Nakamichi OMS-40
COMPACT DISC PLAYER ¥138,000
1986年に,ナカミチが発売したCDプレーヤー。ナカミチは,1984年にCDプレーヤーの1号機として
OMS-70,OMS-50を発売し,音質の良さで評価を得ていました。1986年には,その第2世代とな
OMS-70ⅡOMS-50Ⅱを発売しました。その弟機として発売されたのがOMS-40でした。

OMS-40の最大の特徴は,D/Aコンバーター部に続くアナログ部のシンプル化を実現することによる
音質の向上をめざした新開発のデグリッチングシステムにありました。当時の一般的なCDプレーヤー
のD/Aコンバーター部に続くアナログ部は,サンプルホールド回路→アナログローパスフィルターという
構成になっていました。D/Aコンバーターから出力されるアナログ信号には,「グリッチ」と呼ばれるデジ
タルノイズが乗っており,サンプルホールド回路によってグリッチの乗った部分をミュートして取り除き,
きれいな信号だけをサンプリングし,ホールドする必要がありました。しかし,このサンプルホールド回
路には,アナログスイッチやコンデンサーなど音質的に好ましくなく素子が含まれており,特に微小信
号がノイズに埋もれるなどの悪影響が生じていました。こうしたサンプルホールド回路を排除して理想
的なアナログ回路構成をめざしたものでした。



このデグリッチシステムは,従来のスイッチに比べて一桁以上もスイッチングスピードの速いトランジスタ
を採用し,スイッチを閉じたときにD/Aコンバーターの出力にミュートがかかる方式とし,信号ラインにトラ
ンジスタを直列に介在させることなく,グリッチが乗った信号のみをすばやくカットするようになっていまし
た。スイッチング時間がきわめて短いため,コンデンサーにはデータを蓄える必要も無く,シンプルな回
路構成を可能としていました。こうしたデグリッチシステムにより,-90dBもの微小信号も確実に再現で
きるようになっていました。

デジタルフィルターには,2倍オーバーサンプリングの16ビットデジタルフィルターが搭載され,高域の不
要信号を2倍高い周波数に遠ざけ,比較的低次のゆるやかなアナログフィルターの使用が可能となり,ア
ナログフィルターは,5次のチェビシェフ型フィルターで構成されていました。カットオフ周波数も30kHzに
設定されており,20kHzまではほとんどフラットな群遅延特性が得られていました。また,デジタルフィル
ターも,特に高精度な独立型デジタルフィルターが使用され,高い次数をもつことで,リップル(可聴帯域
内でのうねり)特性,不要帯域減衰特性もすぐれたものとなっていました。

D/Aコンバーターには,L・R独立のデュアル16ビットD/Aコンバーターが搭載され,チャンネル間の位相
のズレのないすぐれた高域特性を実現していました。D/Aコンバーターには,高精度なラダー型ICを採用
し,すぐれた分解能を実現していました。



電源部においては,デジタル部とアナログ部等の相互干渉を徹底的に排除する構成がとられていました。
アナログ部は,各ステージにクリーンな電源を供給するためにマルチレギュレーテッド・パワーサプライが採
用され,専用のマスターパワーレギュレーターを設置し,さらに,バッファーアンプ,ラインアンプそれぞれL・R
別の専用ローカルレギュレーターを配していました。しかも,各ローカルパワーレギュレーターとマスターパ
ワーレギュレーターは帰還ループを持たないNon-NFB電源構成がとられ,こうした構成で,各レギュレー
ターは,相互の電圧変動の影響を受けずクリーンな電源供給が可能となっていました。
さらに,アースラインの音質への影響を考え,アナログ部の電源ラインにトランジスタによるバッファーを組み
込み,電流を+→-へ流してグランドは基準電位を規定するだけの働きを行う,独自のアイソレーテッド・グ
ランド方式を採用し,電流にノイズや汚れた成分が乗っていても,グランド電位にはその影響が及ばない構
成となっていました。

ラインアンプは,完全ディスクリート構成で,バイポーラトランジスタによる差動入力となっていました。また,
アナログフィルターやラインアンプは,基板上に設けた銅製のシールド板によって電源部やデジタル部から
のノイズの飛び込みから保護されていました。パーツの面でも吟味を重ねたものが投入され,出力端子も
金メッキ端子が搭載されていました。



ピックアップは,中央のメインビームの情報ピックアップ能力を高めた3ビームレーザーピックアップを搭載し
読み取り能力を高めていました。また,大幅な高集積化を図った新開発のデジタル信号処理用のLSIを採
用し,デジタルノイズの発生を抑え,アナログ回路への干渉を最小限にとどめていました。サーボ回路は,
このLSIから独立させ,ディスクへの追従性を高めていました。また,信号処理を行う複数のLSIをひとつの
水晶振動子で同期させるマスタークロック方式を採用し,複数のクロックの相互干渉によるビートノイズの
発生を防いでいました。
ディスクドライブメカニズムは,スプリングとゴムで構成されたダンパーによってメインベースシャーシから
フローティングされ,内部共振や外部振動の影響を受けにくい構造としていました。
ディスクをセンタースピンドルに固定するチャッキング方式には,アルミ削り出しのテーパーをつけたスピン
ドルにより,正確にセンタリングされ,ディスクをホールドするチャッキングアームには磁石を利用したマグ
ネットチャック方式を採用し,ディスク装着時にはチャッキングアームが完全にディスクが離れるため,シャー
シからの振動の影響を受けにくい構造となっていました。

