LV-109の写真
ALPINE/LUXMAN LV-109
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥198,000

アルプス電気とラックスが作ったニューブランドALPINE/LUXMANが1986年に発売した高級プリメインアンプ。
このブランドは非常にユニークなアンプを作っていましたが,第1弾の真空管・MOS FETのハイブリッド構成のア
ンプLV-105,103に続いて,第2弾として出されたのが,世界初のD/Aコンバーター内蔵型アンプLV-109で
した。

CDプレーヤーの発売によりデジタルオーディオの時代が到来して3年,当時,多くの技術者がD/Aコンバーター
をアンプと直結した構成を理想と考え,D/Aコンバーター内蔵型アンプを開発していました。その商品化第1号機
が,このLV-109でした。まさに世界初のD/Aコンバーター内蔵型アンプで,このモデルの発売以降,このタイプ
のアンプのブームが巻き起こりました。

LV-109に内蔵されたD/Aコンバーターは,PLL回路により32kHz〜48kHzの任意のサンプリング周波数に対
応して,入力から得られるクロックを処理してタイミングパルスを発生するタイプで,原理的にビートの発生のない復
調回路を構成していました。デジタルフィルターは,2倍オーバーサンプリングの80次直線位相FIR型フィルターで
構成され,後段のローパスフィルターは,低次のチェビシェフ型で対応し,信号が能動素子を通らない非通過型とし
て位相特性等を向上させていました。

LV-109のパーツ他

LV-109の2つ目の大きな特徴は,スイッチングスピードが速く,動作領域のリニアリティに優れるMOS FETを積
極的に採用し,全段FETによる電圧制御増幅回路によるパワーアンプ部を持つことでした。初段の差動増幅回路に
は,ローノイズ型の接合型FETを採用し,これを受けるプリドライバー段,ドライバー段,そしてファイナルステージに
いたるまで,MOS FETを使用していました。以上のような電圧制御増幅回路は,コントロール信号に電流ファクタ
ーが必要とされず,各増幅段間でのインピーダンスが遮断され,各増幅段が干渉しないという特質も備え,MOS 
FETならではの高品位な音を実現していました。
LV-109では,LV-105,103系とは異なり,高品位であると同時にハイパワーをも追究し,大容量な電源トランス
や高速スイッチング特性を持つダイオードなどを採用した強力な電源回路により180W+180W(6Ω)の出力を得
ていました。終段は50W出力まではMOS FETでスピーカーを駆動し,50Wから180Wのパワー領域では,ハイ
ゲインのバイポーラ型パワートランジスタが駆動する切換式になっていて,高品位な音とダイナミックな音を両立させ
る設計になっていました。

機能的には,すべての入力信号が入力セレクター以外のすべての機能をジャンプしセレクターからパワーアンプへと
直結され音の鮮度を向上させる「ラインストレートスイッチ」が備えられていました。特にデジタル入力では,デジタル
ダイレクトスイッチでデジタルアナログ変換の後すぐにパワーアンプへと直結され,D/Aコンバーターを内蔵する構
成のメリットを生かせるようになっていました。また,逆にAV等の多彩な楽しみ方に対応して,多彩な入力端子を備
え,デジタル入力はもちろんラインレベル入力6系統,TAPE入出力端子を3系統,映像用入力を4系統そなえ,さら
に,外部にサラウンドプロセッサー,グラフィックイコライザー,AVセレクターなどの多彩な外部エフェクター機器を接
続できる「シグナルプロセッサー端子」を備えていました。このシグナルプロセッサー端子は,前面のスイッチで外部
エフェクターを機能させたりバイパスしたりできるようになっていました。また,3系統のテープデッキ間での相互のダ
ビング,あるいは,2系統のビデオデッキ間での映像を含めた相互のダビングも可能になっていました。高品位な映
像ダビングのために,ビデオバッファーアンプも内蔵されていました。

LV-109+LE−109

LV-109のもう一つの大きな特徴は,信号が微弱で他の入力系の影響も受けやすいフォノ入力をセパレート化した「フ
ォノセパレート思想」でした。より高品位なアナログディスク再生を狙って,フォノアンプをセパレート化した構成は,プリメ
インアンプの新しい構成を提案するLV-109の姿勢を示すものでもありました。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


Digital Direct Amp
BECΛ(ラムダベック)に秘められた正体とは。
オーディオコンポーネントを変革する謎が,ついに解き明かされる。

デジタル対応の定義を変革する,第1の謎
   MOS FET導入にまつわる,第2の謎
         フォノ再生に関する,第3の謎

第1の解明
デジタル・ダイレクト・カップリング・コンセプト。
第2の解明
MOS FETによる電圧制御増幅の考え方。
第3の解明
アナログ・コンセプトも尊重する,フォノ・セパレート思想。

