PIONEER PL-570
FULL AUTO DD PLAYER ¥59,800
1980年に,パイオニアが発売したフルオートプレーヤー。パイオニアは,1968年に国産としては初の本
格的プレーヤーシステムPL-41を発売するなど,アナログプレーヤーの分野でもすぐれた製品を発売して
きたブランドで,超弩級機といえるものから普及機まで多くの製品群を発売し,高い評価を受けていました。
そんなパイオニアが,1980年代に入り,当時の売れ筋価格帯に投入したフルオートプレーヤーシステム
がPL-570でした。
ターンテーブルは,直径33cmのアルミダイキャスト製で,コギングのないコアレスDCサーボ・ホールモー
ターによりダイレクトドライブされていました。このコアレスモーターには,軸受け構造そのものから回転精度
を高めたSH・ロー ター方式が採用されていました。SH・ローター方式は,Stable Hanging Rotorの略
で,これまでモーターの底部にあったローターの支点をターンテーブルのすぐ下に移動することによりターン
テーブルの重心と支点をほぼ一致させ,安定した回転を実現し,モーターの裸特性を大きく向上させたもの
でした。
さらに,回転制御には,水晶発振器の高精度を生かしたクォーツPLLサーボが搭載され,従来の2倍(同社
比)の着磁パルスを持つ全周積分方式と新たに開発された高速度サーボ回路により,安定性がさらに高め
られ,ワウ・フラッター0.012%以下(FG直読法)という回転精度を実現していました。
また,コアレス構造の弱点とされていたトルクの問題に対しては,新開発ICと大きくフラットなコイルの採用
で,1.3kg-cmのハイトルクと1/4回転以内で低速回転とするすぐれた起動特性を確保していました。
トーンアームは,軽量・高剛性の新素材カーボングラファイトを使用し,力学的に安定性の高いストレート
パイプとしたストレートアームを搭載していました。アルミダイキャスト製のベースに支えられ,ローマスで
共振の抑えられたトーンアームとしていました。ヘッドシェルも,軽量なカーボンファイバーを使用し,ロー
マス化を徹底していました。これにより,ハイトラッカビリティを実現しつつ,混変調歪みの発生も低減され
ていました。
フルオートプレーヤーとして,トーンアームの水平・垂直方向の動作,フォノモーターの回転・停止,回転数
の切換等を,マイクロコンピューターで集中コントロールするようになっており,信頼性・安全性の高いオー
ト動作を実現していました。操作ボタンは,すべてキャビネットの前面に配置され,電源,スタート,ストップ
等の使用頻度の高いスイッチは自照式スイッチを採用していました。
キャビネットは,アルミダイキャスト製で,薄型ながら堅牢なつくりとなっていました。一見普通の薄型キャビ
ネットのように見えますが,パイオニアがPL-1200などの時代から採用していた二重構造キャビネットで
した。筐体支える支柱は,スプリングを用いたコアキシャルサスペンションになっており,このスプリングで
ターンテーブル部,トーンアーム部を固定した下部のキャビネットを支え,上部のキャビネットを独立させた
フローティング構造となっていました。これにより,スピーカーの音圧や床などから伝わる振動の悪影響や
共振を抑え,ハウリングを防いでいました。
PL-570には,パイオニアが独自に開発した高出力型のMCカートリッジ・PM-MC3が付属していました。
サマリウムコバルトマグネットを同極対向配置した6極4マグネット構造により,磁束密度を飛躍的に向上
させ,高効率な発電を可能とし,MC型ながら2.5mVという高出力を実現していました。左右独立発電で
チャンネル相互干渉も抑えられ,すぐれたセパレーション特性を確保し,自重も3.1gとローマス化も実現
していました。さらに,MCカートリッジでありながら針交換も容易にできる構造とし,ヘッドアンプや専用トラ
ンスを必要としないことも含め,MMカートリッジ並の使いやすさを実現したカートリッジでした。
以上のように,PL-570は,手頃で使いやすいフルオートプレーヤーとして作られていながら,各部にパイ
オニアが培ってきた技術がしっかり投入された高度な内容をもってまとめられている1台でした。普通に置
くだけでしっかりと性能が発揮できる完成度は音楽を聴く道具として使いやすいものでした。
そして,当時のパイオニアのコンポーネントシステムにも組み込まれる主力機でもありました。シャンペン
ゴールドのメタリックな外観も当時のパイオニアに多く使われたデザインでした。この年のグッドデザイン選
定商品にも選ばれていました。
PL-570には,弟機のPL-470も発売されていました。外観デザイン等非常に共通点が多く,一見では,
見分けがつかないほどですが,キャビネット,ボタンの配置等微妙な違いがありました。
内容的には,ターンテーブルがやや小型で軽量となり,駆動モーターもやや小型,トーンアームがやや短く,
ベース部が異なり,高さ調整機構がない,フルオートの制御がマイコン制御ではないなどの各所に合理化
が行われ,違いがありましたが,基本的な性能は,ほぼ近いもので,コストパフォーマンスが高められてい
ました。
PIONEER PL-470
FULL AUTO DD PLAYER ¥44,800
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
PL-570
