PC-X88ADの写真
Aurex PC-X88AD
STEREO CASSETTE DECK ¥99,800

1980年にオーレックスが発売したカセットデッキ。デザイン的には,PC-X45AD等と非常によく似てい
ますが,外装がブラックパネルとなり,オーレックスのプレステージモデルに使われる88番のナンバーを
与えられた,中身が充実・強化された高性能モデルでした。

PC-X88ADの最大の特徴は,オーレックスブランドのデッキでは数少ない,また,アドレス搭載デッキ初
の3ヘッド機であることでした。
録再ヘッドには,コンビネーション型で,録音ヘッド,再生ヘッドともそれぞれに最適なギャップを設定した
スーパーAP(High-Bハードパーマロイ)ヘッドで,優れた磁気特性と耐摩耗性を実現していました。また
録音ヘッドは再生ヘッドに比べて形状を大きくしてバイアス特性を向上させ,独自の先端形状によりコンター
(低域特性のうねり)を少なく抑えていました。さらに,録音ヘッドにはテープパッドが確実に接触するように
構成し,フェライトを採用した消去ヘッド部には,テンション機構が付加され,安定して良好なヘッドタッチが
確保されていました。

PC-X88ADのヘッドPC-X88ADの走行メカ部

走行系は,シングルキャプスタン方式でしたが,リール駆動,キャプスタン駆動それぞれに専用のモーター
を配した2モーター方式が採用されていました。また,モーターの回転方向によって巻き取り方向を変える
自動反転巻き取り機構では,通常使われる反転アイドラ方式にかえて,首振り式ギアドライブ機構を採用
し,高精度ギアの採用と回転部にフリクションを要さない設計により,回転制御能力を高めていました。
さらに,主要回転軸を同一シャーシ上にレイアウトして,回転系の精度を高めていました。加えて,定速,
高速走行時には,それぞれ独立したバックテンションを設定して,走行安定性を高めていました。また,
このバックテンションは,ブレーキ機構にも使用され,スムーズなテープ走行の停止を実現していました。
走行系の操作系は,ICロジックによるフェザータッチとされ,ダイレクトに走行モードの切り替えが可能で
した。

アドレス(adres)はAutomatic Dynamic Range Expansion Systemの略で,オーレックスが1977
年に発表したNR(ノイズ・リダクション)システムで,基本的には,dbxに近い1:1.5の圧縮・伸張型の方
式でした。これに,ブリージング(息つき現象)の目立ちやすい高域にドルビーでおなじみの可変エンファシ
スを組み合わせ,SN比を高域で30dB以上改善し,ダイナミックレンジを100dB以上に拡大し,歪みを6分
の1に改善するというものでした。音的には,不自然さが比較的少なく,繊細な音を特徴としていて一時は
かなり評価されていました。PC-X88ADでは,このアドレスが,4chで搭載されたダブルアドレスシステム
とされ,録音・再生同時モニターが可能となっていました。また,ドルビーNRもダブルで搭載されていました。

また,PC-X88ADに内蔵されたアドレスは,外部のデッキにも使用できるようになっていました。スイッチを
EXT DECK/CALとし,CAL調整用ボリュームでデッキとのキャリブレーションをとることができるようにな
っており,ADJポジションでCAL調整用ボリュームを使って,他のアドレスデッキ,ユニットなどでアドレスエン
コードされたテープをデコードする際の再生レベル微調整ができるなど,単体の4chアドレスユニットとしての
機能も有していました。
さらに,サーフェスノイズ,ダイナミックレンジの問題などをクリアするアドレスエンコードのレコードを再生する
アドレスディスクポジションも搭載されていました。プレーヤーにCAL TONEシート(ソノシート)をかけ,再生
基準レベルを録音マスターボリュームで合わせるようになっていました。

アドレスレコード

電源部は,アドレス録音・再生,ドルビー録音・再生,アンプ2回路計6回路の±2電源定電圧回路とメカ用
定電圧回路の,合計13の定電圧回路の強力なものが搭載されていました。
また,再生ヘッドが,HighデュアルFET2SK-150による差動構成DCイコライザーアンプに直結されたダイ
レクトカップルヘッドアンプとなっていました。

テープポジションは,NORM,CrO,FeCr,METALの4ポジションで,バイアス値を微調整できる,BIAS
FINE ADJUST機構も装備されていました。さらに,入力切り替えをOSCにすると1kHzの基準信号が入
力でき,録音感度調整つまみによってNR使用時に重要なテープごとの録・再レベルの調整もできるように
なっていました。

以上のように,PC-X88ADは,アドレスデッキ初の3ヘッドモデルとして,アドレスを有効に生かす機能が充
実し,安定した走行系,優れたアンプ部などに支えられた高性能なデッキでした。特にアドレスを使用した際
の音は,さわやかさを感じさせる繊細ですっきりした美しいものでした。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


音の素顔をそのまま伝える
アドレスサウンド。

3ヘッドの4chアドレス。
ユニット使用可能。
アドレスディスクポジション付。

◎レベル変動を少なくした3ヘッドシステム
◎ダブルアドレスシステムにより,同時モニター可能
◎2モーターICロジック・ニューシンプルメカ
◎アドレスユニットとして他のデッキにも使用可能
◎オール定電圧回路の強力電源部と
 ダイレクトカップル度ヘッドアンプ
◎アドレスレコード再生可能
◎録音感度調整が可能
◎オート&メモリープレイ
◎タイマースタンバイメカニズム
◎ポーズ/ミュート
●仕様●



 
 

トラック方式 ステレオ
録音方式 交流バイアス(85kHz)
ヘッド 消去×1(AF)
録音×1(スーパーAP)
再生×1(スーパーAP)
モーター キャプスタンモーター×1
リールモーター×1
ワウ・フラッター 0.035%(WRMS)
早巻時間 80秒(C-60)
周波数特性 20Hz〜20kHz(MX)
SN比 88dB(アドレスIN,AXテープ)
ダイナミックレンジ 103dB(1kHz,AX)
ノイズレベル 100Hz:−80dB
1kHz:−90dB
10kHz:−93dB
3次高調波歪率 0.3%(アドレスIN,400Hz)
入力端子 マイク:0.25mV(600Ω〜10kΩ)
ライン:70mV(50kΩ)
出力端子 ライン:0.4V(50kΩ)Vol.max
ヘッドホーン:0.4mW(8Ω)Vol.max
電源 100V・AC 50/60Hz
消費電力 AC20W
最大外形寸法 420W×110H×280Dmm
重量 4.8kg
※本ページに掲載したPC-X88ADの写真,仕様表等は1981年2月
 のAurexのカタログより抜粋したもので,東芝株式会社に著作権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等するこ
 とは法律で禁じられていますのでご注意ください。
   
 
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