LUXMAN
PD350
VACUAM DISC STABLIZER TURNTABLE
¥240,000
1983年に,ラックスが発売したターンテーブルシステム。ディスクを真空ポンプの力で吸着するシステム
を搭載したターンテーブルで,PD-310の上級機にあたるモデルでした。ラックスは1980年に,
PD555
とPD300を発売し,すでにディスク吸着システムを搭載していました。PD350はそれらの後継機にあたる
モデルで,PD300系列の中では最上級機でした。
ターンテーブルは,アルミ材と黄銅材を接合した構造を持つ,自重9.5kg,慣性質量1200kg・cm2と いう
重量級のものが搭載されていました。異種金属を接合した構造をとることで,単一金属に固有の共振であ
る「鳴き」を排除し,圧倒的な慣性質量とあいまって静粛で安定した回転を可能としていました。
ターンテーブルの駆動はベルトドライブ方式で,駆動用ベルトには,「スーパー・アラミド・ベルト」が採用され
ていました。駆動用ベルトに要求される,伝達効率の高さ,過渡応答の良さ,ベルト自身の共振の少なさ,
伸びにくく,しなやかで軽いなどの条件を比較的高いレベルで満足できる素材として,アメリカのデュポン社
が開発したアラミド繊維が使用されたベルトでした。このアラミド繊維は,高い強度を持ち,特にヤング率(引
っ張ったときの伸びにくさ)はスチール材の2倍以上を誇るものでした。「スーパー・アラミド・ベルト」は,この
アラミド繊維をナイロン繊維との平織りにして,継ぎ目のないエンドレスベルトを作った上で,ネオ・プレーンゴ
ムを極薄にコーディングしたもので,アラミド繊維の引伸強度とネオ・プレーンゴムの高い摩擦係数を活かし
てエネルギーの伝達ロスがきわめて少なく,トレース中の負荷変動にも共振しにくく,安定したディスク回転が
得られる駆動系を形成していました。
モーターには,ブラシ&スロットレスのFGサーボDCモーターが搭載されていました。そして,駆動コイルに流
す電流波形を単純なスイッチング波形ではなく,滑らかな台形波として,トルクのムラを抑えると同時に,トル
クの発生を滑らかにし,モーター固有の振動を抑えていました。モーターの固定にはダンプ効果を効かせて
いました。
ターンテーブル軸受部とアームベース取付部をメインシャーシとし,肉厚の鋼板を重ね合わせて強固に一体
化した構造がとられ,この構造体=メインシャーシに,シャーシ・インシュレーションを組み合わせて外部から
の振動遮断するようになっていました。
アームベースは黄銅製で,厚さ17mm,重量1.2kgの重量級のものが採用され,ディスク→ターンテーブル
→軸受け部→アーム取付部という再生系の剛体構造化が一貫されていました。アームベースは別売で,様々
なトーンアームに対応するために,定価¥10,000で4種類が用意されていました。
PD350は,上述のように,別売の吸着ユニット(バキュアム・ユニット)VS300(¥30,000)を組み合わせ
ると,ディスクをターンテーブルに吸着する吸着システムを使用することができるようになっていました。吸着
システムでは演奏中に吸着が解除される危険性が問題となります。その対策のため,ビクターの
QL-A95な
どの吸着システムでは,弱い力で常にポンプを動作し続けて吸着を維持していくシステムでした。VS300は,
吸着状態を自動復帰する機能を備え,安定した吸着レベルを保つサーボ機能も搭載され,吸着度の減じた
分だけの再吸着が行われるようになっていました。
以上のように,PD350は,アナログレコードの再生に傾けるラックスの熱意が表れたターンテーブルシステ
ムで,前シリーズのPD555等のPD3桁連番シリーズがやや実験機的な雰囲気があったのに対し,より完成
度が高まった落ち着いたデザインになり,音楽ファンにも導入しやすいものとなりました。内容的にも完成度が
高まり,現在でもアナログ再生にこのターンテーブルを使われている方がいるようです。