PIONEER A-100
STEREO AMPLIFIER ¥59,800
1983年にパイオニアが発売したプリメインアンプ。1979年のA-900で可変バイアスによる「ノンスイッ
チング・アンプ」を開発したパイオニアが,新たに電源部切り換え方式を採用し,作り上げたプリメインアン
A-200(¥169,000),A-150(¥99,800),A-120(¥69,800)というシリーズの中で末弟に
当たる機種として発売されたのがA-100でした。


A-100の大きな特徴は,電源部切り換えによる「ダイナミックパワーサプライ方式」の搭載でした。これは
低電圧部(VL)と高電圧部(VH)の2系統の電源供給部から構成され,通常信号レベルでは低電圧部(VL)
でドライブし,大入力時には高電圧部(VH)でドライブするという高効率の電源回路でした。
A-100の電源部は,207VAの大型の電源トランスと,80V・10,000μF×2+56V・8,200μF×2
トータルで36,400μFのフィルターコンデンサーによるクラスを超えた強力なものが搭載され,電源イン
ピーダンスが低減されたゆとりある電源部となっていました。
電源トランスの2次巻線の途中からタップを出し,56V・8,200μFのコンデンサーを組み合わせた低電
圧電源用電源と,2次巻線をフルに使い80V・10,000μFのコンデンサーを組み合わせた高電圧用電
源を切り換える方式で,通常の状態でほとんど使われている低電圧用の方が電流にゆとりがあり,電圧
降下も少なく,大出力時のみ高電圧用に切り換わる仕組みになっていました。入力の検出,スイッチの切
換は,超高速の半導体スイッチで行われ,音質への影響は無視できるレベルになっていました。また,切
換は,かなりの高出力時に行われ,出力が小さくなればすぐ元に戻り,通常の音量では切換はおこなわ
れることがほぼないというものでした。

出力段には,A-900以来の「ノンスイッチング回路」が搭載され,スイッチング歪みゼロを実現していました。
パイオニアの疑似A級動作アンプである「ノンスイッチングアンプ」は,ハイスピード・バイアスサーボ回路に
より入力信号の強弱に応じて,終段トランジスターのバイアス電流をコントロールし,トランジスターを常に動
作領域で動作させるもので,プッシュプル動作のアンプにつきもののトランジスターのスイッチング動作をし
ないというものでした。プッシュプル回路の+側,-側の両トランジスターが常にONの状態にあり,A級動
作と同じく原理的にスイッチング動作が行われず,また,入力信号に応じてバイアス電流が変化するため,
純A級動作のアンプに比べて電力効率が良く,比較的容易に大出力が得られるという特徴がありました。
出力段のヒートシンクは,アルミ厚板を両側からむきかけにしたヘリンボーンタイプで,効率の良い放熱を
可能にしていました。さらに,リアパネルのインピーダンス切換スイッチにより,6Ω以下のスピーカーに対
しても対応するようになっていました。



イコライザー部は,初段にローノイズ・ハイゲインのデュアルFETを採用したDCサーボ・ハイゲインイコライ
ザーが採用され,ゲインの切換でMCカートリッジにも対応し,MC入力においても70dB(250μV)の高SN
比を実現していました。音質を左右するRIAA素子は,高音質用のポリプロピレンコンデンサーと黄銅キャッ
プ非磁性抵抗器で構成されていました。
アンプ全体として,MC入力からスピーカー出力まで,シンプルな2アンプ構成となっており,TUNER,AUX
TAPEなどハイレベル信号はダイレクトにパワーアンプに入力され,ハイゲインイコライザーにより,MC再生
時でもスピーカー出力まで2アンプというシンプル化を実現していました。
さらに,信号経路の回路や接点をできるだけ少なくするラインストレート機能が装備され,スイッチひとつで,
トーン回路,ラウドネス回路をパスできるようになっていました。



パーツの面でも,オーバーオールに厳選されており,電源コードも,2重にシールドした極太の電源コードを
採用して,電源インピーダンスを低減していました。

以上のように,A-100は,エントリークラスのプリメインアンプとして,各部にバランスのとれた設計がなさ
れたモデルでした。,当時各社が大出力モデルを投入して激戦区となりつつ合った598クラスで100W+
100Wの出力を確保し,高いコストパフォーマンスを実現し,このシリーズ中でも,最もパイオニアらしい中
庸な癖の少ない音をもっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ダイナミック・ノンスイッチングアンプ搭載。
Dレンジの広い感動を生む
100W+100W。
パイオニアのA-100。

 100W+100Wをクオリティ高く実現した
◎ダイナミック・ノンスイッチングアンプ。
 MC入力からスピーカー出力までをシンプルな
◎2アンプ構成。
 微少信号に対して低歪率,高SN比を実現した
◎DCサーボハイゲインイコライザー。
 より純度の高い音質をもとめた
◎ラインストレート機能。
 音質向上のための2重絶縁
◎極太電源コード




●主な仕様●

実効出力 100W+100W(20Hz~20kHz,両ch駆動,8Ω)
高調波歪率
(20Hz~20kHz)
0.007%(実効出力時)
出力帯域幅 5Hz~100kHz(IHF,両ch駆動,THD0.05%)
出力端子 TAPE REC:150mV
SPEAKER(4~16Ω):A,B,A+B
ダンピングファクター 60(20Hz~20kHz,8Ω)
入力端子
(感度/入力インピーダンス)
PHONO(MM):2.5mV/50kΩ
PHONO(MC):0.2mV/100Ω
TUNER,CD/AUX・TAPE PLAY1・2:150mV/50kΩ
PHONO最大許容入力 MM:200mV(1kHz,THD0.005%)
MC:17mV(1kHz,THD0.005%)
周波数特性 PHONO(MM):20Hz~20kHz±0.2dB
TUNER・CD/AUX・TAPE PLAY1,2:5Hz~100kHz ±3dB
SN比
(IHF,Aネットワーク,ショートサーキット)
PHONO(MM):86dB
PHONO(MC):70dB
TUNER・CD/AUX・TAPE PLAY1,2:105dB
トーンコントロール BASS:±10dB(100Hz)
TREBLE:±10dB(10kHz)
フィルター LOW:15Hz(6dB/oct)
電源電圧 AC100V,50/60Hz
消費電力 220W(電気用品取締法)
外形寸法・重量 420W×130H×331Dmm・9kg

※本ページに掲載したA-100の写真,仕様表等は,1983年
 3月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア
 株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を
 無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますので
 ご注意ください。

 

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