TRIO LS-707
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥89,000
1977年に,トリオ(現JVCケンウッド)が発売したスピーカーシステム。トリオは,戦後すぐの1946年に春日無線電機商会
として創業し,その後パイオニア,サンスイとともにオーディオ御三家と称された歴史あるオーディオブランドですが,どちらか
というとチューナーなどの高周波技術を生かした製品が高く評価されていました。スピーカーも早くから取り組んでいましたが
ブランド的にはあまり評価を得られていませんでした。そうした中,「KLシリーズ」から「LSシリーズ」へと移行し,さらに「リニア
レスポンス」を標榜した「LS-※0※シリーズ」を展開して次第に定評を得ていくことになりました。そうした「LSシリーズ」の最
上級機として,また当時のトリオの最上級機として発売されたのがLS-707でした。
LS-707は,「LSシリーズ」の中で最大で,かつ唯一のフロア形システムとして作られていました。基本的には,コーン型ユニッ
トとホーン型ユニットから構成された3ウェイのバスレフ形システムで,「リニアレスポンス」と称する通り,パワーリニアリティを
はじめとして,物理特性を正攻法で追求したトリオの力作でした。
ウーファーは,33cm口径のコーン型で,カナダ産クラフトパルプを素材にしたCFコーンをベースに,コーン紙の素材が再生レ
スポンスに与える影響を考慮して,酸化チタンをコーティングした白いコルゲーション入りコーンとして仕上げられていました。
コーン紙を支えるエッジは,断面が非対称のS字型をした反共振の少ないエステル系発泡ウレタンエッジが採用されていまし
た。さらに,ダンパー,フレーム,トッププレートに囲まれた空気室の空気がリニアリティを阻害しないように,ダンパー,フレー
ム間に通気孔を設け,再生レスポンスの平坦化と第3次高調波歪の抑制を図っていました。
駆動系は,パワーリニアリティを阻害する要因に対して本質的に問題を解決するために,ツボ型ヨークとアルニコ鍛造マグネッ
トが採用されていました。プレートとポールピースの対向面積が等しく磁束分布が均一なため,マグネットの磁力を最も効果的
に高めることができ,これに強力な磁力を持つアルニコ鍛造マグネットの組み合わせにより,強力な均一磁界が確保され,一
段とパワーリニアリティが高められていました。
スコーカーは,12cm口径のコーン型で,強力な均一磁界が得られるツボ型ヨークとアルニコ鍛造マグネットをウーファーと
同様に採用していました。ボイスコイルインダクタンスを抑え,きわめてフラットな再生レスポンスが確保されていました。
スコーカーには,バックキャビティが設けられ,このバックキャビティには比重2.3というレジンコンクリート系の材質に木材
のチップを混入し,適度な内部ロスをもたせた特殊樹脂が採用され,有害な振動が抑えられていました。
トゥイーターは,ホーン型で,音波の回析効果を利用したディフィラクションホーンが採用され,指向特性の改善が図られてい
ました。振動板には,一般に使われるドーム型ダイヤフラムではなく,スーパージュラルミンを成型したV字状のリング型ダイ
ヤフラムが搭載されていました。リング型ダイヤフラムは,駆動面からエッジまでの距離が短くなるため分割振動の生じる周
波数が高くなり,高域共振が起こりにくく,ピストン振動帯域から分割振動帯域への転移がスムーズでフラットな特性が得ら
れる特性が実現されていました。さらに,V字型ダイヤフラムには外周部に小さなV字型のエッジが設けられ,リニアリティが
改善されていました。駆動系は,磁気回路に15,000ガウスの高磁束密度をもつ80φ20mmのフェライトマグネットが採用
され,ポールピースとマグネットの間の空気室には音の反射を防ぎ,ダンピング特性を改善するため,ミクロン・グラスウール
が装填されていました。
トゥイーターとスコーカーのレベルコントロールには,リッツ線を使用したステップダウン式アッテネーターが搭載されていまし
た。これは,当時一般的に多く使われていた可変型アッテネーターが,しぼっていくとアンプ,スピーカー間の直流抵抗分が
増加し,ダンピングファクターを低下させてしまう特性もつのに比べ,ダンピングファクターの劣化が少なく,過渡応答特性に
すぐれた特性をもっていました。
フロア型の堂々たるキャビネットは,バッフル面を3.25度傾斜させた形状で,さらに,ウーファーを床から極力離すことによ
り,フロア型として床に設置したときの,音の反射や吸収の影響を抑えていました。
バスレフダクトは,断面積を徐々に拡大するテーパードダクトが採用されていました。低域のチューニングに有利なテーパー
ドダクトにより,設置場所の影響を抑え,スケール感ある低域再生が実現されていました。
以上のように,LS-707は,「LSシリーズ」最上級機として,シリーズ唯一のフロア型として,スケール感ある音が実現されて
いました。55Hz〜16kHzの出力音圧偏差を±2dBに抑えるという「リニアレスポンス」を標榜するだけあり,バランスのとれ
た音という美点もあり,この後のLSシリーズでのトリオのスピーカー分野での躍進につながる一歩だったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音のスケールを追った,
広ダイナミック・レンジを得た。

◎すぐれた再生レスポンスの
 ツボ型ヨークウーファー
◎強力均一磁界のスコーカー
◎分割共振を起こさない
 V字状リングダイヤフラム
◎逆起電力を抑えるステップ
 ダウン式アッテネーター
◎3.25度の傾斜バッフルが
 位相特性を改善
◎すぐれた音響マッチング
 テーパードダクト
◎有害振動を抑えたレジンコンクリート
 のバックキャビティー




●LS-707定格●


●ウーファーLC-0068

型式 33cmコーン型
再生帯域 fo〜2,700Hz
出力音圧レベル 93dB/W(1m)
インピーダンス 8Ω
磁束密度 10,000GAUSS
総磁束 145,000MAXWELL



●スコーカーML-0061

型式 12cmコーン型
再生帯域 400Hz〜10,000Hz
出力音圧レベル 97dB/W(1m)
インピーダンス 8Ω
磁束密度 13,500GAUSS
総磁束 48,900MAXWELL



●ツイーターHH-0056

型式 リング振動板ディフィラクションホーン型
再生帯域 3,000Hz〜20,000Hz
出力音圧レベル 104dB/W(1m)
インピーダンス 8Ω
磁束密度 15,000GAUSS
総磁束 28,400MAXWELL



●総合

型式 33cm3ウェイ方式
エンクロージャー バスレフ方式フロア型
再生帯域 25Hz〜20,000Hz
出力音圧偏差 ±2dB(55Hz〜16kHz)
最大入力 100W
定格入力 60W
インピーダンス 8Ω
アコースティックレベルコントロール MID±2dB3ステップ
HIGH±3dB3ステップ
出力音圧レベル 93dB/W(1m)
クロスオーバー周波数 1,300Hz 6,500Hz
寸法 440W×910H×404Dmm
重量 43kg
※本ページに掲載したLS-707の写真,仕様表等は1977年11月
 のTRIOのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引
 用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

                        
 

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