Ａｕｒｅｘ ＰＣ-Ｇ９０ＡＤ
ＳＴＥＲＥＯ ＣＡＳＳＥＴＴＥ ＤＥＣＫ ￥１３８，０００
１９８２年に，オーレックス（東芝）が発売したカセットデッキ。オーレックスが１０年にわたって頑張っ
てきた独自のノイズリダクションシステム「ａｄｒｅｓ（アドレス）」搭載デッキとしては最終形で，最も高
性能を誇る完成度の高い１台でした。
走行系は，デュアルキャプスタン方式を採用し，キャプスタン用にＤＤモーター，リール用にＤＣモー
ター，メカニズム用にＤＣモーターを搭載した３モーター方式で，ワウ・フラッター０．０２２％（ＷＲＭＳ）
の高精度なテープ走行を実現していました。メカニズム系は，ダイキャスト製のフロントパネルに直接
固定する構造をとり，また，専用のマイコンコントロールとアシストモーターによるメカ駆動方式を採用
することで，振動等による走行系の乱れを抑えていました。
ヘッドは，録音・再生コンビネーションヘッドによる３ヘッド構成となっていました。録音・再生ヘッドは
スーパーＡＰ（Ｈｉｇｈ-Ｂハードパーマロイ）ヘッドで，優れた磁気特性と耐摩耗性を実現していました。
特に，再生ヘッドは，コアのラミネート枚数を従来の倍の１２枚として高周波損失を低く抑え，高域の
周波数特性を高めていました。消去ヘッドは２ギャップフェライトヘッドを搭載していました。
自慢の「アドレス」には，動特性に改良を加えた新タイプＩＣを開発し，搭載していました。この新タイプ
のアドレスは，テープの種類への対応力を高め，立ち上がりの鋭い信号でも，時間の遅れなく録音で
きるように，レベルセンサの動作を，高域で大レベルになるほど速くする特性となっていました。
また，ドルビーＮＲも，より性能の優れたタイプが搭載され，ドルビー使用時の音質も改善されていま
した。
さらに，ＰＣ-Ｇ９０ＡＤでは，テープへの対応性を高めるために，新たに「テープ・オート・コンピュータ
システム」が搭載されていました。テープごとに異なる最適バイアス，最適録音感度に自動調整され
るシステムにより，よりフラットな周波数特性と録音感度のテープによるバラツキの低減が実現され
よりアドレスの特性を引き出せるようになっていました。
再生アンプには，デュアルＦＥＴ入力のヘッドアンプが搭載され，再生ヘッドからダイレクトに入力され
る「ダイレクトカップル」となっていました。録音時のバイアスは独立の発振回路が搭載されていまし
た。また，電源部は，オール定電圧の強力なものとされていました。
レベルメーターは，ＦＬ（蛍光管）表示による新タイプが搭載され，テープカウンターはリニアタイムの
ものが採用されていました。また，カウンターにより２点間を繰り返し再生できる「ブロックリピート」機
能や曲の頭を数秒間ずつ再生していく「インデックススキャン」機能も搭載されていました。
以上のように，ＰＣ-Ｇ９０ＡＤは，アドレス搭載デッキの最後を飾った，高性能なデッキでした。残念な
がらブランド故か，アドレスもこのＰＣ-Ｇ９０ＡＤもメジャーにはならず，レアともいえるものとなってしま
いましたが，その優れた音質には今でも高い評価が与えられるべき名機だと思います。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
