ALPINE/LUXMAN LV-107u
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥135,000
1989年に,ラックスがALPINE/LUXMANブランドで発売したプリメインアンプ。ラックスは,1984年
に「Brid」の名のもとに,真空管とFETのハイブリッドというユニークな方式のプリメインアンプLV-105
を発売し,高い評価を得ていました。この後LV-105uへと続き,さらに,その後継機として発売された
のがLV-107uでした。

LV-107uの最大の特徴は,上述のようにともに電圧制御素子である真空管+MOS FETというハイ
ブリッドであることでした。音の鮮度を損なう電流歪に対する根本的な改善策として,FETを初段差動回
路に,3極真空管6CG7を2段目差動部に,そして音質的に評価の高いMOS FETをパワーステージ
に投入し,すべての信号経路を電圧制御増幅によるハイインピーダンス回路で構成していました。



真空管を採用したことで,初段入力回路はPチャンネル型FETで対応できるため,Nチャンネル型に比
べてゲートリーク電流などの点で有利になっていました。FETには,ハイゲイン・ローノイズ型FETである
2SJ75を採用しており,ブートストラップ,カスケード接続で入力インピーダンスをさらに高め,周波数特
性を向上させていました。
入力部にFET差動,2段目に真空管による差動回路を搭載することで,増幅基準点の明確化がなされ
ていました。カレントミラー+真空管差動の回路構成として,明確な基準点をベースにした増幅が行われ
精度の高い情報伝達が可能となっていました。

パワーステージ(出力段)には,電圧制御素子であるパワーMOS FETを採用し,強力な電源部とあい
まって105W+105W(6Ω)の出力を実現していました。インピーダンスの高い素子であるMOS FET
は,バイポーラトランジスターに見られる入力電源の蓄積効果もなく,高速素子であるため,クロスオー
バー歪も抑えられていました。



電源部は,250VAの容量をもつ大型のトランスを採用し,パワー段への電源供給は総容量32800μF
の高性能ブロックコンデンサーを採用して,ローインピーダンス化を図っていました。また,各ブロックごと
にピュアな電源を確保するために,2次巻線はパワー部,ドライバー部,フォノイコライザー部など,5つの
独立巻線を取り出し,相互干渉を抑えていました。さらに,高い応答性をもつ高精度レギュレーター回路
を随所に配し,安定した電源供給を実現していました。
真空管のヒーター電源を定電流回路として,AC電源の変動がヒーターに及ぶのを防ぎ,通常の定電圧
駆動のラッシュカレント(瞬間的に大電流が流れること)から真空管を守るようにしていました。また,ヒー
トアップレベルを微調整することで,真空管6CG7を最良の動作条件にチューニングしていました。

「S.T.A.Rサーキット」も特徴として継承されていました。「Signal Transit for Accurate Response」
の略で,各増幅段へ送り込む給電ラインやアースラインをあえて共有化せず,各ステージへダイレクトに
供給するようにしたもので,各回路の共有インピーダンスが徹底的に排除されていました。そして,この
考え方を電源回路からさらに信号経路にまで拡大し,各入力信号の共有部分として扱われやすい信号
系アースラインを,アンプステージの増幅基準点まで単独化し,基準点から各回路ブロックと信号経路へ
直接ラインを引くことで,スムーズな信号の流れを実現し,干渉歪みの低減とSN比の改善がなされてい
ました。


フォノアンプは,ローノイズFETとハイスルーレイト・オペアンプにより構成されており,MMとMCに対応
したローノイズ・ハイゲイン・イコライザーで,差動検出レギュレーターの使用とあいまってアナログディス
クに対してすぐれた性能を実現していました。
入力は,フォノ1系統の他,TUNER,CD,LINE2系統,TAPE2系統が搭載されていました。LINE2系
統は,AV1,AV2と称して映像入力も装備され,AV機器にも対応していました。AV1は,映像,音声と
も出力が可能となっていました。そして,AV2からAV1へのダビングも可能となっていました。また,AV2
の入力は,フロントにも装備され,フロント/リアの切替えが可能となっていました。映像信号系には,AV
機器間のインピーダンスマッチングを図るため,広帯域ビデオバッファー回路が内蔵され,大型モニター
に接続してもハイクオリティな映像の送り出しができるようになっていました。TAPE端子2系統も2→1の
ダビングが可能となっていました。

