TRIO LS-606
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥80,000
1979年に,トリオ(現JVCケンウッド)が発売したスピーカーシステム。トリオは,パイオニア,サンスイとともにオーディオ御
三家と称された歴史あるオーディオブランドですが,どちらかというとアンプ,チューナーなどの回路技術,高周波技術などを
生かした製品が高く評価されていました。スピーカーも早くから取り組んでいましたが,ブランド的にはあまり評価を得られて
いませんでした。そうした中,「KLシリーズ」から「LSシリーズ」へと移行し,さらに「リニアレスポンス」を標榜した「LS-※0※
シリーズ」を展開して次第に定評を得ていくことになりました。当初,LS-101,LS-303,LS-505,LS-707といった奇数
ナンバーから始まった「LS-※0※シリーズ」は,新たに技術的に改良された偶数ナンバーのモデルが登場しました。それが
LS-202とLS-606でした。
ウーファー・LC-0070は,33cm口径のコーン型で,コーン紙には,ホットエアー・プレス(HAプレス)コーンが採用されてい
ました。通常,パルプコーンの製法には,加熱させた金型によりコーン紙をプレスするプレス法と,コーン紙を自然乾燥させ
るノンプレス法があります。物性面から見ると,プレスコーンは,ヤング率が高く,ロス(内部損失)が少なく,ノンプレスコー
ンは,逆にヤング率が低く,ロス(内部損失)が大きいという特徴があります。HAプレスコーンは,プレス法で用いられる金
型のかわりに,トリオ独自に開発したコーン紙に熱風を吹きつけることで成型するもので,プレスコーンとノンプレスコーンの
利点を兼ね備えることをめざしたものでした。こうしたHAコーンは,ヤング率とロス(内部損失)はプレスコーンとノンプレス
コーンの中間の特性をもち,剛性はより高いものとなっていました。また,コルゲーション入りとすることで剛性をさらに高め
ていました。 駆動系の磁気回路は,磁束密度10000ガウス,総磁束133000MAXWELLという強力なもので,パワーリ
ニアリティを高めるために,ツボ型ヨークとアルニコ鍛造マグネットが採用されていました。
ミッドレンジユニット・MC-0062は,13cm口径のコーン型で,センターサポート構造が特徴でした。ユニットのセンターキャ
ップのチャンバーにあたる部分にセンターポールを設け,振動板を支持する構造となっていました。これにより,振動板をエッ
ジ部とともに支えることで,振動板の分割振動を抑え,立ち上がり特性の向上が図られていました。磁気回路は,磁束密度
12000ガウス,総磁束53700MAXWELLという強力なものが搭載されていました。
トゥイーター・HH-0057は,音波の回析効果を利用したディフィラクションホーンを搭載したホーン型ユニットで,磁束密度
15000ガウス,総磁束27000MAXWELLの磁気回路に駆動された振動板により,105dB/W(1m)という高能率が実
現されていました。
エンクロージャーには,ホモゲンチップボードが使用されていましたが,コンピューターを用いてこのホモゲン材のヤング率と
ダンピングレシオを測定分析し,相反する両者を同時に満たす新しいホモゲン材を開発し,採用していました。さらに,ウー
ファーによるバッフル板の振動が,中高域ユニットに伝わらないようにするために,トゥイーター,ミッドレンジユニットの取り
付けられたバッフルの周囲にスリットを設け,ウーファーフレームによるバッフルの振動がこのスリットでストップする構造に
なった「音響シールド・バッフル」が採用されていました。
振動による相互干渉に加え,ネットワーク回路におけるウーファーの電流がトゥイーター,ミッドレンジへ漏れる「ネットワー
ククロストーク」を抑えるため,ウーファー用のコイルとトゥイーター用のコイルを遠隔配置し,アースラインの導体抵抗を少
なくするなどの対策がとられていました。また,内部配線材も,通常使用されていた線材を,複数用いて並列接続で使用
するなど,伝送抵抗の低減も図られていました。
以上のように,LS-606は,LS-202とともに「LS-※0※シリーズ」の第2世代として,技術的にも完成度を高めた内容を
もっていました。バランスのとれた音で高い評価を得ることとなったLS-202とデザイン的にも共通点が多く,ひとまわり大
きくしたかのようにも見えました。ウーファーの口径が大きくなっていることなどもあり,比較的音のバランスがとりやすい
LS-202に比べ,使いこなしはやや難しい面もありました。しかし,LS-202よりはるかに質感や風格のある外観から,刺
激は強くないものの,しっかりとした迫力ある熱い音を聴かせてくれる1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



クロストークに目を向けた,
リニアレスポンスを獲得した!

◎振動クロストークを追放した
 音響シールドバッフル
◎電気的クロストークを
 追放したネットワーク回路
◎ロスが多くヤング率が高い
 新・音響ホモゲン材
◎剛性が高くピストンモーション
 帯域の広いホットエアー・プレスコーン
◎鋭い立ち上がり
 センターサポート・スコーカー




●LS-606定格●


●ウーファーLC-0070

型式 33cmコーン型
再生帯域 fo〜2,500Hz
出力音圧レベル 93dB/W(1m)
インピーダンス 8Ω
磁束密度 10,000GAUSS
総磁束 133,000MAXWELL



●スコーカーMC-0062

型式 13cmコーン型
再生帯域 120Hz〜15,000Hz
出力音圧レベル 92dB/W(1m)
インピーダンス 8Ω
磁束密度 12,000GAUSS
総磁束 53,700MAXWELL



●ツイーターHH-0057

型式 ディフィラクションホーン型
再生帯域 2,500Hz〜20,000Hz
出力音圧レベル 105dB/W(1m)
インピーダンス 8Ω
磁束密度 15,000GAUSS
総磁束 27,000MAXWELL



●総合

型式 33cm3ウェイ方式
エンクロージャー バスレフ方式ブックシェルフ型
再生帯域 32Hz〜20,000Hz
最大入力 120W
定格入力 80W
インピーダンス 8Ω
アコースティックレベルコントロール MID±2dB3ステップ
HIGH±3dB3ステップ
出力音圧レベル 92dB/W(1m)
クロスオーバー周波数 900Hz 5,000Hz
寸法 390W×710H×323Dmm
重量 29.5kg
※本ページに掲載したLS-606の写真,仕様表等は1979年11月
 のTRIOのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社
 に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,
 引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

                        
 

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