MICRO MR-711
DIRECT DRIVE DISK PLAYER ¥71,000
1972年に,マイクロが発売したプレーヤーシステム。マイクロ精機は,長岡精機宝石工業(現在のナガオカ・・レコー
ド針で有名)の社員だった小宮康策が1961年に創業したブランドで,トーンアームやカートリッジでスタートしました。
やがてターンテーブルの製造を始め,1965年には,国産初の8極シンクロナスモーターを搭載したリムドライブ方式
のターンテーブル,M-8Pを発売し,その後,MB-800など,MBの型番をもつベルトドライブ方式のターンテーブル
そしてMRの型番を持つレコードプレーヤーを発売し,ベルトドライブ方式のプレーヤーで評価を高めていきました。
1970年代に入り,テクニクスのSP-10の登場以来訪れたDD(ダイレクトドライブ)方式の流行の中で,マイクロも
DD方式のターンテーブル,プレーヤーシステムを展開していきました。そうした機種の原点がMR-711でした。
MR-711は,上述のようにDD方式の採用が大きな特徴でした。ベルトドライブ方式の時代,マイクロはアナログプ
レーヤー専業ブランドとして,高い評価を得て,トップブランドの一つとなっていました。DD方式の時代に入り,マイク
ロの技術力を示したのがMR-711でした。そこには,プレーヤーづくりで積み重ねた確かな技術やノウハウが投入
されていました。
ターンテーブルは,直径31cm,重量2kgのアルミダイキャスト製のものが搭載されていました。慣性モーメントは,
260kg・cmに達し,真円度±1/1000mm,軸受けの精度±2/1000mmという,マイクロならではの高精度な
作りになっており,回転精度,SN比を高めていました。
このターンテーブルを,DCサーボモーターでダイレクトドライブ方式で駆動していました。直流(DC)方式のサーボモ
ーターであるために,交流式(AC)に比較して,効率が高く,消費電力が少ないなどの利点がありました。さらに,電
磁振動によるSN比の劣化が抑えられ,モーター自体の温度上昇も少ないなどの特徴もあり,多くのDD方式ターン
テーブルでは,回転の制御も容易なDCサーボモーターが採用されていました。
MR-711のもう一つ大きな特徴として,ダイキャストフレームを用いた,剛性の高い重量級のキャビネットがありまし
た。当時の同社のプレーヤーや他社の多くのプレーヤーがウッドキャビネットを採用していたのに対し,MR-711は
業務用機を思わせる精悍なダイキャストのキャビネットが採用されていました。特に,モーターとトーンアームを支え
るフレームとシャーシの役目をするトップパネルは,アルミダイキャストであることを生かして,要所に補強のリブの入
った高い剛性を持つ作りで,さらに,トーンアームの共振の防止のためにデッドニング用の鉛を裏面に追加していまし
た。サイドパネルもしっかりとした厚みのあるアルミダイキャストでした。底板は,ダイキャストではありませんでしたが
厚みのある木製の板で厚さ1mmのパンチングメタルをサンドイッチしたトータル厚さ10mmもの底板で,共振をカットし
再生音の濁りを防いでいました。キャビネットを支える脚部は,防振効果の高いゴム脚で,ハウリングをしっかり抑え,
高さを変えることもできるようになっていました。
パワー,ストップ,回転数切り換えの各操作系は,キャビネット上部の前端部に配置され,フェザータッチのマイクロスイ
ッチが搭載され,軽い操作感が実現されていました。33,45回転の速度チェックには,メーター方式が採用され,回転
数に比例してメーターが左右に振れる分かりやすいものとなっていました。速度検出コイルに発生した電圧を整流して
直流に変換し,工業用計測機等に用いられているモノリシックオペレーショナルICアンプで直流増幅を行って表示する
仕組みになっていました。フロントパネルが開閉式になっており,そこに装備された各回転数独立式の微調整ツマミで
±6%の範囲で回転数を調製できるようになっていました。規定速度は,メーター上の0に指針を合わせることでできる
ようになっていました。また,このパネル内には,スタイラスブラシ,カートリッジを取り付ける小型ドライバー,ヘッドシェル
EP盤用アダプターが収納できるようになっていました。
トーンアームは,単売もされていたMA-202(L)が搭載されていました。スタティックバランス方式のS字型ユニバーサ
ルアームで,有効長252mmのロングタイプでした。回転部分軸受けは,超精密アンギュラー型ベアリングとマイクロ独
自のピボットの組み合わせになっており,垂直感度5mg以下,水平感度10mg以下を実現していました。パイプの材質
仕上げ精度も特に考慮され,制動材の使用などで,低域共振,局部共振のきわめて少ない設計となっていました。高さ
調整は,6mmの範囲内で可能で,ワンタッチレバー式となっており,レコード演奏中に調整もできるというものでした。
M-7000 V-7000/F
MM CARTRIDGE ¥14,800 CD-4用交換針 ¥9,000
MR-711には,MM型カートリッジのM-7000が標準装備されていました。カートリッジ自体の内部インピーダンスを低
く抑え,比重の小さい高エネルギー積の特殊マグネットを採用するなど,すぐれた性能を実現していました。また,当時,
オーディオ界は4ch時代を迎えており,マトリクス(RM,SQ)4ch,ディスクリート(CD-4)4ch再生を考慮に入れた設計
で,厳しい位相管理も行われ,再生周波数帯域も45kHzまで確保されていました(CD-4方式は,アナログレコードの