このテクノロジーを読み進むうちに,
オーディオの意識革命が進行する。

◎CD,DATなどのデジタル信号を
 ダイレクト・カップリング。
◎オーバーサンプリング・デジタルフィルター,
 高性能D/Aコンバータ。
◎デジタルのクオリティをありのまま再現する,
 MOS FET採用全段FET回路。
◎ピークマージンの高いPCMサウンドに応えきる
 180W+180W(6Ω)出力
◎フォノ再生にあらたなスポットを当てた
 「フォノ・セパレート思想」。
◎音質最優先の思想が生んだ
 「ライン・ストレート・スイッチ」。
◎各種エフェクターをラインに組み込める
 「シグナル・プロセッサー」。
◎AVシーンを彩る多彩な機器を接続できる,
 豊富な入出力端子。
◎ビデオ,テープデッキ相互間で
 自由自在にダビングできる,フルダビング機能。
●LV-109 SPECIFICATION●


定格出力 180W+180W(6Ω,20Hz〜20kHz)
150W+150W(8Ω,20Hz〜20kHz)
高調波歪率
(LINE-SP)
0.009%
周波数特性 5Hz〜200kHz(−3dB,LINE STRAIGHT)
入力感度 150mV(LINE)
S/N比 110dB(IHF A,LINE STRAIGHT)
ダンピングファクター 200(1kHz)
電源 100V 50/60Hz
消費電力 330W
外形寸法 438W×165H×460Dmm
重量 20kg



LE-109の写真
ALPINE/LUXMAN LE-109
STEREO PHONO AMPLIFIER ¥80,000

同じく1986年に,LV-109に引き続いて発売されたのが,フォノイコライザー・アンプのLE-109でした。LV-109
専用としてだけでなく,高性能なフォノイコライザー・アンプとして高い評価を受けました。

微細な信号であるフォノ入力を扱うフォノイコライザーアンプでは,電源に含まれるリップル(変動)成分などの影響
を受けやすいため,LE-109では,左右チャンネル間の相互干渉を防ぐため,電源トランスから左右を完全に独立
分離させたツイン・モノ・サーキットという構成になっていました。
また,フォノ入力は2系統搭載されていましたが,それぞれ独立したフォノアンプとして構成され,PHONO1入力は
MCカートリッジ専用,PHONO2入力はMC/MM両用のアンプ構成となっていました。それぞれの入力端子には
金メッキが施され,接点での音質劣化を抑えていました。

LE-109のパーツ他

PHONO1入力は,MC専用とすることで,アンプ入力でのセレクタや切換機能を排除し,MCカートリッジからの入力
をダイレクトにアンプへとつなげるシンプルな「MCストレート回路」構成として,MCカートリッジの音を生かすようになっ
ていました。アンプ回路も,信号系路がシンプル化できるハイゲイン・イコライザー方式を採用していました。
LE-109のアンプ回路は,初段にローノイズ・ハイGmの接合型FETを採用して高SN比を実現し,さらにバランスドPP
回路の採用により低歪率を実現していました。また,電源回路,信号回路において,給電ラインやアースラインを共有
しないことで,各回路の共有インピーダンスを排除したラックス自慢の「S.T.A.R.サーキット」を採用していました。
また,LE-109は。3段階のゲイン切換/3段階のインピーダンス切換/2段階のアッテネーターを備え,これらの組
み合わせにより,カートリッジへの広い対応性を備えていました。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


フォノへの限りない追究に応える
フォノ・セパレート・アンプ思想。
◎ひたすらフォノ再生に徹する,
 フォノ・セパレート・アンプ思想。
◎左右独立構成のツイン・モノ・サーキット。
◎それぞれフォノ・アンプを抱く2系統の入力。
◎デリケートなMC型の魅力をそのままに伝える,
 MCストレート回路。
◎ローノイズ,低歪率を誇る回路設計。
◎あらゆるカートリッジとベスト・マッチングするための
 ゲイン/インピーダンス/アッテネーター。
◎限りない表現力を秘めたフォノ再生。
 これを支える,S.T.A.R.サーキット。
 
●LE-109 SPECIFICATIONS●

 
定格出力 150mV
高調波歪率 0.005%(1kHz,1V出力時)
入力感度 PHONO1 160μV
PHONO2 2.5mV(0dB),220μV(20dB),80μV(32dB)
入力インピーダンス PHONO1 100Ω
PHONO2 47kΩ(MM)
        3Ω,40Ω,100Ω(MC)
SN比 PHONO MM 95dB(MM,1V出力)
PHONO MC 80dB(MC STRAIGHT,1V出力)
周波数特性 20Hz〜20kHz
クロストーク 85dB
電源 100V 50/60Hz
消費電力 25W
外形寸法 438W×63H×310Dmm
重量 4.5kg
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 

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