PIONEER CT-1000
STEREO CASSETTE TAPE DECK ¥123,8001976年にパイオニアが発売したカセットデッキ。当時のパイオニアの最上級機にあたり,大型の筐体に
3ヘッドと優れた走行系を搭載した,正攻法で音質重視の設計を行った1台でした。CT-1000には,新開発の「UNI X’talフェライトヘッド」が搭載されていました。耐摩耗性に優れたフェラ
イトの録音ヘッドと再生ヘッドで,ギャップの直線性,均一性にも優れており,広帯域と高SN比を実現して
いました。録音ヘッドと再生ヘッドを1つにパッケージングしたコンビネーションタイプで,アジマスズレがお
きにくいしっかりした構造がとられていました。また,パッドの対向面に面積の広いセンターマスクを設ける
ことにより,録音ヘッドと再生ヘッドの磁気干渉を防止するとともに,ヘッドタッチも向上させていました。走行系は,ヘッドの左右にキャプスタンとピンチローラーをそれぞれ配置したクローズドループデュアルキャプ
スタン方式で,キャプスタン間のテープテンションが一定に保たれ,安定したテープ走行とヘッドタッチが確保
されていました。さらに,2個のキャプスタンにはそれぞれフライホイールが取り付けられ,この2つのフライホ
イールを1本の弾性ベルトで駆動させる型式がとられていました。フライホイールが2個使用されることで,す
ぐれた慣性モーメントが得られ,定速用と早送り・巻き戻し用にそれぞれ専用のモーターを搭載した2モーター
方式とあいまって,ワウ・フラッター0.05%(WRMS)の安定した回転を実現していました。
この当時流行が見られた,カセットをダイレクトに装着する「フルオープンローディング」が採用され,さらにカセ
ットを装着していないときはテープパス部をスッポリとカバーしてホコリなどの侵入を抑えるダストプロテクター
も装備されていました。テープセレクターは,BIAS2段,EQ3段の独立型で,ノーマル,クローム,フェリクロームテープに対応してい
ました。特に,クロームテープに対してはテープを装着するだけでBIASとEQが自動的にクローム用に切り替
わるオートテープセレクターが装備されていました。
ノイズリダクションとしてドルビーNR(Bタイプ)が装備され,ドルビーの正常な動作を得るために,400Hzの
オシレーターを内蔵し,3ヘッドの利点を生かしてL・R独立の微調整ツマミでソースとテープのレベルを合わ
せられるDOLBY RECキャリブレーションが搭載されていました。レベルメーターは,−40dB〜+5dBの対数圧縮型の針式メーターで,+5dBを素早く表示するLED式のピー
クレベルインジケーターもL・Rメーターの間に装備されていました。
その他機能としては,再生テープスピードが±6%(約半音階)可変できるピッチコントロールが装備されて
いました。マイク端子も備えられ,LINE,MIC独立でレベルコントロールが設けられていました。入。出力端
子はパラレルで2系統設けられていました。また,過大入力を抑えるために,ON/OFFできるREC LIMITER
が装備されていました。以上のように,CT-1000は,当時のパイオニアのカセットデッキのフラッグシップとして,3ヘッド,デュアル
キャプスタンをはじめ,しっかりした内容をもった1台でした。そしてここでの技術が後のCT-A1にもつながって
いきました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
品位の高い録音再生を可能にした
テクノロジィの全貌を紹介します。
◎録音・再生特性の向上を両立した
UNI X’tal3ヘッド方式。
アフターモニターがおこなえます。
●3ヘッドの良さを引き出すクローズドループ
デュアルキャプスタンの採用。
◎ドルビーシステムの効果を
テープごとに引き出せる
DOLBY RECキャリブレーションを装備。
◎使いやすさを求めてドアを取り去った
フルオープンローディング。
◎すぐれた音質を裏づける
高精度メカと豊富な付属機構。
●回転ムラ0.05%を実現したクローズドループ
デュアルキャプスタン+2モーター方式。
●クロームポジションテープ用自動切換え機構を
採用した,BIAS2段,EQ3段のテープセレクター
を装備。
●再生時にテープスピードを可変できるピッチ
コントロールを採用。
●対数圧縮のメーターアンプを組合わせたワイド
レンジレベルメーターを採用。−40dB〜+5dB
の広範囲にわたって直読できます。
●プリセットのできる,ソフトタッチのダイレクトチェンジ
操作ボタンを採用。
形式 | コンパクトカセットテープデッキ(ステレオ/モノ) |
録音ヘッド | UNI X’talフェライトヘッド×1 |
再生ヘッド | UNI X’talフェライトヘッド×1 |
消去ヘッド | フェライトヘッド×1 |
定速ドライブ用モーター | 電子制御DCモーター(ジェネレーター内蔵)×1 |
早送り・巻戻し用モーター | DCトルクモーター |
回転ムラ | 0.05%以下(WRMS) |
周波数特性 | (一般,LHテープ) 20〜17,000Hz
(30〜15,000Hz±3dB) (フェリクロームテープ) 20〜19,000Hz (30〜17,000Hz±3dB) (クロームテープ) 20〜19,000Hz (30〜17,000Hz±3dB) |
SN比 | (一般・LHテープ・ドルビーOFF) 54dB以上
(一般・LHテープ・ドルビーON) 64dB以上(5kHz以上) クロームテープ使用時は,さらに4.5dB向上(5kHz以上) |
歪率 | 1.3%以下(0dB) |
入力
(感度/最大許容入力/インピーダンス) |
マイク×2:0.22mV/100mV/30kΩ
6mm径ジャック (適合マイクインピーダンス250Ω〜30kΩ) ライン×4:60mV/25V/100kΩ ピンジャック(2chステレオ,パラレル2系統) |
出力
(基準レベル/最大レベル/負荷インピーダンス) |
ライン×4:450mV/680mV/50kΩ
ピンジャック(2chステレオ,パラレル2系統) ヘッドホン×1:62mV/93mV/8Ω 6mm径ステレオジャック |
使用半導体 | IC×4,トランジスタ×98(内FET4個),ダイオード×96
(内ツェナーダイオード×7 LED×4) 他にモーター制御用としてIC×1,トランジスター×3,ダイオード×3 |
付属機能 | (1)ドルビーシステム(ON/OFF)ランプ表示付
(2)MPXフィルター(ON/OFF) (3)テープセレクター(STD,Fe-Cr,CrO2)クロームテープ用 自動切換え機構つき(ランプ表示)つきバイアス/イコライザー 独立切換えスイッチ (4)マイク,ライン入力ミキシングコントロール (5)スタート地点メモリー機構つきテープカウンター (ON/OFF)(REW→STOP/PLAY(REC)) (6)入力レベルリミッター(ON/OFF) (7)ワイドレンジレベルメーター(−40〜+5dB) (8)ピークレベルインジケーター(+5dB指示) (9)ドルビーキャリブレーション機構(400Hzテストオシレーター内蔵) (10)ピッチコントロール(±6%) (11)入出力各レベルメモリーマーカー機構 (12)カセットハーフ背面照明装置 (13)マイク・ライン各入力,出力VRは41ステップクリックつき (14)ACアウトレット(UNSWITCHED 300W MAX) (15)パラレル入出力ジャック |
電源 | AC100V,50/60Hz(切換え不要) |
消費電力 | 38W |
外形寸法 | 420(W)×187(H)×362(D)mm
481(W)×187(H)×362(D)mm・JA-R102装着時 |
重量 | 11.7kg |
※本ページに掲載したCT-1000の写真,仕様表等は1977年9月
のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社
に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・
引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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