Aurex PC-G8AD
STEREO CASSETTE DECK ¥74,800

1981年に,オーレックス(東芝)が発売したカセットデッキ。オーレックスは,1977年より独自のノイズリダクション
「アドレス(adres)」を展開し,単体のノイズリダクションユニットや搭載したカセットデッキを発売していきました。当
初は10万円超と搭載デッキも高価でしたが,次第に手ごろな価格のモデルを発売し,ドルビーCの向こうを張って,
多くの搭載デッキを発売し,新ノイズリダクション「アドレス」の展開に頑張りを見せていました。そうした中,中級機
の主力モデルとして発売されたのがPC-G8ADでした。

adresはAutomatic Dynamic Range Expansion Systemの略で,オーレックスが1977年に発表したNR
(ノイズ・リダクション)システムで,基本的には,dbxに近い1:1.5の圧縮・伸張型の方式でした。これに,ブリージ
ング(息つき現象)の目立ちやすい高域にドルビーでおなじみの可変エンファシスを組み合わせ,SN比を高域で30
dB以上改善し,ダイナミックレンジを100dB以上に拡大し,歪みを6分の1に改善するというものでした。音的には不
自然さが比較的少なく,繊細な音を特徴としていて,当時かなり評価されていました。単体ユニットも発売され,アド
レスでエンコードされたアナログレコードも発売されるなど,オーレックスの頑張りは見事でしたが,結局普及はあま
りしませんでした。搭載デッキは,オーレックスだけですが,ユニットとしては,OEMでオンキョーやアカイなどからも
発売されていました。
PC-G8ADのアドレスには,さらに,サーフェスノイズ,ダイナミックレンジの問題などをクリアするアドレスエンコード
のレコードを再生するアドレスディスクポジションも搭載されていました。また,ノイズリダクションとしてドルビー(Bタ
イプ)も搭載されていました。

ヘッドは,オーソドックスな2ヘッド構成で,PC-G8ADは,オーレックスで初めて,録再ヘッドにアモルファス合金ヘ
ッドが搭載されていました。アモルファス(非結晶)合金は,通常の結晶合金と異なり結晶構造をもたないため,従
来の磁性材料にないすぐれた特性をもっており,1980年代に入り,各社が磁気ヘッド,コア材などに採用を始め
ていました。比抵抗が大きく,多層ラミネート構造とすることができるので高周波損失が少なく,実効透磁率の周波
数特性が向上するため,周波数特性にすぐれ,バイアス効率が高い,飽和磁束密度が高くMOL(最大録音レベル)
特性が良い,センダストの2倍の硬度をもつため耐摩耗性にすぐれる,磁気歪みがほとんどなく摺動ノイズがきわめ
て小さく,周波数特性が良好で,高域のSN比が良い,などの特徴があり,メタルテープのもつすぐれた性能に対応
できる録再ヘッドとなっていました。また,消去ヘッドには,消去効率の良い2ギャップAF(オーレックスフェライト)ヘッ
ドが搭載されていました。

走行系は,オーソドックスな1ウェイシングルキャプスタンでしたが,キャプスタン駆動とリール台駆動をそれぞれ独
立したモーターで行うシンプルな2モーター方式となっていました。特に,リール台用のモーターにコッキングの少な
いものを使用してトルクムラを改善していました。また,モーターの回転方向によって巻き取り方向を変える自動反
転巻き取り機構では,従来の反転アイドラー式に代えて,首振り式ギアドライブ機構が採用され,高精度ギアと,反
転機構部にフリクションを要さない設計により,リール台駆動用モーターの回転制御能力を高めていました。さらに
主要回転軸を同一シャーシ上にレイアウトし,回転系の精度が向上していました。加えて,定速・高速時に,それぞ
れ独立したバックテンションを設定し,走行を安定させ,音の濁りを生じる変調ノイズを抑えていました。走行系やア
ンプ系を支える電源部は,±2電源回路とオール定電圧回路による強力なものが搭載されていました。

テープ走行の操作系は,フェザータッチで軽い操作が可能でした。さらに,操作部自体マグネットで本体に装着され
外すと赤外線リモコンになっているという特徴的な操作部となっていました。特殊レンズ方式フィルター採用の高感
度赤外線リモコンで,動作確認のためにPLAY,REC,PAUSEは本体のパネルが点灯するようになっており,さ
らにリズミックオペレーション(音が出る,ON-OFF可能)となっていました。
また,RECボタン押すだけで録音がスタートできるワンタッチレコーディングとなっており,PAUSEボタンと兼用に
なっているるMUTEボタンは,録音中に押している時間だけ無録音部分ができ,指を離すとPAUSE(一時停止)
になる便利な機構となっていました。

その他,機能的には前後1曲の頭出しが出来るMQSSが搭載され,このスイッチをONにすると早送り,巻き戻し
をすると,前後の無録音部分を検知し,自動的に停止して再生状態に移るようになっていました。また,このMQSS
のスイッチは,MPXフィルターのスイッチにもなっていました。
テープカウンターは,3桁のFL(蛍光管)デジタルカウンターと点滅するドットの組み合わせで,ドットが5回点滅でカ
ウンターが1アップする仕組みになっており,読み取りやすい仕組みとなっていました。レベルメーターも2色のFLに
よるもので,アタックタイム10msec,スライドボリュームと合わせた縦型で,レベル設定が感覚的にしやすい形に
なっていました。
背面の入力端子は,通常のRCAピンのLINE入力に加え,L・R独立のマイク入力も装備され,マイクによる録音も
可能となっていました。

