YAMAHA NS-670
NATURAL SOUND SPEAKER SYSTEM ¥45,000
1973年に,ヤマハが発売したスピーカーシステム。ブックシェルフ型キャビネットにソフトドームスコーカーとトゥイーターを搭
載した3ウェイ構成で,前年にビクターから発売されたSX-3と同様に白木のキャビネットが目を引きました。また,当時ヤマハ
が展開していたNS-600シリーズ(NS-690(¥60,000),NS-650(¥33,000),NS-630(¥27,000)NS-620
(¥21,000)がありました。)の中で,NS-690に次ぐ2番手のスピーカーシステムでした。
ウーファーユニット・JA-2501Aは,25cm口径のコーン型で,強靱で適度な内部損失をもつコーン紙が採用されていました。
コーン紙は浅い円錐形コーンに成形され,スコーカーとのつながりがスムーズになるようにしていました。
ボイスコイルは,磁気効率の良い銅リボン線をエッジワイズ巻きにしたロングボイスコイルで,直径66mmの大口径ボビンに巻
かれていました。絶縁材,接着剤なども耐熱性と放熱にすぐれたものが使用され,温度上昇も1.6℃/Wと小さく抑えられてい
ました。磁気回路も大型のフェライトマグネット使用の強力なものが搭載されていました。
スコーカーユニット・JA-0601は,6cm口径の新開発のソフトドーム型で,振動板に布に熱硬化性の樹脂と粘弾性のコム系
樹脂を二重にコーティングした材料を用い,タンジェンシャル型のエッジ部とを一体に熱成形したものでした。適度な内部損失を
持ち,高域限界周波数付近でのあばれがなく,バックキャビティを設け,foを280Hzと低くとっているため,再生周波数帯域内
では,平坦な周波数特性とインピーダンス特性が確保されており,ウーファー,トゥイーターとのスムーズなつながりが実現され
ていました。大口径のフェライトマグネットを用いた強力な磁気回路により,振動系のQ(0.5)を下げ,過渡特性の改善が図ら
れていました。指向特性も,高域クロスオーバー周波数6000Hzで,60°までの特性が軸上0°特性とほとんど変わらないくら
いのすぐれた特性が実現されていました。
トゥイーターユニットJA-0509は,NS-690と共通で,口径3.0cmのソフトドーム型ユニットで,スコーカーと同系統の材質を
使用し,2重コーティングやタンジェンシャル型エッジとの一体成型など製法も同一ですが,小さい口径に合わせて,ドーム本体
を薄手にし,薄くなった分強度を増すためにより深いドーム形状に仕上げられていました。ボイスコイルは,軽量で導電率に優
れる純アルミリボン線をエッジワイズ巻きにし,軽量化のため,ボイスコイルボビンレス構造で振動板直結とされていました。磁
気回路には80φ−40φ−20t,有効空隙磁束密度15,500ガウスの強力なフェライトマグネットが搭載され,エッジ背面の
アウターポールに空気穴を設け,エッジ部の空気を逃がしてエッジの動きをスムーズにしてリニアリティを高めていました。また
アコースティックディフューザーを設け,指向特性の改善を図るとともに,振動板のプロテクターとしても生かされていました。
ネットワークは,NS−690と共通の,クロスオーバー800Hz,6000Hz(12dB/oct)に設定されていました。LCの定数は,
NS-690と異なり,ウーファーに使用されているLCは,4.5mH,47μFとなっていました。コイルは,直流抵抗を下げ,パワー
ロスを防ぐため,フェライト系ボビンを使用し,各コイルが直角をなすように配置され,誘導による特性変化を抑えていました。
コンデンサーも,特性の良いMP(メタライズドペーパー)コンデンサーが使用されていました。
また,スコーカーとトゥイーターには, NS-1000M,NS-690と同様に,−∞〜+3dBまで連続可変タイプのレベルコントロー
ラーが備えられていました。
エンクロージャーは,完全密閉型で,バッフル板と裏板は25mm厚パーチクルボード,側板と天板は20mm厚の合板を用いて
いました。さらに,ウーファー取付穴の上部に25mm厚の合板をくりぬいた強固な補強材を渡したほか,各部に補強が施されて
いました。エンクロージャーの仕上げは,NS-690と同様にキャストール(栓)オープンポア仕上げで,当時非常に新鮮な明るい
デザインでした。スピーカーユニットのフレームは,アルミダイキャストフレームが用いられ,共振による音質劣化を抑えていまし
た。
以上のように,NS-670は,NS-600シリーズの2番手の機種として,上級機のNS-690をスケールダウンされたといったス
ピーカーシステムでした。外観上もNS-690に非常によく似ており,技術的にも共通点が多いスピーカーでした。音的には,バ
ランスのとれた音楽を楽しく聴かせる音をもち,上級機とは違った軽やかさは独自の魅力をもっていたと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



豊かな重低音,立地でさわやかな中高音
ブックシェルフの本格派!!

◎音楽性豊かな再生音をより深く追求
◎重低音再生を可能としたウーファー
◎さわやかな音質とすぐれた指向性をもつスコーカー
◎ハイエンドにリッチな高音を再生するツィーター
◎細心設計のネットワーク
◎共振皆無,小型で斬新なエンクロージュアー




●NS-670の規格●

使用スピーカ ウーファー JA-2501A・25cmコーン型 
スコーカー JA-0601・6.0cmソフトドーム型 
ツィーター JA-0509・3.0cmソフトドーム型
最大許容入力 50W
音圧レベル 88dB/W/m
周波数特性 40Hz〜20,000Hz
最低共振周波数(fo) 45Hz
インピーダンス 8Ω
クロスオーバー周波数 800Hz,6000Hz
ネットワーク 3ウェイ・12dB/oct
レベルコントローラー 中・高音,連続可変型
エンクロージャー 密閉ブックシェルフ型
キャストールオープンポア仕上
外形寸法 320(W)×577(H)×272(D)mm
重量 19kg
※ 本ページに掲載したNS-670の写真・仕様表等は,1973年8月
 のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著
 作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますので ご注意ください。

★メニューにもどる        
 

★スピーカーのページ8にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system