機能的には,通常の前後への選曲,15曲までのプログラムメモリー,再生中にボタンを押すとはじめはゆっ
くり,3秒後には高速で送れるキューイング等が搭載されていました。表示部は,ナカミチらしい色合いのFL
ディスクプレイが装備され,トラックNo.とタイム表示となっていました。タイム表示は,トラックの演奏時間,
全体の演奏時間,残り時間の切替表示が可能となっていました。

以上のように,OMS-70は,上級機OMS-70Ⅱのエッセンスを投入して開発され,上級機譲りのすぐれた
性能を実現したCDプレーヤーでした。機能的には,ややシンプルになっていたものの,ナカミチらしい色づ
けの少ない自然な音質は,当時のCDプレーヤーの中でもデジタル臭さのない自然な音を実現していました。
逆に,そうした音は,デジタルらしい音を求めた人々からは評価されなかった面があり,地味な存在となって
しまった部分もありました。


Nakamichi OMS-30
COMPACT DISC PLAYER ¥108,000


OMS-40には,弟機OMS-30も発売されていました。基本的な回路構成,メカニズム,機能等の内容は
ほぼ継承され,性能的にもほぼ継承されていました。
違いとしては,L・R独立型D/Aコンバーター,ディスクリート構成のラインアンプではないこと,機能面では
タイム表示が,全体の演奏時間表示がないこと,金メッキ出力端子ではないことがありました。
外観デザイン,音質的などは,ほぼ近いものとなっており,コストパフォーマンスが高いもう1台の中級機
という存在でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



CDプレーヤーの音質は,
ローレベル信号を
いかにピュアに引き出せるかで決まる。
Nakamichiはアナログ部の
徹底したシンプル化によって,
このセオリーを証明します。

OMS-40
16ビットデジタルフィルター,デュアル16ビットD/Aコンバーターの搭載をはじめ,
Nakamichiならではの細心さで音質を追いこんだハイグレードCDプレーヤー。

OMS-30
上級機OMS-40と同等の多彩な機能を装備。サンプルホールド回路を排したシンプルな
D/A変換方式やデジタルフィルターなどを搭載し,音質も高めた実力モデル。


◎サンプルホールド回路を用いずにグリッチを
 取り除く,新開発のデグリッチングシステム。
◎アナログフィルターの一層のシンプル化を
 可能とした16ビットデジタルフィルター。
◎L/R独立のデュアル16ビット
 D/Aコンバーター(OMS-40)
◎デジタル部がアナログ部に及ぼす悪影響を
 シャットアウト。電源,アースラインのD/A分離対策。
◎位相特性に優れた5次アクティブフィルターを
 採用し,音質最優先を徹したアナログ部。

●ディスクリート構成のラインアンプ(OMS-40)
◎より正確な信号検出を実現した3ビーム
 ピックアップ&高精度デジタル/サーボ部。
◎メカニズムのフローティング構造により
 共振や振動の影響をシャットアウト。

コンパクトディスクの”使いやすさ”を
フルに生かす多彩な
便利機能を装備しています。

●15曲プログラムメモリー
●タイムカウンター表示
●スキップサーチ
●ダブルスピードキューイング
●ダイレクトオペレーション
●リピートプレイ
●ヘッドホン出力/ヘッドホン出力調整ボリュームを装備
●ワイヤレスリモートコントロールユニット
●金メッキ出力端子(OMS-40)




●OMS-40/OMS-30主な規格●

型式 デジタルオーディオシステム(コンパクトディスク方式)
読み取り方式 非接触光学式(半導体レーザー使用)
エラー訂正方式 CIRC方式
チャンネル数 2チャンネルステレオ
標本化周波数 44.1kHz
量子化数 16ビット直線
ディスク回転速度 約200~500rpm(線速度一定)
ワウ・フラッター 測定限界以下
周波数特性 5~20,000Hz±0.5dB
S/N比 OMS-40:100dB以上(IHF A-WTD)
OMS-30:97dB以上(IHF A-WTD)
ダイナミックレンジ  OMS-40:93dB以上
OMS-30:92dB以上 
全高調波歪率 OMS-40:0.004%(1kHz)
OMS-30:0.006%(1kHz)
全高調波歪率+雑音 OMS-40:0.0055%(1kHz)
OMS-30:0.007%(1kHz)
チャンネルセパレーション OMS-40:94dB以上
OMS-30:90dB以上
出力 ライン
 OMS-40:2.5V/220Ω (1kHz,0dB)
 OMS-30:2.5V/600Ω(1kHz,0dB)
ヘッドホン
 約35mW,40Ω負荷(1kHz,0dB)
電源 AC100V,50/60Hz
消費電力 OMS-40:最大23W
OMS-30:最大16W
大きさ 430(巾)×100(高さ)×322(奥行)mm
重さ OMS-40:約7.1kg,OMS-30:約6.6kg

※本ページに掲載したOMS-40,OMS-30の写真・仕様表等は
 1986年6月
のNakamichiのカタログより抜粋したもので,ナカ
 ミチ株式会社に著作権
があります。したがってこれらの写真等を
 無断で転載,引用等をす
ることは法律で禁じられていますので,
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