LS-M7の写真
KENWOOD  LS-M7
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥65,000

1989年に,ケンウッドが発売したブックシェルフ型スピーカーシステム。ケンウッドは,1980年代のスピーカー
における,いわゆる「598戦争」に,LS-990シリーズを投入 し,改良・強化を重ねながらモデルチェンジを行っ
ていきました。そうした「598戦争」が一段落した1989年に,次の90年代に向けて発売された中級機の主力
モデルが,LS-M7でした。

LS-M7は,LS-990シリーズ,特に前モデルともいえるLS-990HGに比べて,エンクロージャーの小型化が
行われ,それにともない,ウーファーユニットも小径化されるなど,中級機として無理のない設計となり,ある意
味,さらりと肩からやや力の抜けた設計となったともいえました。音的にも,このクラスとして欲張らず,音楽を
聴く道具として無理のない作りへと移行していました。
基本的には小型3ウェイという形にまとめられていましたが,音の滑らかなつながりやフルレンジスピーカーシス
テムに通じる音像定位の良さを求めて,ワイドレンジ化されたスコーカーを中心に,その上下の帯域をトゥイー
ターとウーファーで補強するという構成になっていました。

ウーファーは,27cm口径のコーン型で,エンクロージャーサイズ,下限再生周波数,能率などから,バランス
を考え,LS-990シリーズよりも小口径化されていました。振動板にはクロスダイニーマ振動板が採用されて
いました。クロスダイニーマ振動板は,ダイニーマ繊維とカーボン繊維を縦横順次配列した平織布と樹脂から
なる振動板で,ケンウッドが独自に研究・開発・熟成を続けてきたものでした。ダイニーマ繊維は,オランダの
DMS社と日本の東洋紡が開発した超高強度(同重量の鉄の約8倍)の有機系繊維で,水より軽く,カーボンと
同程度の音速を持ち,紙に匹敵する内部損失を持つというもので,弾性率の高いカーボン繊維と組み合わせ
ることで,適度な内部損失と大きな音速の両立が図られ,ピークのない滑らかな音色の振動板が実現されてい
ました。さらに,表と裏に異なるクロスダイニーマを使用した複合積層構造となっていました。この複合積層構造
のクロスダイニーマ振動板をロングボイスコイルと強力な磁気回路で駆動し,強度が高く背圧の抜けのよいアル
ミダイキャストフレームで支える構造がとられていました。

LS-M7のウーファー LS−M7のスコーカー

スコーカーは,9cm口径で,コーン型とドーム型の複合型となったセミドーム型が採用されていました。コーン
部には,ウーファーと同じクロスダイニーマが使用され,ドーム部には,トゥイーターと同じ「クリスタルプラズマ
ダイヤモンド振動板」が使用され,上下の音のつながりにも配慮されていました。「クリスタルプラズマダイヤモ
ンド振動板」は,チタンの基材の表面に高硬度,高ヤング率,高熱伝導率などの特性を持つダイヤモンド被膜
をプラズマのエネルギーでイオンプレーティングする技術を継承し,より常温でプラズマダイヤモンドの被膜が
できるように改良が施され,基材に対する密着力が高まり安定度や強度をさらに高めたものでした。ダイヤモ
ンドとチタンの複合材であるため共振点を持たず,強く,軽く適度な内部損失などのすぐれた特性も確保され
ていました。ドーム部は,ボイスコイルと一体化して伝送ロスを低減したDSD(ダイレクト・スーパー・ドーム)構
造が採用され,能率,高域再生限界周波数を改善していました。さらに,アルミダイカスト球面波ホーンバッフ
ルを採用して,振動板からの音の反射,干渉,回析を低減し,すぐれた指向性,音場定位を実現していました。

LS-M7のトゥイーター

トゥイーターは,2.5cm口径のドーム型で,ドーム振動板には,「クリスタルプラズマダイヤモンド振動板」が
採用されていました。さらに,トゥイーターユニットには「DICA(ダイレクト・インナークラスA・サスペンション)構
造が採用されていました。「DICA構造」は,振動板,ボイスコイル,エッジを一体化したもので,接着部がない
ことから軽量かつ伝達ロスがなく剛性が高いなどの特性が確保され,上下から弾性体を圧縮しバイアスを加
えたサスペンションを採用することで,対称性がよく,リニアリティが高められていました。また,このサスペンシ
ョンがトッププレート内部にあるため,エッジ部からの音の放射も抑えられていました。トゥイーターにもスコー
カーと同様に,アルミダイカスト球面波ホーンバッフルが採用され,自然な音の拡がりが実現されていました。

エンクロージャーはコンパクト化され,全面投影面積が小さく抑えられたことで,音像定位の向上が図られて
いました。フロントバッフルは,20mm厚の板材を2枚貼り合わせた積層構造で40mm厚の分厚いバッフルと
され,側板,天板,底板は18mm厚,裏板は20mm厚として,各部の振動モードを変えることで,自然な響き
が確保されていました。また,バスレフポートを背面に設けた背面バスレフ方式が採用され,中高音への影響
を抑えていました。
ネットワークは,高音用,中音用,低音用にそれぞれ専用のネットワーク回路が設けられ,分散配置すること
で,スピーカーユニットからの振動や音圧,磁気誘導やコイル,コンデンサーなどから発生する磁気誘導の干
渉を極力低減していました。

以上のように,LS-M7は,LS-990シリーズの技術を継承し,後継機的なモデルとして発売されましたが,そ
の音の方向性は大きく変わり,LS-990シリーズの特性の良さを前面に出した,一種すごみを備えた音から
より自然な響きを追求した穏やかな音になっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



シルキーな肌触り。
なめらかでスケールの大きな再現音。


なめらかさ,繊細さ,味わい深さ。本物の質感を語るときに用いられるこれら
の言葉が,これほどまでにしっくりなじむスピーカーがあったでしょうか。
LS-M7・・・・このスピーカーが紡ぎだす音色を,
「シルキーな肌触りの音楽」と呼んだのは,そんな理由があったからです。
心の奥から楽しんでください。



●LS-M7の定格●

型式 27cm3ウェイスピーカーシステム(防磁型・EIAJ)
エンクロージャー バスリフレックス
使用スピーカー 27cmコーン型ウーファー
9cmセミドーム型スコーカー
2.5cmドーム型ツイーター
再生周波数特性 28Hz〜47,000Hz
最大入力 200W(EIAJ)
インピーダンス 6Ω
出力音圧レベル 91dB/W/m
クロスオーバー周波数 300Hz,6500Hz
最大外形寸法 324W×578H×369Dmm
重量 24.0kg(1本)


※ 本ページに掲載したLS-M7の写真,仕様表等は1989年9月
 のKENWOODのカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
 転載,引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意く
 ださい。


 

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