形フレームで,中付けになっているため,外側にはネジが
見えないすっきりしたものとなっていました。スコーカーとトゥイーターのフレームは,球面波ホーンと称するショート
ホーンタイプの断面になっており,指向特性の改善が図られていました。バスレフ型のダクトは前面から背面に移
設され,内部の定在波の悪影響をキャンセルできる背面の縦方向のセンター位置に設置されていました。同時に
レベルコントロールも背面に移設されていました。
また,LS-11ESには,エンクロージャーの色がブラウンのLS-11ESとダークブラウンのLS-11ES(D)が発売
されていました。

LS-11ESとLS-11ES(D)

以上のように,LS-11ESは,LS-11を大幅に強化し,実力派の小型スピーカーとなっていました。さすがにサイ
ズがサイズだけに迫力の重低音という感じではありませんでしたが,中高域,音場感など本格派の再現能力を備
えた価格を超えた1台だったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



キレのある聴きごたえ。
サイズを超えて訴える力。


◎コンパクトながら,3ウェイ。
◎締まりのある低音を再生する
 新開発の19cmウーファー。
◎振動板の理想に限りなく近い素材,
 クロスダイニーマを採用。
◎例えばコーラスの
 ひとりひとりが見えてくる。
◎豊かな低音を生む,
 もうひとつの秘密は背面ダクト。
◎入力信号の劣化を防ぐ,
 分散配置ネットワーク。
◎ヌケがよりノリがいい中域を再現する
 硬質セラミックドーム型スコーカ−。
◎指向性と音像定位に優れた,
 球面波ホーンのツィーターとスコーカー。>
◎キレのある高域を再現する
 クリスタルプラズマダイヤモンド振動板の
 ツィーター。

●音の回析効果を低減するラウンドバッフルキャビネット
●ツィーター用連続可変型アコースティック・レベルコントロール>
●AV対応防磁型(EIAJ)
●バッフル板厚20mm,本体板厚15mmの不要振動を抑えた
 キャビネット
●信号の劣化が少ないリッツパターンプリント基板
●小型スピーカー専用別売スピーカースタンドSG-11




●SPECIFICATIONS●

型式 19cm3ウェイスピーカーシステム(防磁型・EIAJ)
エンクロージャー バスリフリックス
使用スピーカー 19cmコーン型ウーファー
8cmセミドーム型スコーカー
1.6cmドーム型ツイーター
再生周波数特性 45Hz〜50,000Hz
最大入力 130W(EIAJ)
インピーダンス 6Ω
出力音圧レベル 89dB/W/m
クロスオーバー周波数 1000Hz,5000Hz
最大外形寸法 228W×403H×275Dmm
重量 8.5kg


LS-11EXの写真
KENWOOD LS-11EX
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥60,000(2本1組)

1992年に,LS-11EXへとモデルチェンジされました。外観はLS-11ESとほとんど違いは分からないものの,
さらに各部の改良・強化が行われていました。

ウーファーは19cm口径クロスダイニーマユニットで同一のもので,スコーカーは振動板の材質・口径はほぼ同一
ながら,ドーム部の形状がサイクロイドカーブ(円が回転するときの,ある定点が描く軌跡として得られる曲線)によ
る新形状が採用され,指向性と立ち上がり特性の両立が図られていました。ボイスコイル径が5mmほど大きくな
り,背圧がスムーズに逃がせるエア抜きヨークが採用されていました。トゥィーターは,1.6cmと同一の口径なが
ら,振動板はチタン振動板になっていました。

LS-11EXの内部

エンクロージャーは,サイズは変わっていないものの,バッフル板は30mm厚,その他の部分は18mm厚と厚み
が増し,より高剛性なエンクロージャーとなり,全体の重量も増えていました。
ネットワークは,リッツパターンプリント基板,3ネットワーク分散配置が継承され,さらに,ドイツ製のフィルムコン
デンサーの採用など,パーツの面でも強化が行われていました。レベルコントロールは,接点減少,信号経路の
シンプル化などのため,省略されていました。また,入力端子は,バナナ端子対応の金メッキ入力端子にあらた
められていました。

以上のように,LS-11EXは,より強化された内容を持ち,音の面でも,従来の繊細さや分解能の良さに加えて
音の厚みや力強さが増し,非常にコストパフォーマンスにすぐれた1台となり,人気モデルとなりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介しま す。



サイズを超えた,豊かな音。
熟成の小型3ウェイ・スピーカーシステム。


◎レンジが広く音楽の描写力に優れた
 小型3ウェイ・スピーカーシステム
◎音像定位を明確にする球面波ホーンを採用の
 チタンドームツィーター&セミドームスコーカー
◎ミッドレンジを低ひずみでカバーする
 8cmセミドーム型スコーカー
◎低域再生能力をアップした
 新規設計の19cmウーファー
◎不要振動を排除した
 高剛性キャビネット
◎ピュアな信号をユニットに入力する
 分散配置ネットワーク

●リッツパターンプリント基板
●独製フィルムコンデンサー
●ラウンドバッフルキャビネット
●ツィーター・スコーカー・ウーファーに
 高剛性アルミダイキャストフレームを採用
●バナナ端子対応金メッキ入力端子
●AV対応防磁型(EIAJ)




●SPECIFICATIONS●

型式 19cm3ウェイスピーカーシステム(防磁型・EIAJ)
エンクロージャー バスレフレックス
使用スピーカー 19cmコーン型ウーファー
8cmセミドーム型スコーカー
1.6cmドーム型ツイーター
再生周波数特性 45Hz〜45,000Hz
最大入力 130W
定格入力
60W
インピーダンス 6Ω
出力音圧レベル 89dB/W/m
クロスオーバー周波数 1000Hz,5000Hz
最大外形寸法 228W×403H×276Dmm
重量 8.8kg


※本ページに掲載したLS-11,LS-11ES,LS-11EXの写真,
 仕様表等は1988年1月,1988年9月,1989年9月,1994
 年11月のKENWOODのカタログより抜粋したもので,ケンウッ
 ド株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
 無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので
 ご注意ください。

                        

★メニューにもどる        
 

★スピーカーのページ7にもどる

 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system