PC-4280の写真
Aurex PC-4280
STEREC CASSETTE DECK ¥100,000

1977年にオーレックス(東芝)が発売したカセットデッキ。可搬型カセットデッキとして独自の箱形
フォルムに3ヘッド構成をはじめ,高性能なデッキメカを搭載した高級デッキでした。可搬型デッキの
中でも音の良い1台でした。

PC-4280の最大の特徴は可搬型デッキとしては珍しい3ヘッドシステムの採用でした。録音同時
再生モニター,録音,再生性能の追求という面でメリットのある方式ながら,可搬型カセットデッキで
は,当時ほとんど見られませんでした。
再生ヘッドには,1ミクロンのナローギャップに仕上げられたハイパーボリック(双曲線)形状のAS
(オール・センダスト)ヘッドが搭載されていました。録音ヘッドには,5ミクロンのワイドギャップを採
用したフェライトヘッド,消去ヘッドには,効率の良いダブルギャップ・フェライトヘッドが搭載されてい
ました。いわゆるコンビネーション型ではなく独立型3ヘッド構成となっていました。

再生ヘッド録音ヘッド消去ヘッド

アジマス調整

3つのヘッドは剛性の高い亜鉛ダイカスト製のヘッドブロックに精密にマウントされ,高い精度を維
持するようになっていました。また,オシレーターの信号を左右独立で同じレベルで流し,録音され
た信号を同時再生して,L+Rのレベルをメーターで見ながらアジマス調整用ネジでアジマスを調
整できるようになっていました。アジマスが狂っているとL・Rの位相差が生じ,和信号のレベル低
下が起こることを利用した,シンプルながら巧妙なアジマス・アライメントシステムでした。

PC-4280の駆動メカ系
PC-4280の駆動系PC-4280のモーター

走行系は1モーター構成でしたが,モーターには高精度な38パルスのFGサーボモーターが搭載され
ていました。また,外乱に強い安定した走行を実現するために,キャプスタン駆動ベルトとリール台駆動
ベルトが独立した独立駆動方式がとられ,大型のフライホイールと真円度0.05ミクロン以下の高精度
なキャプスタンシャフトが搭載されていました。
テープの微振動による変調ノイズを抑えるため,ルビー軸受けを使った高精度ローラーを消去ヘッドの
後に設置し,ローラー自体の慣性モーメントの効果とテープパスの短縮によりテープの微振動を吸収す
る「スクレープ・フィルター」が搭載されていました。また,テープの安定走行を図るために,消去ヘッドと
キャプスタンの近くの2ヶ所に摩擦係数の少ないテフロン混合タイプのテープガイドを設置した,ツインテ
ープガイドシステムが採用されていました。
カセットテープの装着は,素早く装着可能で,ヘッド等のメインテナンスが容易というメリットを考えてダ
イレクトローディング方式がとられていました。

録音・再生アンプ系には素子が厳選された高精度なものが搭載され,アンプ単体の歪み0.02%,録
音・再生の総合歪率も0.9%を実現していました。再生ヘッドに直結されたイコライザアンプは,3段直
結回路,集団にはエミッタフォロアが採用され,低歪み,正確なイコライザーカーブを実現していました。
電源は+−2電源タイプが採用されていました。
生録に重要なマイクアンプには,±20V電源を使用し,100mVの高耐入力(アッテネーター使用で最
大1V)を確保していました。初段には,ローノイズ用の中でも特にパルス性ノイズの少ない素子が選択
され,コンデンサ,抵抗も大幅にローノイズタイプが採用されていました。これらの結果100dB以上のリ
ニアリティを実現していました。また,生録時のヘッドホンモニターのために,純コンプリメンタリー回路の
高出力ヘッドホンアンプが搭載されていました。

PC-4280+アクセサリーボックスダストカバーとアクセサリーボックス

機能としてその他に,3ヘッドを生かした録音感度調整,−20dBのマイクアッテネーター,生録時の低域の
濁りを抑えるローカットフィルター,不意の大入力に対応したON/OFF可能なピークリミッター,スイッチ1つ
でバッテリー残量が確認できるバッテリーチェックスイッチなどが搭載されていました。また,電源は乾電池
カーバッテリー,AC100Vの3電源となっていました。

PC-4280には,野外での活用を考えてショルダーベルトが付属し,また,操作部をほこり等から保護する
ダストカバーが付いていました。ダストカバーは閉めたままでもポーズボタンの操作が可能となっていました。
さらに,マイクロホン,カセットテープなど生録に必要な小物を収納できるアクセサリーボックスが付属し,本
体にドッキングしての使用も可能となっていました。

以上のように,PC-4280は,当時各メーカーから出されていた可搬型カセットデッキの中でも個性的な1台
で,性能も良く隠れた名機だと思っています。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


あらゆる録音現場で,
クオリティの高い結果を。

消去,録音,再生と
完全に独立した3ヘッドシステム。
 ◎独立3ヘッドシステム
 ◎1μナローギャップの再生ヘッド
 ◎5μギャップの録音ヘッド
 ◎ダブルギャップの消去ヘッド
 ◎スクレープ・フィルター
 ◎アジマス・アライメント
 ◎ツインテープガイド
 ◎独立駆動方式メカニズム
 ◎38パルスFGサーボモーター
 ◎ダイカスト・ヘッドブロック
 ◎低歪率のアンプ回路設計
 ◎再生イコライザーアンプ
 ◎100mVの耐入力,マイクアンプ
 ◎高出力ヘッドホーンアンプ

文字通り,バーサタイル。
機動性の3電源。
 ◎DC-DCコンバーター内蔵
 ◎録音キャリブレーション
 ◎モニター切換スイッチ
 ◎マイクアッテネーター
 ◎ローカットフィルター
 ◎ピークリミッター
 ◎バイアス・イコライザ切換スイッチ
 ◎ワイドレンジピークレベルメーター
 ◎メーターライト・バッテリーチェック
 ◎録音マスターボリューム
 ◎モニター専用ボリューム
 ◎テープ残量照明ランプ
 ◎フルオートストップ機構
 ◎ダイレクト・ローディング
 ◎スタンバイ機構
 ◎アクセサリーボックス
 

●PC-4280の規格●

駆動方式 1モーター・ベルトドライブ
使用モーター 38パルスFGサーボモーター
周波数特性 20〜15,000Hz(ノーマルテープ)
20〜18,000Hz(AXテープ)
歪率 0.9%(AXテープ,0dB・400Hz)
SN比 60dB(AXテープ,ピークレベルWTD)
ワウ・フラッター 0.07%(WTD・RMS)
バイアス周波数 105kHz
使用半導体 IC2,Tr57,Dio26
入力端子
(感度/インピーダンス)
MIC 0.25mV(600Ω〜10kΩ)
LINE 100mV(50kΩ)
出力端子
(出力/インピーダンス)
LINE 0.4V(50kΩ)
ヘッドホーン 5mW/8Ω
供給電源 DC12V(乾電池,カーアダプター使用)
AC100V(ACアダプター使用)
消費電力 約8W(乾電池の場合は単1×8本で連続10時間)
外形寸法 300W×135H×175Dmm(本体)
重量 3.4kg(本体,電池別)
その他 アクセサリーボックス(300W×135H×85Dmm)付属
ACアダプター,カーアダプター,ショルダーベルト付属
※本ページに掲載したPC-4280の写真,仕様表等は1977年9月
 のAurexのカタログより抜粋したもので,東芝株式会社に著作権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等するこ
 とは法律で禁じられていますのでご注意ください。
   
 
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