機能的には,BASS,TREBLE独立で,OFFも可能なトーンコントロール,ラウドネス,グラフィックイコラ
イザー等が接続可能なプロセッサー入出力端子,CD入力に関して,ファンクションスイッチ,トーンコント
ロール,バランスなどの回路をすべてバイパスして最短距離でパワーアンプに送るCDストレート機能が
装備されていました。

以上のように,LV-107uは,真空管とMOS FETのハイブリッド構成という,ラックスならではの個性を
感じさせるアンプでした。耳当たりの良さを持ちつつ現代的な新しさも感じる音は,ラックスらしい魅力を
もったものでした。


ALPINE/LUXMAN LV-104u
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥89,000


LV-107uの弟機としてLV-104uも発売されていました。回路構成,機能等ほぼ同一で,外観上は,サイ
ドウッドがないという違いで,電源部,出力等,やや規模が縮小された作りになっていました。音質の傾向
はほぼ継承されており,コストパフォーマンスにすぐれた1台となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



LV-107u

音楽表現の壁を越えたか。
真空管+MOS FETの独創。

◎真空管とMOS FETを随所に投入し
 のびのある芳醇な音質を実現
◎パワーMOS FETによる高品位なパワー
◎明確な増幅基準点,あいまいを許さぬ音楽表現
◎大型電源トランスと高精度レギュレーター回路
◎真空管を保護する定電流ヒーター回路
◎奥行きのある音楽表現,STARサーキット
◎ローノイズ・ハイゲイン・イコライザー内蔵
◎映像にも高品位をつらぬくAV入出力対応
◎CDの音質をダイレクトに聴くCDストレート



LV-104u

真空管+MOS FETで高品位な
音楽再生を追求した充実機。

◎みずみずしい音楽表現に寄せるハイブリッド構成
◎多彩なAVソースに対応
◎音を純化するSTARサーキット
◎音楽再生機としての資質を随所に

●アナログディスクの持ち味を引き出す
 ローノイズ・ハイゲインイコライザー
●音質重視の230VA大型スーパー
 レギュレーショントランスを搭載
●AC電源の変動がヒーターに及ぶのを防ぐ
 定電流ヒーター回路
●より鮮度の高いCD再生が楽しめる
 CDストレート機能




●主な定格●


   LV-107u  LV-104u
定格出力 105W+105W(6Ω) 80W+80W(6Ω) 
全高調波歪率 0.008%以下(6Ω,1kHz) 0.008%以下(6Ω,1kHz) 
入力感度/インピーダンス  PHONO(MM) 2.5mV/47kΩ
PHONO(MC) 150μV/100Ω
CD,TUNER,LINE 150mV/47kΩ 
PHONO(MM) 2.5mV/47kΩ
PHONO(MC) 150μV/100Ω
CD,TUNER,LINE 150mV/47kΩ  
SN比(IHF) PHONO(MM) 90dB
PHONO(MC) 70dB
CD,TUNER,LINE 110dB
PHONO(MM) 90dB
PHONO(MC) 70dB
CD,TUNER,LINE 110dB 
周波数特性 PHONO(MM/MC) 20Hz~20kHz(±0.3dB)
CD/TUNER/LINE 1Hz~200kHz(-3dB)
AV1/2 10Hz~6MHz(-3dB)
PHONO(MM/MC) 20Hz~20kHz(±0.3dB)
CD/TUNER/LINE 1Hz~200kHz(-3dB)
AV1/2 10Hz~6MHz(-3dB) 
消費電力 185W 170W 
外形寸法 470W×158H×355Dmm 438W×148H×353Dmm 
重量 14.4kg 10.2kg 
 ※本ページに掲載したLV-107u,LV-104uの写真,仕様表等
は1990年1月の
ALPINE/LUXMANのカタログより抜粋した
もので,ラックス株式会社
に著作権があります。したがって,これら
の写真等を無断で転載・引用等
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