YAMAHA P-750
DIRECT DRIVE FULL AUTO PLAYER SYSTEM ¥55,000
1980年に,ヤマハが発売したプレーヤーシステム。ヤマハは,1975年に,テクニクスのSP-10と
同じモーターを使用したDDプレーヤーYP-1000を発売するなど,DDプレーヤーの時代に入り,すぐ
れたプレーヤーシステムを作っていました。そして,1980年頃から,新たに「P」を頭文字にもつ型番
のシリーズを展開していきました。その新しいシリーズの主力モデルがP-750でした。

P-750の回転系は,DC4相8極コアレスホールモーターによるダイレクトドライブで,クォーツPLLサー
ボにより制御されるようになっていました。
DC4相8極コアレスホールモーターは,構造上コギングがなく回転が滑らかで,ホール素子を使用し
た非接触型であるために,機械的・電気的ノイズも少ないモーターでした。このモーターの回転を制
御するクォーツPLLサーボは,ターンテーブルの回転数を全周積分型のFG(周波数発電機)で検出
し,精度の高い水晶発振器からの信号と位相比較するもので,30cm径,重量1.6kg,慣性質量
210kg・cm2(ゴムシート含む)のターンテーブルとあわせて,ワウ・フラッター0.015%(WRMS・
FG直読),SN比77dB(DIN-B)という高精度な回転を実現していました。

トーンアームは,新開発のARS(Anti Resonannce Straight)アームを搭載していました。ARSアー
ムは,ほぼ左右対称のストレートアームで,バランスウェイトを大型で横長の矩形にし,支点に近づけ
たことによって振れ振動の発生を抑えた構造になっていました。そして,アームをサポートするピボット
間のスパン(距離)を通常の2倍以上にしたり,軸受けのアンギュラコンタクトベアリング(軸方向,円周
方向の両方の力を同時に受けるベアリング)をゴムダンパーで支えることにより感度アップとガタによる
共振の排除を実現していました。さらに,アームパイプ前後のたわみ振動に対しては,パイプホルダを
大型で堅牢なものにし,支点から30mmを二重構造にすることで,種々の共振の発生を抑えた作りに
なっていました。



カートリッジ実装時のアームのfo(低域共振周波数)は,12Hz前後になるように設定されていました。こ
れは,ヤマハがダイレクトカットレコードの再生スペクトルを測定した約12Hzを境にして音楽成分とソリ
や偏心成分が高低に分かれるというデータから決定されたものでした。実装時のfoが12Hz前後になる
ようにするために,当時の代表的なMM/MC型カートリッジ30種の重量とコンプライアンスの平均値を
求め,アームの実効長を222mm,実効質量を11gに設定していました。これにより,市販のMM型の
80%,MC型の70%のカートリッジで,実装時のfoは12Hz前後(12Hz±2Hz)となっていました。
針圧調整は,スライドウェイト式で,ヘッドシェルはオフセット型のストレートアーム用のヘッドシェルで,
ADCタイプと称していました。ストレートアームでは,ローマスの点で有利なヘッドシェル一体型が多い
のですが,これはカートリッジをつけたままヘッドシェルを交換できるタイプでした。また,VM型のカート
リッジCG-6700が標準装備されていました。さらに,ロックカム式の±2.5mmのアーム高さ調整が
搭載されていました。

キャビネットは,3mm厚の音響用アルミ材によるアルミダイキャスト製で,堅牢な構造により,内部振動
を抑圧し,特殊ゴム製のW型折り返しインシュレーターとあわせて外部振動にも強い構造となっていまし
た。後方がターンテーブル面と同じ高さになった階段状のブラック仕上げの独特のキャビネットのデザイ
ンは,上級機のリニアトラッキング方式の高級プレーヤーPX-1PX-2PX-3と共通のイメージを持つ
もので,
ヤマハらしい洗練されたデザインでした。また,ダストカバーは,3mm厚のアクリリックレジンを採
用し,ハウリングマージンを高めていました。

P-750は,フルオートプレーヤーとして,回転数とレコード盤のサイズをセレクトしたら,スタートSWを押
すだけで自動的にレコード演奏が始まるオートリードイン,レコード演奏が終わるとアームが自動的にアー
ムレストに戻りターンテーブルが停止するオートリターン,同じレコードを繰り返し演奏するオートリピートが
可能となっていました。また,オイルダンプ式のキューイングSWで滑らかにアームをUP-DOWNするマ
ニュアル操作も可能となっていました。また,ほとんどの操作スイッチが前面に配置され,ダストカバーを
閉じたままでも操作できるフロントオペレーションとなっていました。

以上のように,P-750は,中級機ながら,ヤマハのアナログプレーヤーにおける技術の蓄積を生かした,
洗練されたデザインの中に,バランスのとれた性能を備えた使いやすいプレーヤーシステムでした。


