YAMAHA NS-V1000YST
ACTIVE SERVO SPEAKER ¥396,000(2台1組)
1991年に,ヤマハが発売したスピーカーシステム。ヤマハは,1988年にAST(Active Servo Technology)
方式の専用プロセッサーを内蔵したアンプとスピーカーのセット・AST-1を発売し,コンパクトなスピーカーから驚
くほどの低音再生能力を発揮するスピーカー・システムとして高い評価を得ました。そして,このAST方式の専用
回路(プロセッサー)をスピーカー側に搭載したシステムも開発され,同時にAST方式は,ヤマハ独自のシステム
ということで,YST(Yamaha active Servo Technology)という名称となりました。1990年に,YST方式の
ブックシェルフ型システムNS-500YSTが発売され,翌年,より大型のフロア型システムとして発売されたのが
NS-V1000YSTでした。

キャビネットの容積とポートの大きさをある条件に合わせると,キャビネット内の小振幅を大きな振幅の音圧とし
て能率よくポートから取り出すことができるヘルムホルツレゾネータ理論を具現化しエアウーファーを実現したの
がYSTでした。YSTにより,ユニットとしてのウーファーは不要で,ポート内の空気がそのまま振動板のはたらき
をし,これをエアウーファーと称していました。エアウーファーは,エッジやダンパーなど振幅を制限する要素がな
く,駆動源となるスピーカーユニットも小振幅のため,振幅歪みなどの各種の歪みも非常に少なくなっていました。
また,エアウーファーの低域再生能力は,キャビネット容積とポートの大きさの相対比率で決まるため,キャビネッ
トの小型化,エアウーファーの小口径化が容易に実現でき,使いやすさや音像定位,音場表現力の向上も実現さ
れるというものでした。YST方式は,バスレフ方式を理想的に実現しようとするものですが,バスレフ方式では,ス
ピーカーの低域振動にはボイスコイルにインピーダンスをもつことで限界が生じてしまいます。このボイスコイルの
インピーダンスを打ち消す回路=負性抵抗回路により超低域までリニアな駆動が可能となるというのがYST方式
のもう一つの効果でした。

NS-V1000YSTは,トールボーイ型のフロア型システムに見えますが,小型2ウェイスピーカーとYST方式の
スーパーウーファーをインラインセンター配置で垂直に積み上げ一体化した構成になっていました。型番に「V」
の文字が含まれているように,当時,ヤマハとしては,AV(Auidio Visual)時代に対応したスピーカーシステムと
して開発され,画面と合わせた際の音像定位,音場表現力,人の声のクリアな再生としっかりとした低域再生能
力などをめざした設計となっていました。

スーパーウーファー部は,トールボーイ型のエンクロージャーに,フェライトマグネット使用の20cm口径のスプル
ース素材のコーンをインラインで2台登載した構成で,小口径ユニット2台とすることで,十分な音圧を得ながら定
位の向上も図っていました。そして,YST方式を採用することで,24Hzという低域再生を実現していました。ポート
部には,なめらかな素材をエッジレスで採用し,スムーズな低域再生を実現していました。
スーパーウーファー部には,専用のアンプが搭載されていました。同社のYST方式のスーパーウーファーの最上
級機YST-SW1000/1000Lに搭載されているものと同一の120Wのハイパワーアンプで,低域の出力レベル
が調整可能となっていました。また,ハイカット周波数が固定となっているため,回路のシンプル化が可能となり,
クオリティの向上が実現していました。



