NS-500の写真
YAMAHA  NS-500
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥55,000

1976年に,ヤマハが発売したスピーカーシステム。同社のスピーカーの名声を確立したともいえるNS-1000/
1000Mの発売の2年 後に登場したNS-500は,その型番からも分かるように,NS-1000シリーズの技術を受
け継いだ弟機的モデルとして発売された1台でした。

NS-500は,3ウェイ密閉型のNS-1000シリーズに対して,2ウェイバスレフ型にまとめられていました。同社と
してはNS-1000シリーズに次いで2番目にベリリウムドームユニットを搭載したスピーカーシステムでした。デザ
イン的には,全体の配色,ユニットのデザイン等,うまくイメージを受け継いだ感じになっていました。

NS-500とNS-1000M

トゥイーターは,NS-1000シリーズで開発されたベリリウム振動板の3.0cm口径のドーム型ユニット・JA-0516
が搭載されていました。ベリリウムは,ハードドームユニットに使われる金属系素材の中でも,比重が小さく,高い剛
性と硬度を持つというもので,ハードドーム型振動板としてかなり理想的な特性を備えていました。特に音の伝播速
度について非常にすぐれていました。高純度(99.99%)のベリリウムをLSIの製造にも用いられていた電子ビーム
真空蒸着によって真空中で直接ドーム型振動板に成形したもので,化学的にに活性なベリリウムに5ミクロンの厚さ
のコーティングが施されていました。
トゥイーターのベリリウム振動板は直径23mm,わずか30mgという超軽量で,耐熱処理を施したアルミリボン線エッ
ジワイズ巻きボイスコイルが直結され,粘弾性樹脂と熱硬化性樹脂を二重コーティングした特殊繊維のタンジェンシャ
ルエッジに支えられ,可聴帯域を超えた高いリニアリティを実現していました。磁気回路には,90φ−45φ−22tと
いう大型のフェライトマグネットを採用し,磁束密度17,500が確保され,ていました。さらに,エッジ背面のセンター
ポールに穴を設け,エッジ部の空気を後部に逃がす構造となっており,センターポールににはテーパーをつけること
で,ボイスコイル背後の空間での空気の共振もシャットダウンして,振動系の動きのリニアリティを高めていました。
これらの効果により,foが850Hzと低くなり,クロスオーバー周波数1,800Hzに対して十分な余裕が生まれ,ウー
ファーとのスムーズなつながりも実現されていました。

NS-500のトゥイーター NS-500のウーファー

ウーファーは,25cm口径のコーン型が搭載されていました。長年のノウハウをもとにじっくり検討され開発された特
製コーン紙を使ったパルプコーンで,使用帯域上限までピストンモーション領域を維持できるコニカルタイプに仕上げ
られていました。ボイスコイルは,占有率の高い銅リボン線エッジワイズ巻きのショートボイスコイルで,ボイスコイル
ボビンには,220℃の耐熱性をもつデュポン社のノーメックスを使用し,高い耐入力特性を確保していました。また,
このボイスコイルボビンには,空気穴を数カ所設けて,ボビン内外の空気圧が均等になるようにして,スムーズでリニ
アな動作が確保されていました。磁気回路は,55φ×35hの大きなアルニコマグネットを使用した強力なものが搭
載され,磁束密度8,500ガウスが確保されていました。また,センターポールには銅キャップが装着され,磁気歪み
を抑えていました。エッジは発泡ウレタンのロールエッジが採用され,ダンパーも材質と含浸剤を新しいコーン紙に合
わせて吟味されていました。フレームはテーパーのついた厚いアルミ製のしっかりしたものが採用されていました。

ネットワークは,コイルに,直流抵抗の少ない断面積の大きなホルマル線(ポリエステル系合成樹脂皮膜の銅線)を
使用した空芯コイルが使用され,フェライトなどのコア入りのものに比べ磁気歪みがきわめて低く抑えられていまし
た。コンデンサには,音の良いMMタイプのものが使用され,ネットワークの部品配置も厳密に検討して組まれ,振
動の影響を抑えるために樹脂で完全にモールドされていました。背面には,−∞〜+1dBの連続可変タイプのレベ
ルコントロールが搭載され,アッテネーターは大型のハイパワー対応のものが採用されていました。

NS-500の内部

エンクロージャーは,バスレフ型で,従来より10%高密度な針葉樹パーティクルボードが新たに採用され,箱鳴き
を抑えた堅牢な構造に仕上げられていました。板厚が十分にとられ各所に補強が施され,ユニットの肉厚のアルミ
フレームとあわせて不要な共振の影響を抑えていました。

以上のように,NS-500は,上級機のNS-1000シリーズの技術やノウハウを随所に継承し,モニターとは称してい
ないものの,フラットでリニアな波形特性を実現し,実際,バスレフ型の採用もあり,軽快でクリアな音に仕上げられ
ていました。人気モデルNS-1000Mの陰に隠れたためか,地味な存在となってしまったモデルでしたが,しっかりし
た音を持った実力機でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ベリリウムの音
突きつめた「充実度」
というものが
どれほどのものなのか
あらためて
問い直さざるを得ないだろう
ベリリウムの可能性


●NS-500の定格●

使用スピーカー ウーファー JA-2508・25cmコーン型
ツィータ   JA−0516・3.0cmベリリウムドーム型
最大許容入力 60W
音圧レベル 91dB/W/m
周波数特性 40Hz〜20kHz
インピーダンス 8Ω
クロスオーバー周波数 1.8kHz
ネットワーク 2ウェイ,12dB/oct
レベルコントローラー 連続可変型
エンクロージャー バスレフ型/黒塗装
外形寸法 335(W)×610(H)×338(D)mm
重量 19.3kg


※本ページに掲載したNS-500の写真,仕様表等は1976年5月
 のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,
 引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

                        
 

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