YAMAHA P-550
DIRECT DRIVE FULL AUTO PLAYER SYSTEM ¥39,800


P-750には,弟機P-550が同時期に発売されました。基本的には同一の設計でしたが,いくつかの点
に違いがありました。
回転系は,モーター,ターンテーブルは同一ながら,制御系がクォーツPLLサーボではなく,FGサーボと
なり,楽音のピッチを約半音調整できる±3%のピッチコントロールがプレーヤー正面の底部に装備され
ていました。そして,キャビネット前部の窓から覗けるミラー式のストロボスコープが搭載されていました。
また,キャビネットは,アルミダイカストではなく,BMC(Bulc Molding Compoud)製になり,重量もや
や軽くなっていました。その他,アーム高さ調整が省略されていました。
しかし,性能的にはほぼ近いものを実現しており,非常にコストパフォーマンスが高い1台となっていました。
(現在では,とうていこの価格でこの内容のアナログプレーヤーは作れません。)


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



新開発ARSアーム搭載,
フロントオペレーション・フルオートDD

◎無共振化を目指した
 新開発高性能ARSアーム

●無共振を目指した左右対称設計ARSアーム
●種々のカートリッジにフィットするARSアーム
●針圧調整,カートリッジ交換が簡単です
●明るくクリアな音質のVM型カートリッジ

◎クォーツPLLサーボによる
 コアレスホールモータDD

●滑らかな回転のDCコアレスホールモータ
●水晶の精度で制御するクォーツPLLサーボ

◎回転系,ピックアップ系を
 しっかりと支えるキャビネット
◎フロントオペレーション
 フルオートメカニズム

●操作しやすいフロントオペレーションです。
●誰にでも手軽に操作できるフルオート機構

◎ヤマハならではの洗練された
 スリムなデザイン




●主な規格●


●トーンアーム●


   P-750  P-550
アーム型式 ストレートアーム ストレートアーム
全長/実効長 290mm/222mm 290mm/222mm 
オーバーハング  16mm  16mm 
オフセット  23°  23° 
水平トラッキングエラー角  -1°~3°  -1°~3° 
針圧印加方式 スライディングウェイト方式
0~3g(0.1gステップ) 
スライディングウェイト方式
0~3g(0.1gステップ) 
実効質量 11g(針圧1.5g時,カートリッジ重量は含まず) 11g(針圧1.5g時,カートリッジ重量は含まず) 
適合カートリッジ 2. 5g~10g  2. 5g~10g 
アーム初動感度 垂直10mg,水平30mg   垂直10mg,水平30mg 
アームリフタ オイルダンプ式キューイング オイルダンプ式キューイング 
アーム高さ調整 ±4mm   
ヘッドシェル ADCタイプ(自重2.5g) ADCタイプ(自重2.5g) 
PUケーブル 容量100pF・往復抵抗1Ω 容量100pF・往復抵抗1Ω 


●カートリッジ●

品番  CG-6700(VM型カートリッジ)  CG-6700(VM型カートリッジ) 
出力電圧  2.5mV(1kHz,5cm/sec,Peak45°)  2.5mV(1kHz,5cm/sec,Peak45°) 
チャンネルセパレーション  18dB以上(1kHz)  18dB以上(1kHz) 
電気インピーダンス  2.8kΩ±30%(1kHz)  2.8kΩ±30%(1kHz)  
適正針圧  2.0g±0.5g  2.0g±0.5g 
ダイナミックコンプライアンス  12×10-6cm/dyne(100Hz)  12×10-6cm/dyne(100Hz)  
重量 6g  6g 


●回転系●


駆動方式 ダイレクトドライブ ダイレクトドライブ 
サーボ方式 クォーツロック FGサーボ 
モーター DC4相8極コアレスホールモーター DC4相8極コアレスホールモーター 
回転数 2スピード(331/3rpm,45rpm) 2スピード(331/3rpm,45rpm) 
ターンテーブル 30cmアルミダイキャスト 30cmアルミダイキャスト 
重量/慣性モーメント 1.6kg/210kg・cm2(ゴムシートを含む)   1.6kg/210kg・cm2(ゴムシートを含む)  


●オートマティックコントロール●


オート機能 オートリードイン(17cm,30cm),オートリターン
リピート,カット
オートリードイン(17cm,30cm),オートリターン
リピート,カット 

●ボディ部●


キャビネット アルミダイキャスト BMC(Bulk Moliding Compound)
仕上げ ブラック塗装  ブラック塗装
ダストカバー 800gアクリリックレジン  800gアクリリックレジン
ヒンジ フリーストップ着脱可能  フリーストップ着脱可能
インシュレーター W形折り返し型ゴム  W形折り返し型ゴム

●総合●


SN比 77dB(DIN-B IEC98A weighted) 77dB(DIN-B IEC98A weighted) 
ワウフラッタ 0.015% WRMS(FGダイレクト) 0.015% WRMS(FGダイレクト) 
外形寸法 440W×132H×372Dmm 440W×132H×372Dmm 
総重量  8.0kg  6.8kg 
定格電源 AC100V,50Hz/60Hz AC100V,50Hz/60Hz 
消費電力 5W 7W 
※本ページに掲載したP-750,P-550の写真・仕様表等は1980年2月の
 YAMAHAの
カタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著作権があり
 ます。
したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で
 禁じられ
ていますので,ご注意ください。
 
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