LUXMAN MQ-50
STEREO POWER AMPLIFIER ¥300,000
1983年に,ラックスが発売した管球式パワーアンプ。ラックスは,真空管アンプの時代からすぐれたアンプを開発・
発売し,トランジスターアンプの時代になっても,独自の魅力を持つアンプを作り,高い評価を得ていました。そして,
そうしたラックスが,CD時代になり発売した管球式パワーアンプの最高級機がMQ-50でした。

1982年,真空管アンプにすぐれた製品を送り出していたラックスが,真空管の安定入手が難しくなったため,企業と
しての真空管アンプの生産に終わりを告げると発表しました。しかし,そんなラックスは,ソ連,中国,アメリカ,ヨーロッ
パなど全世界的なスケールで安定した真空管の供給を受けられる道を探し,アメリカのGE(General Electoric)社
に行き着いたということでした。当時GE社は,軍需用,通信用を主体として民生用の真空管まで自社内で生産し,技
術開発も行っている企業で,これにより,ラックスは高品質の真空管の確保が可能となり,1983年に,管球式パワー
アンプ・MQ-50を発売しました。

MQ-50は,出力回路を固定バイアス6550A/Xプッシュプルで構成した50W×2のステレオパワーアンプとしてつく
られていました。6550A/Xは,オーディオ用出力管としてメジャーなKT-88のベースモデルとなった5極ビーム出力
管で,この当時,アメリカ製の管球式アンプでは最もよく使われている真空管でした。

MQ-50では,この6550A/Xを,3極管に近い特性(等価内部インピーダンスが低い)で,5極管に匹敵する出力が
取り出せるUL(ウルトラ・リニア)接続で使用していました。そして,高信頼性の出力管6550A/Xの性能を引き出せ
るよう,新しくUL接続用の出力トランスを開発・搭載し,できる限り不要な回路を排除したシンプルな回路構成として
設計されていました。UL接続が理想的な動作状態になるように新開発された出力トランスOY15-Z4Kは,S・G(スク
リーン・グリッド)用タップを取り出す位置を綿密に割り出し,捲き線比が30%となる位置に設定し,さらに,プッシュプ
ル動作のバランスが完全にとれるように設計されていました。そして,この出力トランスの周波数特性は,プレート側
で100kHzまで伸び,同時にS・G用タップでも100kHzまでフラットに伸びているというものでした。

初段には,双3極管12AU7A/7030を採用し,-電源による差動増幅プッシュプル回路を構成して,位相反転を行
いながら必要なゲインを得ていました。ドライバ段との間は直結回路として,音質劣化の要因となる位相補正回路を
除去しながら高い低域安定性を確保していました。
ドライバ段は,双3極管6AQ8/7024を使ったプッシュプルの増幅回路で,出力段との対応関係を巧みに利用して
歪みを打ち消すように設計され,裸特性の向上を図り,NFBの依存度が大きく減らされていました。また,このドライ
バ回路が出力段を十分にドライブするため,ドライバ段の負荷となる出力段の入力回路の実質的なインピーダンス
を上げる工夫が施されていました。
上述のように,MQ-50は,裸特性を向上させ,軽いNFBをかけるという設計が行われていました。出力段でカーソ
ルNFBとメジャーNFBをバランスし,トータル8.5dBときわめて軽いNFBですませていました。これは,多段にわた
って多量のNFBをかけることで過渡特性が悪化することを避けるため,出力段のカソードNFBを併用し,軽微なメ
ジャーNFBですませるという設計でした。

電源部は,電源トランスに十分に余裕のある大容量のものを搭載し,構造的には,初段の-電源用を専用捲き線
とするとともに,厳重に定電圧化して電源電圧変動に対する影響を抑えていました。ツェナーダイオードのブリッジ
接続で両波整流し,ダイオードから発生するノイズ,AC電源からの外来ノイズをチョークを使用してシャットアウトし
ドライバー段の6AQ8のプレート電圧は,ツェナーダイオードを3つシリーズ接続することにより安定化していました。

デザイン的には,素材のもつ良さを引き出した高級感のあるものとされていました。化粧シャーシは,前面6mm厚
上面4mm厚のアルミ押し出し材のゴールド仕上げとされ,モデル名などの文字は打刻で仕上げられていました。
放熱効果を考慮したボンネットも,部分的にパンチングを施したモスグリーン仕上げのものが採用されていました。

以上のように,MQ-50は,ラックスの真空管アンプで積み上げてきた技術が生かされた完成度の高いパワーアン
プでした。いわゆるノスタルジックな真空管アンプらしい音をめざしたというものではなく,現代的な設計で,高出力を
実現し,グッドバランスともいえる音となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



星の数ほどの言葉より,「球だから」と,ひとこと

繊細でいて重厚。
音楽の不思議に,ひととき酔いしれる。

GE社との出会い・・・安定して,信頼性の高い真空管の名品を。

音楽の核心,あざやかに。・・・MQ-50

◎高信頼出力管6550A/Xを採用
◎新開発のUL接続用
 出力トランスOY15-Z4K
◎全段プッシュプル構成の採用
◎音質向上のためのNFB回路
◎充実した電源部




●MQ-50 SPECIFICATIONS●

使用真空管  6550A/X(4),12AU7A/7030(2),6A8Q/7024(2)
実効出力  50W+50W(8Ω,1kHz,両ch,同時動作) 
全高調波歪率  0.1%以下(1kHz,1W),1%以下(1kHz,50W) 
周波数特性  10Hz~30,000Hz(-1dB以内.1W) 
入力感度  1V 
入力インピーダンス  100kΩ 
SN比(IHF-A補正)  100dB以上 
付属装置  電源の極性を管理できるライン・フェーズ・センサ 
電源電圧  AC100V(50Hz/60Hz) 
消費電力  200W(電気用品取締法の規定による) 
寸法・重量  410W×175H×250Dmm・18.3kg 
※本ページに掲載したMQ-50の写真,仕様表等は1983年9月のLUXMAN
 のカタログより抜粋したもので,ラックス株式会社に著作権があります。した
 がって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられて
 いますのでご注意ください。

  
 
 
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