P-600の写真
Accuphase P-600
STEREO POWER AMPLIFIER ¥650,000

1983年に,アキュフェーズが発売したパワーアンプ。1981年発売のモノラルパワーアンプM-100をステレオ
化したアンプとも見えますが,当時のアキュフェーズのステレオパワーアンプとして最上級機でした。M-100と比
べてみると,ステレオパワーアンプとしてより完成度が高められ,2年分の練り上げは,その音にも表れていまし
た。

出力段は,Pc(コレクター損失)200Wの広帯域トランジスターをチャンネルあたり14個投入した7パラレルプッ
シュプルという構成で,2.8kwもの電力容量が確保されていました。これにより,余裕を持って8Ω=300W/ch
4Ω=500W/ch,2Ω=700W/chという大出力が保証されていました。これらのパワートランジスターは大型の
ヒートシンクに取り付けられ,十分な放熱が確保され,通常使用時には放熱用ファンを用いなくても連続使用が可
能となっていました。もちろんオプションで放熱用ファンのO-81(¥8,000)が取り付けられるようにもなっていま
した。
また,通常の使用状態で2Ωまでの低負荷を駆動することが可能となっていましたが,さらに低いインピーダンス
で駆動する場合のために,リアパネルに「LOW LOAD IMPEDANCE OPERATION」スイッチが設けられて
おり,1Ω負荷に対しても出力トランジスターの安全を保ちながら450W/chの出力が得られるようになっていまし
た。
さらに,リアパネルのスイッチを切り換えてブリッジ接続をすることにより,8Ω=1000W,4Ω=1400Wという
大出力のモノラルアンプとしても使用できるようになっていました。「LOW LOAD IMPEDANCE OPERATI-
ON」スイッチを用いることにより,2Ω=900Wのモノラルアンプとしても動作可能でした。

P-600のパワーブロック

出力段をドライブするドライブ段は,電力増幅用MOS FETで構成され,低インピーダンス大電流駆動が行われ
るようになっており,さらに高域特性が大きく改善されていました。また,MOS FETは熱特性が負の方向である
ため,バイポーラ・トランジスターによる出力段を安定化させることができ,出力段のエミッター抵抗を低くすること
が可能となり,さらに,7パラレルによる等価エミッター抵抗が1/7に低くなり,出力トランジスターのバイアスがカ
ットオフするために発生するスイッチング歪みがほとんどゼロとなっていました。
プリドライブ段は,ダーリントン・カスコード・プッシュプル構成で,ミラー効果のないすぐれた高域特性とリニアリティ
の高さを実現していました。
強力な,L・R増幅ユニットを支える電源部は,大型のトロイダル電源トランスとフィルターコンデンサーによる強力
なものが搭載されていました。

入力増幅回路は,FETのプッシュプル差動増幅で,カスコード・ブートストラップ・プッシュプル回路構成で,ハイゲ
インとすぐれた高域特性を実現していました。
デュアルFETによるプッシュプル入力回路によって入力に直流が発生せず,入力コンデンサーが必要のない回路
構成となっていましたが,プリアンプからのDC洩れに対応して,DCサーボアンプで直流帰還をかけて直流成分を
遮断するとともに,回路内で発生するDCドリフトも抑えられるようになっていました。
入力は,通常の20kΩアンバランス入力(RCAジャック)に加え,600Ωバランス入力(3Pキャノンタイプ)が装備
されていました。このバランス入力の位相反転はトランスではなく,低歪み広帯域の差動増幅回路によるものでし
た。

P-600の内部

フロントパネルには,特徴的なデジタル表示のパワー・メーターが装備されていました。ピークパワーを直読できる
このデジタル表示のパワーメーターは,M-100で世界で初めて搭載されてものでした。M-100では,アナログ式
のメーターと併用されていましたが,P-600では,デジタル・パワー・メーターのみとなっていました。デジタル・パワー
メーターは,12bitのA/Dコンバーターと4bitマイクロプロセッサーを組み合わせて構成され,アナログ信号をA/D
コンバーターによりデジタル信号に変換し,3桁のデジタル表示で,×1,×0.1,×0.01,×0.001のレンジ切
換えにより,0.001W〜999Wまで直読できるようになっていました。ホールドタイムは,3秒と30分に切換えられ
30分レンジを使用すると,レコード(当時はメインソフト)の片面のピーク値を知るという用途に使えるようになってい
ました。また,2Ω,4Ω,8Ω,16Ωの各インピーダンスに対応したインピーダンス切換えも装備されていました。
その他,通信機用25接点ロータリースイッチと高精密抵抗による1dBステップ,±0.1dBの精度の本格的なアッテ
ネーターが装備されていました。また,10Hz,−12dB/octのサブソニックフィルターも装備されていました。

以上のように,P-600は,当時のアキュフェーズのステレオパワーアンプの最上級機として,各社を見渡しても,最
大出力級のステレオパワーアンプでした。その出力や特性から考えるとバランス良く小型にまとめられ(それでも大
きいですが・・・。)た使いやすいアンプとなっていました。低域の鳴り方などは,M-100よりすぐれていると評価され
ることもあったほどで,力強い低域とクリアな高域をもった1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ステレオ=300W/ch(8Ω),モノフォニックで1000W(8Ω)
を保証する7-パラレル・プッシュプル・パワーステージ。
低負荷インピーダンス対応設計により,
1Ωの超低負荷インピーダンスも完全駆動。

