PIONEER PL-30L
PLAYER SYSTEM ¥59,800
1979年に,パイオニアが発売したプレーヤーシステム。パイオニアは,1978年に エクスクルーシ
ブブランドの超弩級の重量級プレーヤーP3を発売し高い評価を得ました。そのデザインや技術を継
承したマニュアル方式のアナログプレーヤーのシリーズ(PL-70,PL-50,PL-30)を発売しました。
このシリーズの末弟にあたる機種がPL-30L,PL-30でした。
ターンテーブルは,直径31cmのアルミダイカスト製で,慣性質量330kg-cm2の重量級で,細かな
回転数のゆれを抑えていました。ターンテーブルを駆動するモーターには,起動トルク1.3kg-cmの
クォーツPLL DCサーボホールモーターが採用され,針圧200gの負荷に対しても回転数変動を起こ
さない安定した回転を確保していました。モーターの磁極切換え(スイッチング)機構には,パイオニア
が製法開発したホール素子を3個使用し無接触切り換え方式としていました。
さらに,通常モーターの底部にあった支点(ベアリング)をターンテーブルのすぐ下へ移動し,重心と支
点の位置をほぼ一致させたS・Hローター(Stable Hanging Rotor)方式が採用されていました。こ
れにより,モーターシャフトと軸受け間のわずかなクリアランスで起こる,モーターシャフト最下部を支
点とする逆円錐運動によるターンテーブルの不安定動作を根本から解消し,高精度な加工,作りとあ
いまって,ワウ・フラッター0.013%以下(WRMS・FG直読法),78dBの高精度で静かな回転と高い
耐久性を実現していました。
トーンアームは,アルミパイプ製の実効長250mm・S字型ロングタイプアームが搭載され,スタビライ
ザー効果ももつアルミダイキャスト製の重量級アームベースが採用されていました。
さらに,低域共振を抑制するためのオイル制動方式が採用されていました。これは,アーム軸上部に
設けられたオイルカップに経時変化や温度による粘性変化がないシリコンオイルが注入されており,先
端を45度にカットしたリング状の制動フィンをしずめることでダンピングをかける構造で,垂直方向・水
平方向にそれぞれ適した制動量がワンポイントでかけられ,トーンアームの低域共振のQ(共振鋭度)
を低下させ,機械インピーダンスの平坦化が実現され,メインウェイトをアーム軸に近づけ,針先の等価
質量を低減させ,トーンアームの慣性モーメントを低減させたた質量集中方式とあいまって,低域共振
による混変調歪みや針飛びが大幅に抑えられていました。
そして,PL-30Lのアームには,別売でダンピング調整アダプターJP-506(¥8,500)が用意されて
おり,これを装着することで,上級機のPL-70と同様に制動レベル可変アームとなり,カートリッジに合
わせての調整ができるようになりました。さらに,重量のあるカートリッジ使用時のために,別売で交換
ウェイト(¥2,400)も用意されていました。
さらに,PL-30Lのトーンアームには,メカ音がほとんどしないサイレントリフトアップ機構が搭載されて
いました。これは,アームを上下させるエレベーション機構にスピーカーの動作原理を応用したムービ
ングコイル方式を採用し,DC電圧で無接触で動作するようになっていました。また,レコードの音溝の
終端位置検出には,アーム軸内部のホール素子とマグネットにより無接触検出を行う方式を採用し,
側圧の発生がなく,アームの感度を損なうことがない仕組みとなっていました。
また,オートリフトアップ機構のないPL-30も発売されていました。
重量級ターンテーブルや高精度のアームを支えるキャビネットは,上級機のような積層構造ではありま
せんでしたが,針葉樹系の材料を厳選して使用した箱形構造の高密度キャビネットで,内部にはしっか
りとした補強も行われていました。
インシュレーターは,プレーヤーシステムの重心とインシュレーターの支点をほぼ同じ高さにして,スプ
リングでサポートする上級機と同じ構造の「低重心構造インシュレーター」を搭載し,縦・横両方向の振
動を抑制する構造になっていました。
以上のように,PL-30Lは,エントリーモデルともいえる位置づけの1台でしたが,高級感のある外観
上級機の技術を継承したしっかりした中身を持つコストパフォーマンスにすぐれたプレーヤーシステム
でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
メカノイズを一切排除した
新開発サイレントリフトアップ機構を採用。
さらにSH・ローター,オイル制動トーンアームなど・・・
音質最優先の思想が息づく
完成度の高い電子リフトアップ・プレーヤーです。
◎メカ音を一切出さず,正確なオート
アップ動作を実現した新開発サイレ
ントリフトアップ機構。演奏後の余韻
にじっくりと浸れます。
◎回転ムラ0.013%以下(WRMS/
FG直読法)を実現したハイトルク
1.3kg-cmのSH・ローター方式ク
ォーツPLLモーターを搭載。
◎音を濁ごす原因となる混変調歪み
を低減させたシリコンオイル制動方
式トーンアームを採用。
◎振動解析から生まれた高密度キャ
ビネットと,新開発の低重心構造イ
ンシュレーターを採用。
モーター | Quartz PLL DCサーボ・ホールモーター |
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
軸受構造 | SH・ローター方式 |
ターンテーブル直径 | 31cm |
ターンテーブル慣性質量 | 330kg-cm2 (ター ンテーブルシートを含む) |
回転数 | 331/3・45rpm |
回転数切換え | ショートストロークスイッチによる電子式 |
回転ムら | 0.013%以下(WRMS/FG直読法) 0.023%以下(WRMS/JIS) |
SN比 | 78dB以上(DIN-B) 63dB以上(JIS) |
負荷変動 | 0%(針圧200g以内) |
起動特性 | 1/3回転以内 |