音溝の片側の音域を50kHzまで拡大し,ここにFM放送のステレオ方式と似た方法で2チャンネル分をカッティングする
もので,周波数特性の上限は15kHzに制限されるものの,セパレーションがFMステレオ放送並みに確保されていまし
た。反面,カートリッジの高域特性が最低でも45kHz以上,理想は50kHz以上が必要でした。)。さらに,軽合金パイプ
カンチレバーと針先ダイヤモンドの質量を減少させるために特に開発された0.15角のダイヤブロックから磨きだしたPM
針で,より高域再生特性を強化したCD-4用交換針V-7000/Fも発売されました。
以上のように,MR-711は,アナログプレーヤー関係の専業ブランドマイクロらしく,積み重ねてきた技術,ノウハウをしっ
かり投入した完成度の高いプレーヤーシステムでした。独自の精密加工技術が生かされたその作りは,プロ用機を思わ
せる精悍なデザインにも表れているように,使いやすく,安定した再生能力を実現していました。
また,MR-711に搭載されたターンテーブル部はMD-700として単売もされ,専用のソリッドベースMW-7も発売される
など,また別のプレーヤーシステムとして作り上げることも可能となっていました。
MD-700 MW-7
DIRECT DRIVE PHONO MOTOR ¥44,800 SOLID BASE ¥19,500
MA-202
TONEARM ¥15,800
ダイレクトドライブ・レコードプレーヤー MR-711
◎DCモーターによるダイレクトドライブ方式
◎重量2kgのアルミダイキャストターンテーブル
◎メーター方式による回転速度チェック
◎プッシュ・ターン式速度微調コントロール
◎フェザータッチのコントロールボタン
◎フレッシュな配色と仕上げのアルミダイキャストパネル
◎高さ調整のできるアブソーバー
◎質量の高い底板
超高感度トーンアーム MA-202(L)
低歪率プレゼンス溢れるカートリッジ M-7000
(4チャンネル再生にも性能を発揮します)
●主な規格●
■MR-711■
ターンテーブル | |
駆動方式 | D・Cサーボモーターによるダイレクトドライブ方式 |
回転数 | 33・1/3,45r.p.m. |
ターンテーブル | アルミダイキャスト 31cm,2.0kg |
消費電力 | 100V,10W |
回転ムラ | 0.04%以下 |
SN比 | 58dB以上 |
トーンアーム(MA-202L) | |
型式 | スタティック・バランス型 |
有効長 | 252mm |
オーバーハング | 15mm |
オフセットアングル | 21° |
最大トラッキングエラー | 1.5°以下 |
適合カートリッジ重量 | 4〜16g(追加ウェイト付9〜21g) |
針圧可変範囲 | 0〜3g |
カートリッジ(M-7000/e) | |
周波数特性 | 5〜45,000Hz 5〜50,000Hz(V-7000/F) |
出力バランス | ±0.5dB(1kHz) |
チャンネルセパレーション | 30dB(1kHz) |
出力電圧 | 3.5mV(1kHz,3.54cm/sec) |
負荷抵抗 | 45〜50kΩ |
最適針圧 | 1.5g |
針先 | 0.3×0.8ml だ円ダイヤ針 |
コンプライアンス | 30×10−6cm/dyne |
自重 | 5g |
交換針 | V-7000/e(だ円ダイヤ針) ¥5,900 V-7000/F(CD-4用 PMダイヤ針) ¥9,000 |
取付寸法 | JIS又はEIA |
総合 | |
寸法 | 498W×171H×422Dmm |
総重量 | 13kg |
■MD-700■
駆動方式 | D・Cサーボモーターによるダイレクトドライブ型 |
回転数 | 33・1/3,45r.p.m. |
ターンテーブル | 31cm 2kg |
消費電力 | 100V 10W |
回転ムラ | 0.04%以下 |
SN比 | 58dB以上 |
回転微調範囲 | 規定速度に対して±6% |
寸法 | 343W×375D×124Hmm |
重量 | 6.5kg |
■MW-7■
寸法 | 585W×420D×95Hmm(ダストカバー除く) |
重量 | ベース9.5kg ダストカバー1.7kg |
■MA-202■
型式 | スタティック・バランス型 |
全長 | 335mm |
有効長 | 237mm |
高さ調整範囲 | 44.5mm〜57.5mm (モーターボード面よりカートリッジ取付面まで) |
オフセット角 | 21度50 |
オーバーハング | 15mm |
トラッキングエラー | 1.5度以下 |
適合カートリッジ(自重) | 4〜16g(追加ウェイト付9〜21g) |
針圧可変範囲 | 0〜3g直読(1回転) |
インサイドフォースキャンセラー | 針圧対応式 |
後部最大長 | 87mm |
※本ページに掲載したMR-711の写真・仕様表等は1973年1月の
MICROのカタログより抜粋したもので,マイクロ精機株式会社に著
作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等
をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
★メニューにもどる
★アナログプレーヤーPART6のページにもどる
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。↓