Accuphase P-300X
STEREO POWER AMPLIFIER ¥290,000
1980年に,アキュフェーズが発売したステレオパワーアンプ。アキュフェーズは,創立時に第1号製品として
コントロールアンプC-200,パワーアンプP-300というセパレートアンプを発売し,スタートしました。P-300
は当時,海外の高級機に負けない性能の本格的パワーアンプとして,1号機とは思えないほどの完成度を誇
り,高い評価を受けました。その後,1977年に第2世代のP-300Sへとモデルチェンジされ,P-300Xは,
第3世代のモデルとして,より高い完成度を実現した1台でした。

P-300Xの回路構成は,C-200Xと同様に,入力から出力まで,全増幅段がアキュフェーズ伝統の全段直
結完全対称プッシュプル方式を採用していました。これにより,NFBをかける前の裸特性の向上が図られて
いました。
出力段は,広帯域トランジスターによるパラレル・プッシュプル構成で,150W/ch(8Ω)の出力を実現してい
ました。さらに,スイッチ操作一つで,新たに搭載されたブリッジ接続用の位相反転回路により,400W(8Ω)
のモノフォニック・パワーアンプとしても使えるようになっていました。
出力段の前段のドライバー段には,新たにMOS FETを使用していました。MOS FETを使用したことによっ
て出力段のバイアス電圧が安定し,出力段のエミッター抵抗を取り去ることができていました。これによって大
出力時のトランジスターのバイアスがカットオフされることなく,スイッチング歪みの発生がほとんどなくなってい
ました。さらに,MOS FETのドライブ段は,入力インピーダンスがきわめて高く,前段(プリ・ドライブ)への負
担が低減され,高性能化が可能となっていました。



プリ・ドライブ段は,トランジスターのカスコード接続で構成し,安定した広帯域増幅を実現していました。電流
振り込みの働きと大振幅増幅の働きを,カスコード素子のそれぞれにもたせることにより,特性劣化を抑えて
いました。
入力差動回路は,FETを使ったプッシュプルで,次の段にカスコード接続され,ブートストラップを構成するよ
うになっていました。このカスコードブートストラップにより大きなゲインを得るとともに,高域特性を改善し,入
力インピーダンスの上昇による歪率の悪化をほぼ完全に抑え,広帯域にわたって安定した増幅を可能にし
ていました。以上のように,A級段は,すべてカスコード・ブートストラップ・プッシュプル回路で構成されていま
した。

P-300Xでは,FET入力を構成することにより,入力コンデンサーが取り除かれ,直結アンプとなっていまし
た。DC漏れのあるアンプとの接続に備え,DC成分の通過を抑えるため,IC化されたDCサーボアンプで直
流帰還をかけ,直流を遮断するとともに,回路内で発生するDCドリフトもほぼ完全に抑えていました。



電源部は,中央にシールドケースに収められた大型のCIコアトランスが配置されていました。この電源トランス
は左右専用巻線が採用され,左右独立の22,000μF×4のコンデンサー,専用整流器とフィルター回路に
より,チャンネル間の干渉を抑えていました。
出力段をはじめとする増幅段が取り付けられた頑丈なヒートシンクが,頑丈なフレームに連結され,電源部を
中央にして左右に配置された,構造強度の高い整然とした構造は,アキュフェーズの伝統として継承されてい
ました。

P-300Xは,パワーアンプとして機能をしっかり搭載する伝統も継承していました。スピーカーの能率やプリア
ンプのゲインの違いに対応ルために,-20dBまで1dBステップで正確なレベルセッティングが可能なステップ
式アッテネーターが搭載され,超低域の不要入力をカットするサブソニックフィルターも搭載されていました。
出力計は,それまでのVUメーターに代わり,対数圧縮型ピーク・パワーメーターが搭載され,dBとともに8Ω
負荷時の出力電圧を直読できるようになっていました。このパワー・メーターは,OFF/PEAK/PEAK HOLD
/VOLUNEの切替スイッチが装備され,3秒ごとのピーク値をホールドして表示することが可能でした。
フロントパネルのデザインは,P-300以来の伝統を継承したデザインで,ツマミ,プッシュボタンが整然と配置
されていました。また,フロントサブパネルも継承され,サブパネル内には,ヘッドホン端子,スピーカー出力端
子,入力端子が搭載され,機器のテスト接続などの利便性も備えていました。