2.5mVの高出力MCカートリッジを装備。
高音質追求の電子フルオート機。
◎すぐれた音質をMM並の使いやすさで実現。
2.5mVの高出力MCカートリッジ。
◎ローマス(軽等価質量)化により,ハイトラッ
カビリティを実現。新素材カーボングラファ
イト採用のストレートアーム。
◎回転ムラ0.012%以下(FG直読法)。
SH・ローター方式&コアレスモーター採用。
◎マイコン制御で高精度のフルオート動作を実現。
前面操作型電子フルオート機構。
●コアキシャルサスペンションキャビネットを採用。
PL-470
PL-570の技術を受け継ぐ,回転精度,
トラッカビリティのすぐれたプレーヤーです。
◎回転ムラ0.012%以下(FG直読法)を実現。
音の濁りを抑えた,SH・ローター方式&コア
レスモーターを搭載。
◎ローマス化によりハイトラッカビリティを実現。
2.5mVの高出力MCカートリッジ&カーボン
グラファイト採用のストレートアーム。
◎新時代を予感させる操作感覚を実現。前面
操作型フルオート。
◎ハウリングを効果的に抑制。コアキシャル
サスペンションキャビネット採用。
●PL-570,PL-470の仕様●
■フォノモーター■
PL-570 | PL-470 | |
モーター | コアレスQuartz PLL DCサーボ・ホールモーター | コアレスQuartz PLL DCサーボ・ホールモーター |
軸受け方式 | SH・ローター方式 | SH・ローター方式 |
駆動方式 | ダイレクトドライブ | ダイレクトドライブ |
ターンテーブル | 直径33cmアルミダイキャスト | 直径32cmアルミダイキャスト |
回転数 | 331/3・45rpm | 331/3・45rpm |
回転ムラ | 0.012%以下(WRMS/FG直読法) 0.023%以下(WRMS/JIS) |
0.012%以下(WRMS/FG直読法) 0.025%以下(WRMS/JIS) |
SN比 | 78dB以上(DIN-B),65dB以上(JIS) | 78dB以上(DIN-B),65dB以上(JIS) |
負荷変動 | 0%(針圧200g以内) | |
起動特性 | 1/4回転以内 | 1/3回転以内 |
回転数偏差 | 0.002%以内 | 0.002%以内 |
ドリフト | 時間ドリフト:0.00008%/h 以下
温度ドリフト:0.00003%/℃以下 |
時間ドリフト:0.00008%/h 以下 温度ドリフト:0.00003%/℃以下 |
■トーンアーム■
型式 | スタティックバランスストレートアーム | スタティックバランスストレートアーム |
実効長 | 235mm | 221mm |
オーバーハング | 15mm | 15.5mm |
適合カートリッジ重量 | 3~8g(ヘッドシェル含まず) | 3~8g(ヘッドシェル含まず) |
高さ調整範囲 | ±3mm | |
ヘッドシェル | カーボンファイバー製 | カーボンファイバー製 |
■カートリッジ■
型式 | MC型(針先0.5mi丸型lダイヤモンド針) 交換針PN-3MC |
MC型(針先0.5mi丸型lダイヤモンド針) 交換針PN-3MC |
出力電圧 | 2.5mV(1kHz,50mm/sec水平) | 2.5mV(1kHz,50mm/sec水平) |
負荷抵抗 | 30~100kΩ | 30~100kΩ |
適正負荷抵抗・負荷容量 | 50kΩ・170~330pF | 50kΩ・170~330pF |
適正針圧 | 2g±0.3g | 2g±0.3g |
周波数特性 | 10~32,000Hz | 10~32,000Hz |
■その他■
使用半導体・その他 | IC×8,トランジスタ×6,フォトトランジスタ×3 ダイオード×2,ホール素子×2,LED×15 水晶×1 |
IC×6,トランジスタ×7,ダイオード×6, ホール素子×2,LED×10,水晶×1 |
付属機能 | オートリードイン,オートカット,オートリターン,オートリピート クイックプレイ,クイックストップ,アンチスケーティング アームエレベーション,アーム高さ調整機構 針圧直読ウェイト,コネクター式ヘッドシェル |
オートリードイン,オートカット,オートリターン,オートリピート クイックプレイ,クイックストップ,アンチスケーティング アームエレベーション,針圧直読ウェイト, コネクター式ヘッドシェル |
供給電圧 | AC100V 50/60Hz | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 9W | 8W |
外形寸法 | 420W×114H×394Dmm 420W×383H×430Dmm(ダストカバー全開時) |
420W×114H×394Dmm 420W×383H×430Dmm(ダストカバー全開時) |
重量 | 8.5kg | 6.5kg |
※本ページに掲載したPL-570,PL-470の写真・仕様表等は1982年
2月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等を
することは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
★メニューにもどる
★アナログプレーヤーPART8のページにもどる
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。