MICRO 1500
FULL CHOICE PLAYER ¥120,000〜
1983年にマイクロが発売したプレーヤーシステム。これまで
SX-8000,
RX-5000と
いったアナログマニア垂涎の超弩級機を作り上げてきたマイクロが,その構造や技術を
受け継ぎつつより身近(といっても高価ではありますが・・・)なものにしようとしたもので
自分の求める性能や仕様に合わせ,各パーツを選んで組み合わせられる「フルチョイ
ス」が大きな魅力でした。
マイクロ1500シリーズの最大の特徴は,完成品のシリーズではなく,上記したように,
様々なパーツ群からなり,「フルチョイス」の名の下,各パーツを選んで組み合わせて1つ
のプレーヤーシステムを作り上げていく点にありました。そのため,最も価格を抑えれば
アームレスで12万円でまとまり,最高の組み合わせにすると40万円以上になりました。
まず,ターンテーブルを載せるベースフレームRB1500(重量をベースにして各パーツを選ん
でいくようになっていました。RB1500は特殊コンパウンドといっても,比重2.5と金属
なみに重く,しかも大きな内部損失を備えたものでした。
このフレームには,特殊形状のゴムと円錐形コイルスプリングを組み合わせた4個のサ
スペンションが取り付けられており,このサスペンションは硬さを調整することが可能と
なっていました。また,取り外して金属ブロックによるリジッドポールR15に付け替えるこ
ともできるようになっていました。
ターンテーブルは通常タイプ2種類,吸着タイプ2種類の計4種類が用意されていました。
通常タイプは,重量2.8kgのアルミ製RT2000A(ゴムシート付属),重量8kgの砲金製
RT2000Gがあり吸着タイプは,吸着シャフトとポンプユニットがセットとなったアルミ吸着
ユニットMK91Vと砲金吸着ユニットMK91VGがありました。RT-2000Aを除いては,タ
ーンテーブルシートなしで使い,ディスクスタビライザーを使ってレコードのスリップを止める
ことを前提としてはいましたが,好みで使うシートも用意されていました。また,砲金製ター
ンテーブルにした場合イナーシャが大きくなることから,フレーム側の重量を増すための重
量8kgのデッドウェイトユニットRW1500も用意されていました。
モーターユニットはシンクロナスモーターのRY1500AとDCサーボモーターのRY1500D
が用意されていました。このモーターユニットは,使い方が2種類選べ,ベースフレームと
連結して使用するジョイント式とベースフレームと離して使うリモート式ができました。全体で
一体型となるジョイント式,モーターユニットベースRS1500Uを追加してベースフレームと
はセパレート構造と音や使い勝手で選べる楽しみがありました。
ターンテーブルの駆動方式は基本的にベルトドライブ方式ですが,SFベルト,ケプラー糸
等から選ぶことができ,これにより音の違いを楽しむことができました。
アームマウントも取り付けたいアームに合わせて,AX-1G〜AX-9Gを選ぶことができ,ロン
グアーム,レギュラーサイズアームと様々なアームが使用できました。また,それでも適合しない
場合は,特注加工で注文することもできました。
この他にも,ストロボスコープMST-305とストロボライトMSL-204,手を置くハンドベースHB-15
慣性を増して回転をより安定させるハイスピードイナーシャHS-80,アクリル製ダストカバーC-853
自社製アームなど豊富なオプションが用意されていました。
中でも,プレーヤー全体を載せるオーディオベースは高価ながら非常に効果的なオプションだったよ
うです。オーディオベースBA-50は,全体が鋳鉄製で,プレーヤーのベースフレームを置く場所には
ガラスプレートが置かれ,モーターユニットが置かれる場所には金属製プレートが置かれた構造でと
なっていました。モーターユニットが置かれる金属製プレートは調整ダイヤルの操作で微妙にスライド
させることができ,糸やベルトのテンションをダイヤル操作で調整できるようになっていました。4カ所
のインシュレーターはコイルスプリングと空気バネを併用したもので,付属のエアーポンプで空気圧を
調整して使えるようになっていました。このオーディオベースを使用する際には,プレーヤーのベース
フレームのサスペンションをリジッドポールR-15に交換することが通常の使用方法でした。
以上のように,1500シリーズは,アナログプレーヤーを構成するパーツ群といった設計思想で,ユー
ザーが自由度高くプレーヤーシステムを作り上げられるという,アマチュアライクな楽しみを提供した
マイクロらしいものでした。CDが登場した1983年に,あえてアナログの楽しさを提案したそのパーツ
群は魅力的なもので,そこで作り上げたシステムが提供する音は,ソフトなものからハードなものまで
軽やかな音から重厚な音まで,非常にバリエーションも広く,メーカー製の完成度の高い自作プレー
ヤーといってもいい,印象的な1台でした。