◎2Ω=700W/ch 8Ω=300W/chを保証
 する7-パラレル・プッシュプル出力段
◎1Ω=450W/chの低負荷駆動を実現
 したLOW LOADIMPEDANCE
 OPERATION機構
◎スイッチングひずみと高域特性,リニア
 リティーを大幅に改善したダーリントン
 カスコードPP+MOS FETドライブ段
◎カスコード・ブートストラップ差動
 プッシュプル入力回路
◎DCサーボ方式直結入力
◎ブリッジ接続により1,000W/8Ω
 1,400W/4Ωの
 純粋モノフォニック・アンプ化
◎ケーブルを延長しても
 誘導雑音を受けない
 600Ωバランス入力を装備
◎ピーク値を直読する
 ディジタル・パワー・メーター
◎1dBステップの
 本格的アッテネーター
◎10Hz,−12dB/octの
 サブソニック・フィルター
◎パーシモン仕上げの
 サイド・ウッドパネル
◎放熱用ファン取り付け可能




●P-600保証特性●

連続平均出力
(20〜20,000Hz ひずみ率0.02%)
ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作)
 NORMAL LOAD OMP.OPERATION
  700W/ch  2Ω負荷
  500W/ch  4Ω負荷 
  300W/ch  8Ω負荷 
  150W/ch 16Ω負荷
 LOW LOAD IMP.OPERATION
  450W/ch  1Ω負荷
  300W/ch  2Ω負荷
モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
 NORMAL LOAD OMP.OPERATION
  1,400W   4Ω負荷
  1,000W   8Ω負荷
    600W  16Ω負荷
 LOW LOAD IMP.OPERATION
    900W   2Ω負荷
    600W   4Ω負荷  
全高調波ひずみ率 ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作)
 0.02% 1〜2Ω負荷
 0.01% 4〜16Ω負荷 
モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
 0.02% 2〜4Ω負荷
 0.01% 8〜16Ω負荷 
IMひずみ率(IHF) 0.01%
周波数特性 20〜20,000Hz +0,−0.2dB
(連続平均出力時,レベルコントロールMAX) 
0.5〜250,000Hz +0,−3dB 
(1W出力時,レベルコントロールMAX) 
0.5〜150,000Hz +0,−3dB 
(1W出力時,レベル・コントロール−6dB)
ゲイン 27.8dB ステレオ仕様時
33.8dB モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
負荷インピーダンス 1〜16Ω ステレオ仕様時
2〜16Ω モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
ダンピング・ファクター(IHF 50Hz) 300 ステレオ仕様時
150 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
入力感度・入力インピーダンス ステレオ仕様時
 2.0V
 (8Ω負荷300W NORMAL LOAD INP.OPERATION)
 1.0V
 (2Ω負荷300W LOW LOAD IMP.OPERATION)
モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
 1.83V
 (8Ω負荷1,000W NORMAL LOAD INP.OPERATION)
 0.91V
 (2Ω負荷900W LOW LOAD IMP.OPERATION)
入力インピーダンス
 20kΩ不平衡/600Ω平衡入力スイッチ切り替え
入力レベル調整 ステップ式アッテネーター 
アッテネーション:0〜−20dB間1dBステップ
以降−23dB,−26dB,−30dB,−∞の25接点 
誤差:±0.1dB以内
S/N(A補正) ステレオ仕様時
 125dB  入力ショート 
   NORMAL LOAD IMP.OPRATION
   8Ω負荷連続平均出力時
 100dB  入力1kΩ
   1W出力時 (IHF)
モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
 115dB  入力ショート 
   NORMAL LOAD IMP.OPRATION
   8Ω負荷連続平均出力時
  90dB  入力1kΩ
   1W出力時 (IHF)
サブソニック・フィルター 10Hz −12dB/oct
出力メーター
型式:3桁ディジタル表示 ピーク指示直読式
表示範囲:レンジ切り替えにより0.001W〜999W
ロードインピーダンス切り替え:2Ω,4Ω,8Ω,16Ω
ホールド・タイム:3秒,30分 
周波数特性:20〜20,000Hz +0,−0.2dB 
パルス応答誤差:100Hz 1波にて+0,−0.4dB
使用半導体 90TR,8FET,36IC,104Di,8LED
電源・消費電力 100V,17V,220V,240V 50/60Hz 
消費電力  165W NORMAL LOAD IMP.OPERATION
             無入力時
       1,100W NORMAL LOAD IMP.OPERATION
             電気用品取締法
       1,100W NORMAL LOAD IMP.OPERATION
             8Ω負荷定格出力時
寸法・重量 幅480mm×高さ232mm(脚含む)×奥行476mm 
38.5kg

※本ページに掲載したP-600の写真,仕様表等は1983年のAccuphaseの
 カタログより抜粋したもので,アキュフェーズ株式会社に著作権があります。
 したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられ
 ていますのでご注意ください。

  
 
 
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