以上のように,P-300Xは,「P-300シリーズ」の第3世代として,新たな技術を大幅に投入しつつ,高い完成
度を実現していました。性能と機能がきちんと両立され,クリアさと力強さのバランスのとれた音は,音楽を聴く
上で過不足を感じさせないしっかりとしたものでした。
当時,アルバイト店員をしていたオーディオ店でも,C-200Xとのペアで安心して高音質を楽しめるアンプとし
て勧めていたことを思い出します。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



200W/ch(4Ω)150W/ch(8Ω)
更にブリッジ接続により400W(8Ω)を保証。
MOS FETドライブ全段プッシュプル構成,
DCサーボ方式。

◎ドライブ段にMOS FETを採用した
 パラレルプッシュプル出力段
◎高域特性を大幅に改善した
 カスコード・ブートストラップ・プリ・ドライブ段
◎カスコード・ブートストラップ
 差動プッシュプル入力
◎DCサーボ方式により直結入力
◎2巻線による左右独立型強力電源部
◎400Wモノフォニック・パワーアンプに
 早変わりするブリッジ回路内蔵
◎1dBステップ・アッテネーター
◎ホールド・スイッチ付対数圧縮
 ピーク・レベル・メーター
◎フロント・パネルの入・出力端子
◎別売ウッド・キャビネット




●P-300X保証特性●

 

連続平均出力 NORMAL CONNECTION(両チャンネル同時動作) 
 200W/ch  4Ω負荷 
 150W/ch  8Ω負荷 
  75W/ch 16Ω負荷 
BRIDGE CONNECTION(モノフォニック) 
 400W     8Ω負荷 
 200W    16Ω負荷 
(20~20,000Hz間 ひずみ率0.01%以下)
全高調波ひずみ率 NORMAL CONNECTION(両チャンネル同時動作) 
 0.01%   4Ω負荷
 0.005%  8Ω負荷
 0.005% 16Ω負荷
BRIDGE CONNECTION(モノフォニック)
 0.01%   8Ω負荷
 0.01%  16Ω負荷
IMひずみ率(新IHF) 0.003%
周波数特性 20~20,000Hz +0,-0.2dB 
(定格出力時,レベル・コントロールMAX) 
0.4~500,000Hz +0,-3.0dB 
(出力1W時,レベル・コントロールMAX) 
0.4~150,000Hz +0,-3.0dB 
(出力1W時,レベル・コントロール-6dB)
ゲイン 27.8dB NORMAL CONNECTION
33.7dB BRIDGE CONNECTION
負荷インピーダンス 4~16Ω NORMAL CONNECTION 
8~16Ω BRIDGE CONNECTION
ダンピング・ファクター(新IHF 50Hz) 150  NORMAL CONNECTION 
 75 BRIDGE CONNECTION
入力感度・入力インピーダンス NORMAL CONNECTION 
 1.4V(定格出力) 50kΩ 
 0.11V(新IHF 1W出力) 50kΩ 
BRIDGE CONNECTION 
 1.17V(定格出力)  50kΩ
 0.06V(新IHF 1W出力) 50kΩ
S/N(A補正) NORMAL CONNECTION
 120dB (定格出力にて,入力ショート) 
 100dB(新IHF 1W出力) 
BRIDGE CONNECTION
 110dB (定格出力にて,入力ショート) 
  90dB(新IHF 1W出力) 
ステレオ・ヘッドホーン 低出力インピーダンス型 
サブソニック・フィルター 17Hz -12dB/oct
出力メーター 対数圧縮型 -40dBから+3dB及び 
出力直読目盛 ピークホールド切替付
使用半導体 42Tr,12FET,7IC,61Di
電源及び消費電力 100V,117V,220V,240V 50/60Hz
NORMAL CONNECTION 
  80W   無入力時 
 550W  8Ω負荷定格出力時 
寸法・重量 幅445mm×高さ160mm(脚含む)×奥行373mm 
22.5kg
※本ページに掲載したP-300Xの写真,仕様表等は1982年のAccuphaseのカタログ
 より抜粋したもので,アキュフェーズ株式会社に著作権があります。したがって,これらの  
 写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。  
  
 
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