上部の小型2ウェイスピーカーの部分は,密閉型のエンクロージャーに,16cmウーファーと3cmトゥイーターとい
う構成になっていました。
ウーファーは,NS-10Mと同系の白いシートコーンが採用されていました。通常コーン紙は初めからコーン型に抄
き上げる抄き上げコーンが大半を占めていますが,ここで採用されたシートコーンは,1枚のシート状につくられた
コーン紙を後からコーン型(円錐形)に成型する方法で作られたもので,高圧のプレスで作られる高密度のシートを
素材にしていることで,密度や厚みのムラが少なく,軽量でバインダーの量が少ない強度の高いコーンとなり,クリ
アでキレがあるとともに,自然素材による温かみもある音質を実現していました。さらに,このシートコーンを,中域
を重視したカーブド・タイプとしていました。
トゥイーターは,チタンをベースにベリリウムを蒸着したドーム型で,振動系を磁気回路に直接取り付け,キャビネッ
トにダイレクトにマウントするフレームレス構造がとられていました。また,ボイスコイルと振動板を一体成形し,銅ク
ラッドアルミリボン線をエッジワイズ巻で採用し,振動系の軽量化と不要振動の排除,聴感S/Nの向上が実現され,
30kHzまでの高域再生を可能にしていました。
そして,2ウェイ部のウーファーとトゥイーターを駆動する磁気回路には,それぞれ13000ガウス/15000ガウスの
強力なアルニコマグネットが採用され,クリアでなめらかな再生を実現していました。


YAMAHA NS-C1000
SPEAKER SYSTEM ¥78,000(1台,スピーカー台付)


また,上部の2ウェイスピーカーの部分は,小型2ウェイスピーカーシステムとして,NS-C1000の型番で単売もさ
れていました。

キャビネットは,26mm厚の高密度パーティクルボードが採用され,強固なキャビネットとしていました。外装には,
鳴りの美しい樺材を使用していました。また,2ウェイ部はスラント形状により,内部定在波を抑えていました。

以上のように,NS-V1000YSTは,小型2ウェイスピーカーとスーパーウーファーを一体化したというユニークな
構成とYST方式から,ワイドレンジな音を実現していました。特にしっかりとした低域と,クリアな明るい音は,AV
用途を考慮したものでしたが,音楽観賞用としても有効なもので,実際,オーディオシステム用として使った方も
多くいたようです。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



AV再生に必要な
低音再生・音像定位・音場表現力,
すべてが,あまりにも違います。

◎小型2ウェイとYSTスーパーウーファを一体化。
 AVのための新しいスタイル。
◎音楽の臨場感や映像のリアリティを
 しっかりと支える,YSTスーパーウーファ搭載。
◎YSTスーパーウーファに部には
 120Wハイパワーアンプを搭載。
◎AV音声の主役人の声を美しく再生する
 白いカーブド・シートコーンウーファ採用。
◎30kHzの高域まで美しく伸びきる
 ベリリウムドームツイータを採用。
◎アルニコ&フェライトマグネットの
 組み合わせで,力強く繊細な音質。
◎定在波を防ぐキャビネット形状。




●NS-V1000YST主な規格●

型式 2ウェイ密閉+YSTスーパーウーファ防磁型
ユニット 20cmスプルースコーン型スーパーウーファ×2
16cmカーブド・シートコーン型ウーファ
3cmベリリウム・ドーム型ツィータ
再生周波数帯域 24Hz~30,000Hz(-10dB)
ポート口径  7.7cm 
出力音圧レベル 92dB/W.m
インピーダンス  6Ω 
クロスーオーバー周波数 120Hz,3kHz
最大入力 120W
スーパーウーファ・アンプ出力  120W(1台) 
外形寸法 295W×1101H×326Dmm
重量 38kg(1台)




●NS-C1000主な規格●

型式 2ウェイ密閉防磁型
ユニット 16cmカーブド・シートコーン型ウーファ
3cmベリリウム・ドーム型ツィータ
再生周波数帯域 60Hz~30,000Hz(-10dB)
出力音圧レベル 92dB/W.m
インピーダンス  6Ω 
クロスーオーバー周波数 3kHz
最大入力 120W
外形寸法 225W×370.6H×276.7Dmm(SP台付)
重量 11kg(1台・SP台付)


※ 本ページに掲載したNS-V1000YST,NS-C1000の写真・仕様表等
 は,1992年9月のYAMAHAカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会
 社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

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