起動トルク | 1.3kg-cm |
速度検出方式 | 全周積分方式FG |
回転数偏差 | 0.002%以下 |
ドリフト | 時間ドリフト:0.00008%/h 温度ドリフト:0.00003%/℃ |
ブレーキ機構 | 純電子式 |
型式 |
オイル制動方式 スタティックバランスS字型パイプアーム |
実効長 | 250mm |
オーバーハング | 14mm |
トラッキングエラー | +2.1度 -1.2度 |
針圧調整 | ウェイト1回転1g(0.1g目盛り) |
適合カートリッジ自重 | 4~13g(附属シェル使用時) |
高さ調整範囲 | ±3mm |
ヘッドシェル | アルミインパクトプレスヘッドシェル自重10.5g |
使用半導体・その他 |
水晶×1,IC×6,ホール素子×4(PL-30はホール素子3) LED×4(PL-30はLED×3),トランジスター×4 ダイオード×4 |
付属機構 | クォーツロックインジケーター,クイックストップ |
消費電力 | 8W |
供給電源 | AC100V,50/60Hz兼用 |
外形寸法 | 490(W)×180(H)×401(D)mm |
重量 | 11.5kg |
PIONEER PL-30LⅡ
PLAYER SYSTEM ¥69,800
1981年に,モデルチェンジにより後継機のPL-30LⅡが登場しました。オートリフトアップ機構搭載
のPL-30Lの後継機にあたり,マニュアル機のPL-30の後継機は登場しませんでした。トーンアーム,
駆動モーターなどを中心に改良,変更が行われていました。
トーンアームは,軽く,剛性が高く,内部損失が大きいというトーンアームとしてすぐれた特性を求めて
新たにシェル一体型カーボングラファイト・ストレートアームを採用していました。当時最新の振動解析
により,もっとも共振の少ない,バランスを追求した形状になっていました。
また,新たにアームパイプ交換方式が採用され,ヘッドシェルの交換が容易にできるS字型ユニバー
サルアームパイプも装備され,多様なカートリッジに対応していました。さらに,シェル一体型ストレート
アームパイプは別売(JP-515¥7,000)もされ,カートリッジの数だけストレートアームを備えて,
アームごとカートリッジを交換するという使い方も可能となっていました。
フォノモーターは,SH・ローター方式が継承され,さらに原理的にコギング(電機子と回転子の磁気的
吸引力の磁気的吸引力回転角度に応じて細かく脈動する現象)が発生しにくいコアレス構造が新たに
採用され,起動トルク1.3kg-cmのコアレス・クォーツPLL DCサーボホールモーターが搭載されて
いました。
以上のように,PL-30LⅡは,パイオニアの「ARTISIIC SOUNDシリーズ」のプレーヤーシステムの
中の末弟として,比較的手ごろな価格ながら(現在なら軽く10万円超になるでしょうね。)バランスのと
れた高級感のあるデザインと,上級機の技術を巧みに継承した中身をもつプレーヤーシステムでした。
音楽を聴く道具として,使いやすさと性能をしっかりと両立させたパイオニアの技術力を感じさせる1台
でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
無共振の思想を貫いた
ヘッドシェル一体型カーボングラファイト
ストレートアーム。
SH・ローター方式コアレスモーター,
サイレントリフトアップ機構を採用。
本質を極めた音はかぎりなく新鮮です。
モーター | コアレスQuartz PLL DCサーボ・ホールモーター |
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
軸受構造 | SH・ローター方式 |
ターンテーブル直径 | 31cm |
ターンテーブル慣性質量 | 330kg-cm2 (ター ンテーブルシートを含む) |
回転数 | 331/3・45rpm |
回転数切換え | ショートストロークスイッチによる電子式 |
回転ムら | 0.011%以下(WRMS/FG直読法) 0.023%以下(WRMS/JIS) |
SN比 | 82dB以上(DIN-B) 63dB以上(JIS) |
負荷変動 | 0%(針圧200g以内) |
起動特性 | 1/3回転以内 |
起動トルク | 1.3kg-cm |
速度検出方式 | 全周積分方式FG |
回転数偏差 | 0.002%以下 |
ドリフト | 時間ドリフト:0.00008%/h 温度ドリフト:0.00003%/℃ |
ブレーキ機構 | 純電子式 |
型式 |
オイル制動方式 スタティックバランスツインパイプ交換方式トーンアーム |
実効長 | 250mm |
オーバーハング | 12mm |
トラッキングエラー | +2.7度~-1.3度 |
針圧調整 | ウェイト1回転1g(0.1g目盛り) |
適合カートリッジ自重 | 3~11g(ストレート) 6~32g(S字シェル込み) |
高さ調整範囲 | +3mm,-4mm |
ヘッドシェル | 炭素繊維複合材 |
使用半導体・その他 |
水晶×1,IC×10,ホール素子×3 LED×4,トランジスター×11 ダイオード×6 |
付属機構 | クォーツロックインジケーター,クイックストップ |
消費電力 | 13W |
供給電源 | AC100V,50/60Hz兼用 |
外形寸法 | 490(W)×180(H)×401(D)mm |
重量 | 11.8kg |
k-nisi@niji.or.jp※本ページに掲載したPL-30,PL-30L,PL-30LⅡの写真・
仕様表等は1979年10月,1981年9月のPIONEERのカ
タログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等
をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
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