以上のように,PC-G8ADは,中級機としてオーレックス自慢のアドレスを生かす性能と機能性を実現し,他社とは
やや毛色の異なるオーレックスらしさももった1台でした。すっきりした音は,アドレスらしい繊細さをもつものでした。


Aurex PC-G7AD
STEREO CASSETTE DECK ¥69,800


Aurex PC-G5AD
STEREO CASSETTE DECK ¥54,800

また,PC-G8ADには,弟機としてPC-G7AD,PC-G5ADが発売されていました。基本的な構成やデザインは,
ほぼ同一ですが,PC-G7ADでは,録再ヘッドがアモルファス合金ヘッドではなく,スーパーAP(High-Bハード
パーマロイ)ヘッドになっていました。PC-G5ADでは,さらに赤外線着脱式リモコンが,通常の操作系となり,別
売のワイヤードリモコン(RM-20 ¥6,000)に対応となっていました。また,テープカウンターがFL式から通常の
メカニカルカウンターになっていました。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




アドレスデッキは,「G」の時代に入った。

夢のアモルファスヘッド採用。
着脱可能のワイヤレスリモコン付。

◎アモルファスヘッド
◎着脱可能のワイヤレスリモコン
◎2モーターICロジック・ニューシンプルメカ
◎頭出しに便利なMQSS機構
◎FL(蛍光)エレクトロニックデジタルカウンター
◎見やすいFL(蛍光)ピークプログラムデジタルメーター
◎アドレスレコード再生可能
◎ポーズ/ミュート

●音質重視の±2電源
●便利なワンタッチレコーディング
●タイマースタンバイメカ
●ドルビーNR
●音量合わせに便利な出力Vol
●ヘッドホーン端子
●マイク端子は背面




●仕様●

  PC-G8AD PC-G7AD PC-G5AD
トラック方式 ステレオ ステレオ ステレオ
録音方式 交流バイアス(85kHz) 交流バイアス(85kHz) 交流バイアス(85kHz)
推奨テープ MX,AX,AD MX,AX,AD MX,AX,AD
ヘッド 消去×1(AF)
録音・再生×1
(ハイパボリック形状アモルファスAA)
消去×1(AF)
録音・再生×1
(ハイパボリック形状スーパーAP)
消去×1(AF)
録音・再生×1
(ハイパボリック形状スーパーAP)
モーター キャプスタンモーター×1
リールモーター×1
キャプスタンモーター×1
リールモーター×1
キャプスタンモーター×1
リールモーター×1
ワウ・フラッター 0.035%(WRMS)
±0.08%(EIAJ)
0.035%(WRMS)
±0.08%(EIAJ)
0.04%(WRMS)
±0.09%(EIAJ)
早巻時間 75秒(C-60) 75秒(C-60) 75秒(C-60)
周波数特性 20Hz〜20kHz(MX)
30Hz〜18kHz±3dB(MX)
20Hz〜19kHz(MX)
30Hz〜18kHz±3dB(MX)
20Hz〜19kHz(MX)
35Hz〜17kHz±3dB(MX)
SN比 88dB(アドレスIN,AXテープ) 88dB(アドレスIN,AXテープ) 88dB(アドレスIN,AXテープ)
ダイナミックレンジ 103dB(1kHz,AX) 103dB(1kHz,AX) 103dB(1kHz,AX)
ノイズレベル 100Hz:−80dB
1kHz:−90dB
10kHz:−93dB
100Hz:−80dB
1kHz:−90dB
10kHz:−93dB
100Hz:−80dB
1kHz:−90dB
10kHz:−93dB
3次高調波歪率 0.3%(アドレスIN,400Hz) 0.35%(アドレスIN,400Hz) 0.4%(アドレスIN,400Hz)
入力端子 マイク:0.25mV(600Ω〜10kΩ)
ライン:70mV(50kΩ)
マイク:0.25mV(600Ω〜10kΩ)
ライン:70mV(50kΩ)
マイク:0.25mV(600Ω〜10kΩ)
ライン:70mV(50kΩ)
出力端子 ライン:0.4V(50kΩ)Vol.max
ヘッドホーン:1mW(8Ω)Vol.max
ライン:0.4V(50kΩ)Vol.max
ヘッドホーン:1mW(8Ω)Vol.max
ライン:0.4V(50kΩ)Vol.max
ヘッドホーン:0.2mW(8Ω)Vol.max
電源 100V・AC 50/60Hz 100V・AC 50/60Hz 100V・AC 50/60Hz
消費電力 AC16W AC16W AC15W
最大外形寸法 420W×110H×315Dmm 420W×110H×315Dmm 420W×110H×270Dmm
重量 4.9kg 4.9kg 4.3kg
※本ページに掲載したPC-G8AD,PC-G7AD,PC-G5ADの写真
 仕様表等は1981年10月のAurexのカタログより抜粋したもので,
 東芝株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
 無断で 転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意
 ください。

   
 
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